最近、若い女性たちの間でも大人気の『鳥獣戯画』。
今ではある意味キャラクター化して、グッズなどもたくさん出ていますね◎
ウサギやカエル、サルなどの動物が、相撲を取ったり、水遊びをしたり、綱引きしたりと、墨で生き生きと描かれたこの800年前の絵巻物は、現在のマンガにも用いられるような手法が見られることもあって、「日本最古のマンガ」ともいわれています。
ただ、なんとなくその存在や見た目は知っているけど、内容については知らないという方も多いのでは?
この連載では、そんな『鳥獣戯画』の詳しい内容をご紹介。
あの可愛い動物たちが、いったいどんなことを伝えようとしているのか、一緒にひも解いていきましょう◎
まずはじめに、『鳥獣戯画』の概要について

カエルとウサギが相撲を取っている、と言われる場面。

泥棒のサルを追いかける、ウサギとカエルたち。

水浴する動物たち。
『鳥獣戯画(または鳥獣人物戯画)』は、「古都京都の文化財」のひとつとして、世界遺産に指定されている高山寺に伝わる絵巻物で、国宝にも指定されている重要な書物。
全体的には、甲・乙・丙・丁と呼ばれる全4巻で構成されていますが、各巻の間にはつながりがなく、筆致や画風も違うため、12~13世紀(平安時代末期~鎌倉時代初期)にかけて、複数の作者が個別に描いたものと思われます。
やがてそれらの作品が高山寺に集まった結果、『鳥獣戯画』としてまとめられたのではないかと考えられています。
『鳥獣戯画』の内容は、当時の世相を反映して動物や人物を戯画的に描いたもので、なかでもウサギ・カエル・サルなどが擬人化して描かれた「甲巻」が非常に有名で、鳥獣戯画の代名詞ともなっています。
そのため、この連載では「甲巻」の内容について説明していきたいと思います◎
謎多き国宝絵巻『鳥獣戯画』甲巻

甲巻「第1紙 – 第4紙前半」。

甲巻「第4紙後半 – 第7紙」。

甲巻「第8紙 – 第10紙」。

甲巻「第11紙 – 第16紙前半」。

甲巻「第16紙後半 – 第18紙」。

甲巻「第19紙 – 第23紙」。
第1~23紙からなる『鳥獣戯画』甲巻は、ほかの絵巻に比べ、特に謎の多い国宝絵巻として知られています。
紫式部の『源氏物語』を絵巻物にした『源氏物語絵巻』、『宇治拾遺物語』などに収録された物語を描いた『伴大納言絵巻』、河内国(現・大阪府)信貴山の僧・命蓮(みょうれん)の霊験譚を描いた『信貴山縁起絵巻』と合わせて、「日本四大絵巻」と呼ばれています。
とりわけ謎なのは、『鳥獣戯画』にはほかの3つの絵巻と比べて、物語の筋立てを説明する「詞書」や、絵巻のもととなったテクストが存在しないこと。
そのため、『鳥獣戯画』に描かれている動物たちが何を意味するのか、じつは未だに解明されていないのです。
次回からは、この謎多き絵巻の細部に至るまで、その全貌を紹介したいと思います!
出典:『世界に誇る鳥獣戯画と日本四大絵巻』 山口 謠司 監修(メディアソフト)

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