「麻の葉」、「七宝(しっぽう)」、「籠目(かごめ)」、「千鳥」……。
いつだったか、どこかで聞いたことのあるこれらの名前は、私たち日本人になじみの深いもの。日本に古くからある伝統模様の名前です。ひとことで「模様」といっても、その背景にある歴史や意味は奥深く、縁起もさまざま。
そんな日本の伝統模様のなかから、今回は「青海波(せいがいは)」をご紹介します。
永遠の平安の意味を持つ「青海波」

一般的な「青海波」。
幾何学的に繰り返す波が美しい、この模様の名前は、「青海波(せいがいは)」。一時期ネット上で話題になりましたが、Wi-Fiのマークではありません(笑)
穏やかに打ち寄せる波がひたすらに連なっているイメージから、「永遠の平安」を表しているとされています。
また、末広がりの扇形にも見え、重ねて縁起が良い模様として愛されています。
青海波の由来は?
そんな青海波の由来については諸説さまざまですが、模様自体は古代ペルシャで生まれ、シルクロードを通って中国を経由し、飛鳥時代に日本に伝わったという説が有力。
青海波に似た模様が、エジプトやトルコ、中国の文化物にも見られます。

中東のカタール航空の機内食。おしぼりを入れる袋(左上)などに、青海波に似た模様があしらわれています。
そのため、模様を想像した源は「波」ではなく、連なる山々や魚のうろこだったのかもしれません。それでも、連綿と繰り返されるデザインはどの国でも同じで、いつまでも続く穏やかさを表していたのでしょう。
また、名前の方の由来については、日本古来の芸能である舞楽の演目「青海波」の装束の模様から、という説が有力。
装束には、青海波と千鳥の模様がふんだんにあしらわれているのです。
舞曲「青海波」は、その装束を身につけた2人がゆったりと舞う、優美な舞。『源氏物語』のなかで、光源氏と頭中将(とうのちゅうじょう)が帝(みかど)の前で舞った舞曲として有名です。

舞楽「青海波」の装束を描いた絵。袖の部分などに青海波が使われている。
青海波いろいろ
時代は下り江戸時代になると、青海波のさまざまなバリエーションが生まれます。
扇型の部分が菊の花になった「菊青海波」、松になった「松青海波」、菱形になった「菱青海波」などなど。

「菊青海波」。

「松青海波」。

「菱青海波」。
現代にいたっては、さらにスタイリッシュな青海波が続々登場しており、インテリアや手持ちのアイテムに取り入れたい美しさです。

鯉(コイ)をあしらった「鯉青海波」。

雲をあしらった「雲青海波」。