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【世界のビール #3(前編)】「イギリスビール」の種類とオススメ

「ワインよりもビールが好き」という、めずらしいイタリア人の僕がオススメしたい、世界のビールを紹介していくこのシリーズ。

第1回目のベルギービール「種類が多い」、第2回目のドイツビール「水ほど飲まれているもの」というイメージですが、イギリススタイルの「ブリティッシュ・パブ」も耳にしたことがあるかと思います◎

ということで、今回はイギリスのビールをご紹介していきましょう!

ちなみに今回も、ご紹介させていただくビールのなかには、アルコール度数が10%以上のビールのもあるので、飲む際はじゅうぶんご注意くださいね。

「ブリティッシュ・パブ」とイギリスビールの歴史

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イギリス人はビールにもプライドを持っている!

イギリスでも、何百年も前からビールが醸造されていて、ほかのヨーロッパの国と同じように、イギリスでもビールは文化のひとつとなっています。

そして、今ではいろんな国にあるイギリススタイルのパブ、「ブリティッシュ・パブ」

日本だとおしゃれなイギリスっぽいレストランというイメージが強いように思いますが、イギリスではどこにでもある、日本の居酒屋のようなごくごく普通の飲み屋です。

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イギリスの典型的なブリティッシュ・パブ( Botond Horvath / Shutterstock.com)。

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それぞれのビールのロゴデザインも、イギリスらしく新旧それぞれのオシャレさがある(Bikeworldtravel / Shutterstock.com)。

そんなブリティッシュ・パブの起源は、1世紀にまでさかのぼります。

当時、イギリスへと領土を広げた古代ローマ帝国は、初めてイギリス全土に道路を建設しました。しかしまだ町が少なかったため、商人たちが道の途中でも休める場所として、イタリア語で「大衆食堂」を意味する「タベルナ(Taverna)という旅籠(はたご)が造られることになったのです。

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かつての「タベルナ」らしい雰囲気が残る、イギリスの田舎のパブ。

やがてローマ帝国がイギリスから出て行った後の5世紀ごろ、アングロサクソン人(その時代のイギリス人)は、自分たちの自宅をタベルナとして利用するようになり、自宅でビールを醸造し始めました

今でいう「民泊」ですね!

けれど、町のなかにあるタベルナだと、宿として使うというよりはお酒を飲んだり、町の人たちが集まって相談したりするために使われることの方が多くなり、徐々にその性格も変わっていきます。

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パブで集ってスポーツ観戦。スタイルは今も変わらず。

その結果、「タベルナ」という名称も変えて、代わりに「公共の家」という意味の「パブリック・ハウス(Public house)」と呼ぶようになりました。

もうお分かりですね?

「パブ(Pub)」いう言葉は、この「パブリック・ハウス(Public house)」が省略された呼び方なんです◎

今度パブに行ったら、ぜひ誇らしくこの話をしてみてください(笑)

ということで、昔はイギリスのビールというと、自宅で手作りしたハウスメイドが多かったのです。もちろん、時代が変わるにつれて醸造所も増えてきましたが、今もなお、その造り方には当時の名残が残っています

そんなイギリスが得意とするビールは、「カスク・エール(Cask Ale)」という種類です。「カスク(Cask)」とは、「大樽」という意味。

ほかの呼び方は、「リアル・エール(Real Ale)」=「本物のエール」。さすが、”God Save the Queen”(女王陛下万歳=神よ女王を守りたまえ)の国。プライドが高いですね!

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イングランド南西端の町、コーンウォールにある、”イギリス万歳!”という感じのパブ(Roberto La Rosa / Shutterstock.com)。

1. Real Ale – リアル・エール

「リアル・エール」は、ビールを醸造する「カスク(大樽)」から、直接グラスに出して飲む感じです。なので、「カスク・エール」と呼ばれています。

一般的なビールの製法で行われる2回目の発酵をしないため、炭酸化やフィルタリングをしていなくてナチュラルな感じが特徴なのですが、一方で臭くなるのが早いという欠点があります。

ただ、イギリス人が飲むビールの量を考えたら、絶対に臭くなる前に飲みきっているので、問題ないのかも……。

炭酸化していないということは、ビールらしい泡もなく樽から直接出すということは、ちょっとぬるい温度(11~12℃)で飲むということになるので、苦手な方も多いと思います。

つまり、イギリスのリアル・エールは、ベルギーの「オシャレで複雑な味のビール」より、ドイツの「スッキリした味のビール」より、「クラフティで手作りっぽい味がするビール」といえます。

もちろん、ブリティッシュ・パブに行って直接樽から飲まないと、本物の「リアル・エール」とは呼べないのですが、最近はボトルタイプも増えてきました。

おすすめは、セント・オーステル醸造所(St Austell Brewery)「Big Job(ビッグ・ジョブ)」です。

↑ 「Big Job(ビッグ・ジョブ)」。

冷やしたくなる気持ちも分かりますが、「ぬるめで飲む」のをお忘れなく!

2. Old Ale – オールド・エール

「オールド・エール」は、アルコール度数5.0%以上「ダーク・エール」の一種です。

ちなみに、「オールド(Old)」という種類は、ブレタノマイセス(Brettanomyces)という特別な酵母を使って2回目の発酵をしたあと、数年間樽の中で長期間醸造させるビールです。

名前のとおり、時間をかけて造るビールなので、製造コストもかなり高くなります

そのため、醸造所のなかには、「オールド・エール」に「ヤング・エール」を混ぜたものをオールドとして売ったり、ヤングとオールドの間の「ミドル・エージ・エール」を別の醸造所から安く買って樽に入れ、オールドと呼べるくらい時間がたったら、高い値段で売ったりするところも。

アヤシイ!!

そんなオールド・エールもパブで飲むのがベストですが、ボトルビールだと、アルコール度数9%「Gale’s Prize Old Ale(ゲイルズ・プライズ・オールド・エール)」がおすすめです。

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「Gale’s Prize Old Ale(ゲイルズ・プライズ・オールド・エール)」。

3. Lager – ラガー

イギリスの伝統的なビールは「エール」ですが、現在イギリス国内で50%以上のシェアを占めているのは、「ラガー」です。

ラガーとエールの違いは、基本的に「酵母の発酵方法」です。

エールだと、酵母が樽の中の上面に浮かんで発酵する「top-fermentation(トップ・ファーメンテーション、上面発酵)」で、ラガーだと、酵母が樽の底で沈んだまま発酵する「bottom-fermentation(ボトム・ファーメンテーション、下部〈底部〉発酵」を使います。

味的には、エールはフルーティでストロングな風味ですが、ラガーはストレートな風味といった違いがあります。

おすすめのブリティッシュ・ラガーは、「Camden Pils(カムデン・ピルス)4.6%」です。

↑ 「Camden Pils(カムデン・ピルス)4.6%」。

ちなみに、カムデン・タウン(Camden Town)ロンドンの若者が好きな、ロックでオシャレな町。ヒップスターっぽい雰囲気で、町の人たちはもちろん珍しい味の個性的なビールが大好きだそうです。

日本でも人気のビールだと、スコットランドの醸造所「BrewDog(ブリュードッグ)」「Kingpin(キングピン)4.7%」が美味しいです◎

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スコットランドの醸造所「BrewDog(ブリュードッグ)」のビール。いまどきのデザイン(DenisMArt / Shutterstock.com)。

↑ 「Kingpin(キングピン)4.7%」。

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