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【イタリア】ヴェネツィア「縦横無尽に運河が巡る”水の都”」

【イタリア】ヴェネツィア

イタリア北東部に位置する「水の都」ヴェネツィア。言わずと知れたイタリアを代表する観光地のひとつで、街中を縦横に走る運河やヴェネチア共和国時代に建てられた歴史ある建物群が、世界に類を見ない、唯一無二の壮麗な景観を生み出しています。

この美しい街並みから、1987年に「ヴェネツィアとその潟」として世界遺産に登録されました。

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ヴェネツィアのシンボルでもあるサンタ・マリア・デッラ・サルーテ聖堂。

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街を縦横に走る運河。なに気ない路地裏でさえ美しい景色にあふれている。

 ヴェネツィアの歴史

ヴェネツィアが築かれている「ラグーナ」と呼ばれる潟は、アドリア海の最深部にあり、もともとは川に流されてきた大陸からの土砂が堆積した湿地帯でした。

伝説によると、5世紀ゲルマン人による侵略から逃れてきた北イタリアの人々が、足場が悪く侵入者の追跡を阻めるという理由でこの地に住み着いたことが、ヴェネツィアの起源とされています。

そして697年ヴェネツィア共和国が誕生すると、すぐれた外交手腕とイスラム諸国などとの海上貿易によって巨万の富を成し、中世には世界屈指の海軍と富を誇る海洋国家として大いに繫栄。「アドリア海の女王」と称されるようになりました。

また、828年、エジプトに安置されていたキリスト教の聖人である聖マルコの遺骸をヴェネツィア商人が奪い取って持ち帰り、街の守護聖人に定めると、その遺骸を祀るために「サン・マルコ寺院」を建造しました。

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サン・マルコ広場と、サン・マルコ寺院(Viacheslav Lopatin / Shutterstock.com)。

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サン・マルコ寺院の黄金にきらめく壁や天井と、2000個の宝石が埋め込まれた黄金の衝立がある祭壇(Viacheslav Lopatin / Shutterstock.com)。

当時のヨーロッパでは、有名な守護聖人を戴いてその国の存在をアピールするということが流行っていたため、キリスト教の聖人のなかでも非常に有名な聖マルコの遺骸を手に入れたヴェネツィアは、さらにその知名度を上げることとなります。

現在のサン・マルコ寺院11世紀に新たに建てられた後、数世紀にわたって増改築が行われたものですが、この寺院が建つ「サン・マルコ広場」や、総督邸兼政庁だった「ドゥカーレ宮殿」などと共に、イスラム建築の影響を受けた独特の歴史的建造物が、かつて世界に覇を唱えたヴェネツィアの栄光を今に伝えています。

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8世紀に創建されたドゥカーレ宮殿。外観はゴシック風のアーチが連続し、イスラム建築の影響を受けた細やかな装飾が施されている(Viacheslav Lopatin / Shutterstock.com)。

ヴェネツィアの交通手段

ヴェネツィア本島は大きな魚のような形をしていますが、この本島自体が小さな177の島々の集合体になっていて、それぞれの島が150を超える運河と400もの橋によってつながっています。

そして、街の北西から南東へ市街を2つに分けるようにして、逆S字を描きながら流れているのが、全長約3kmの大運河「カナル・グランデ」です。

ヴェネツィア市内の路地は迷路のように狭く入り組んでいるため、ベビーカーや車椅子、子ども用の自転車以外は自動車も自転車もNG。そのため、主な交通機関はこの「カナル・グランデ」をはじめとする運河が担っているのです。

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大運河「カナル・グランデ」とゴンドラをこぐゴンドリエーレ。

なかでも「ゴンドラ」と呼ばれる手漕ぎボートはヴェネツィアを象徴する存在で、このゴンドラを漕ぐ人は「ゴンドリエーレ」と呼ばれ、親子代々受け継がれている伝統的な職業なのだそう。

今では「モトスカーフィ」と呼ばれる水上タクシーや「ヴァポレット」と呼ばれる水上バス、「トラゲット」と呼ばれる渡し舟が市民や貨物を運んでいて、ゴンドラは主に観光用に活躍し続けています。

ちなみに、ヴェネツィア本島からはヴェネツィアン・グラスで有名な「ムラーノ島」や、色とりどりの家が立ち並ぶ「ブラーノ島」をはじめ、近隣の島々へも水上バスで気軽に訪れることができるので、本島とはまた異なる魅力をぜひ堪能したいですね◎

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ムラーノ島のヴェネツィアン・グラス。

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カラフルな家並みで有名なブラーノ島。本島からは、水上バスで40分ほど。(Javen / Shutterstock.com)。

ヴェネツィアのオススメポイント

サン・マルコ広場に建つ高さ約100mの鐘楼の上からは、海に浮かぶようにして広がる美しいヴェネツィアの街並みを一望することができます。特に、街とともに海や運河すべてがオレンジ色に染まる夕暮れは、息をのむほどの絶景。

また、この夕暮れをロマンティックに体験したいなら、ゴンドラに乗ってゴンドリエーレたちが歌うアカペラのカンツォーネを聴きながら街を巡るツアー「ゴンドラ・セレナー デ」がオススメです◎

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サン・マルコ寺院の鐘楼から望む、サン・マルコ広場とヴェネツィアの街並み。

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ヴェネツィアの夕暮れと、カナル・グランデに架かるリアルト橋。アーケードで覆われた橋の上には、土産物屋などが軒を連ねる。

そして何といっても、ヴェネツィアで最も有名なイベントが、「ヴェネツィア・カーニバル」

12世紀からの歴史を持つこのお祭り。かつて、カーニバルの期間中だけは誰もが仮面をつけて仮装し、身分や階級、年齢を超えて、平等にカーニバルを楽しむことが許されていたそうです。

カーニバルが開催される2月末~3月初めの2週間は、サン・マルコ広場を中心に幻想的な仮面ときらびやかな衣裳に身を包んだ人々が街中を行き交い、美しい街並みとあいまってまるで中世にタイムスリップしたかのような光景を見ることができます。

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「ヴェネツィア・カーニバル」の様子(Anibal Trejo / Shutterstock.com)。

「水の都」が抱える問題

このように、壮大な歴史と美しい街並みを誇るヴェネツィアですが、近年は地盤沈下や海面上昇による水没など、多くの問題に直面しています。

なかでも「アックア・アルタ」は、大潮低気圧、そしてアドリア海の東南から吹く風「シロッコ」の3つの要因が重なって起こる高潮で、ひとたび発生するとヴェネツィアの街中まで水が入り込み、特に一番低い場所にあるサン・マルコ広場は水没してしまうのです。

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ふだんのサン・マルコ広場(Mariia Golovianko / Shutterstock.com)。

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アックア・アルタによって水没すると、こんな光景に(PlusONE / Shutterstock.com)。

この被害は地球温暖化による海面上昇によって年々拡大しており、将来ヴェネツィアの街全体が海に沈んでしまうとさえいわれています。

この問題に対して、アドリア海からの潮の流れを断つ水門を建設する「モーゼ計画」が進められているものの、環境や景観への影響を懸念する反対意見も多く、問題は山積しているのだとか。

この美しい街並みを失わないためにも、私たちひとりひとりができることを、少しずつでもやっていきたいですね。

DATA

◉ベストシーズン:5月~10月

◉アクセス:特急電車でミラノから3時間、ローマから5時間。または、マルコポーロ空港からバスで約20分。

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