「麻の葉」、「七宝(しっぽう)」、「籠目(かごめ)」、「千鳥」……。
いつだったか、どこかで聞いたことのあるこれらの名前は、私たち日本人になじみの深いもの。日本に古くからある伝統模様の名前です。ひとことで「模様」といっても、その背景にある歴史や意味は奥深く、縁起もさまざま。
そんな日本の伝統模様のなかから、今回は「千鳥(ちどり)」をご紹介します。
「千鳥(ちどり)」の由来と意味

スタンダードな「千鳥」模様。
おちょぼなクチバシと、ぷっくりした体形がとてもキュート。これ、単なるカワイイ鳥のモチーフではなく、「千鳥(ちどり)」というれっきとした日本の伝統模様なのです。
千鳥とは、水辺にいるチドリ科の鳥のこと。ほぼ世界中にさまざまな種類が分布していて、日本には「コチドリ」や「シロチドリ」などが生息しています。
水辺を群れて飛ぶ千鳥の姿はとても優美で、昔から衣服や調度品の模様として親しまれました。
また、「千」とは数が多いことも表していて、「千鳥」には「水辺にいるたくさんの鳥」という意味もあるようです。
この伝統模様の縁起としては、「千鳥」=「千取り」に通じ、勝利と豊かさを表しています。
イチオシは 「波に千鳥」

「波に千鳥」。
水鳥だからか、水に関係のある意匠とセットになりがちな千鳥。
特に縁起の良い組み合わせといえば、「波に千鳥」がイチオシです。
「青海波(せいがいは)」の上を、2匹の千鳥が飛んでいるこの模様は、「波(=困難)を避けて仲良く飛ぶ2匹」という意味となり、夫婦の絆や家内安全を表します。
波の部分は、もっと荒ぶる波の意匠である場合もあります。
千鳥のバリエーション
千鳥模様は、ぷっくりした鳥が単体でいたり、または群れを成していたりと、バリエーション豊か。
先ほどの「波に千鳥」と似たバリエーションとしては、「浜千鳥」や「沢千鳥」。幾何学的に変化したバリエーションでは、「千鳥格子」に「千鳥卍」などがあります。

「流水に千鳥」。

「丸千鳥」。

「三つ集め千鳥」。

「千鳥通し」。

「千鳥卍」。
また、千鳥は紋様としてだけでなく、家紋にもなっています。
「浪輪に陰千鳥」、「丸に千鳥」、「五つ千鳥」など、種類はあまり多くありませんが、かわいらしさは格別です◎

左から、「浪輪に陰千鳥」、「丸に千鳥」、「五つ千鳥」。
イギリスにも千鳥模様がある!?
有名な「千鳥格子」は、イギリスでは「猟犬の歯」を意味する「ハウンド・トゥース(hound tooth )」と呼ばれます。
ギザギザした感じからイメージされたようで、同じ模様でもお国が違うとこうも見方が異なるのかと、興味深いですね。

「千鳥格子」。イギリスでは「ハウンド・トゥース」になる。
また、冬物ファッションに使われることが多い「グレン・チェック(glen check)」は、千鳥格子と細いストライプが組み合わさった柄です。

「グレン・チェック」のパターン。