アイルランド中南部、ティぺラリー州の小さな街キャッシェルにある丘の上に建つ、「ロック・オブ・キャッシェル」。
ゲール語で「石の砦」を意味し、ひときわ存在感を放ちながら岩山に堂々とそびえるこのお城は、歴代マンスター王の居城でした。
廃墟となった今もなお、当時の威厳を保ち続けています。
魔王が落とした石から生まれたお城

周囲はのどかな緑の丘陵地帯が広がる。

まさに「天空の城」の異名にふさわしい美しさ。
ロック・オブ・キャッシェルの起源は5世紀にさかのぼり、マンスター地方の王オブライエンがここに居城を建てたことに始まります。
その後、12世紀から教会の管轄となると、17世紀半ばのクロムウェル侵攻によって破壊されるまで、政治的・宗教的中心地として栄えました。
そんな古い歴史をもつロック・オブ・キャッシェルは、別名「聖パトリックの岩」とも呼ばれ、この別名には、5世紀半ばにアイルランドでキリスト教の布教を始めたアイルランドの守護聖人、聖パトリックにまつわる次のような由来が言い伝えられています。
かつて魔王が巨大な石をくわえて空を飛んでいるときに、この地に教会を建てようとしていた聖パトリックを見て、驚いたはずみに落とした石からロック・オブ・キャッシェルができたというもの。
さまざまな神話や伝説が残るこの地には、確かに神秘的な空気が満ちていて、ファンタジー好きには特におすすめの旅行先です◎
ロック・オブ・キャッシェルの見どころ

上空から見たロック・オブ・キャッシェル。廃墟になった部分と修復された部分がよく分かる。

屋根の大部分が崩れ落ちてしまっている(Ivica Drusany / Shutterstock.com)。

大聖堂のそばに残る墓地(Attila JANDI / Shutterstock.com)。

ファンタジー好きにはたまらない、ケルト十字の「ハイクロス」。ケルト十字とは、ラテン十字と十字の交差部分を囲む環からなる十字で、ケルト系キリスト教のシンボルともなっている。

復元された城内の礼拝堂。天井部分の彫刻なども可愛いくで見ごたえあり。

高さ約27メートルの、石造りの巨大な円塔。
ロック・オブ・キャッシェルは、かつてこの地域にあったマンスター王国における、キリスト教の中心地でした。
標高67メートルの岩山の上には、お城のほかにも大聖堂や礼拝堂、円塔やハイクロス、墓地などが密集して建てられています。
現在では荒廃し、廃城と化してしまっている建物もありますが、お城の一部分は復元されており、中世当時のホールが再現されています。
特におすすめなのは、ロック・オブ・キャッシェルの北側に残る、中世アイルランド最後のシトー派修道院「ホア・アビー」の廃墟です。
無料のガイドツアーに参加しよう!

夕焼け色に染まるロック・オブ・キャッシェルは、雰囲気満点◎
ロック・オブ・キャッシェルでは、大人ひとりにつき8ユーロ(およそ1000円)の入場料がかかりますが、建物や歴史について詳しい説明を聞くことができる1時間ほどのガイドツアーには無料で参加することができます。
受付の際にガイドツアーの開始時間を教えてもらえるので、その時間に入り口付近に集合しておきましょう。
このガイドツアーは、ガイドが各場所の説明をしながら敷地内を回って行くという形式になっているので、ぜひ気軽に参加してみてください◎
さらにロック・オブ・キャッシェルについて知りたいという方は、敷地内にある小さな映画館に行ってみてください。
英語ではありますが、こちらも無料で1日に4回、お城の歴史や解説をまとめた映像が上映されています。
ただし開始時間が決まっているため、ご利用の際には時間の確認を忘れないように!
DATA
◉アクセス:ダブリンまたはコークから、バスで約3時間。