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【日本の伝統模様 vol.3】麻の葉(あさのは)

「麻の葉」、「七宝(しっぽう)」、「籠目(かごめ)」、「千鳥」……。

いつだったか、どこかで聞いたことのあるこれらの名前は、私たち日本人になじみの深いもの。日本に古くからある伝統模様の名前です。ひとことで「模様」といっても、その背景にある歴史や意味は奥深く、縁起もさまざま

そんな日本の伝統模様のなかから、今回は「麻の葉(あさのは)」をご紹介します。

「麻の葉(あさのは)」の由来と意味

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スタンダードな「麻の葉模様」。

六角の星型や、六角形が単独または連続している幾何学模様。魔よけの意味がある三角形「鱗文(うろこもん)」の集合模様でもあります。

麻の葉に形が似ていることから、「麻の葉」模様と呼ばれるようになりました。連続している模様「麻の葉つなぎ」「麻の葉くずし」とも呼ばれます。

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「麻の葉つなぎ」。

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「麻の葉くずし」。

麻は成長が早く、4カ月で4mにもなります。また、まっすぐに伸び、生命力がとても強いのも特徴。

そんな麻にあやかって、麻の葉模様は、赤ちゃんの産着(うぶぎ)の模様の定番となりました◎

「麻の葉」模様が確立したのは、平安時代と言われており、平安時代の仏像装飾などにも麻の葉模様が見られます。

また江戸時代には、歌舞伎役者の女形として活躍した岩井半四郎が、「八百屋のお七」の演目で麻の葉模様の衣装を着たことから、当時大流行したんだとか。

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麻の葉模様の着物を着た、八百屋お七(二代目 歌川国輝画、1867年)。

麻の葉模様のバリエーション

麻の葉模様は直線で構成されていますが、これを曲線に替えたものが、「輪違い麻の葉」

まっすぐな線が丸くなり、優しい印象に早変わりです。

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「輪違い麻の葉」。

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「重ね麻の葉」。

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「変わり麻の葉」。

今では、産着着物の柄にはもちろん、現代風西洋風にアレンジされることもある麻の葉模様。このほか、「丸に麻の葉」「陰麻の葉 (かげあさのは)」など、単独で家紋としても使われています。

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「丸に麻の葉」(左)と、「陰麻の葉 (かげあさのは)」(右)の家紋。

日本人と大麻

古代から日本に自生していた麻は、「大麻(大蔴、たいま)」という種類で、稲と並んで人々の生活に欠かせないものでした。

この大麻は繊維がとても丈夫なため、穢(けが)れを強く祓うとして神聖視されており、神道では「注連縄(しめなわ)」「祓串(はらえぐし)」など、さまざまな神具や神事の道具に使われています。

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注連縄(しめなわ)。神域と現世を隔てる結界の役割を持つほか、神社の周りやご神体を縄で囲い、その中を神域としたり、厄や禍を祓ったりする意味もある。

神社にお参りする際、カランカランと鈴を鳴らしますが、その鈴を引っ張る縄も大麻でできていますし、日本の国技・相撲で横綱だけが腰に締めることを許されている「綱」も、白い大麻でできているんです◎

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土俵入りする横綱・白鵬関(J. Henning Buchholz / Shutterstock.com)。

世界の麻

大麻は、英語で「Hemp(ヘンプ)」といいます。エキゾチックなアクセサリーや衣服などでよく見かけますね◎

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ナチュラルな風合いのヘンプ生地。

また、シーツピローケースなど、インテリア・ファブリックでおなじみの「リネン」は、「亜麻(アマ、フラックス)」という麻の一種です。

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ヘンプよりもきめ細かいリネン。

そして麻の種子(果実)である「ヘンプシード(麻の実)」は、チアシードやココナッツオイルと並ぶスーパーフードとしても有名なほか、「七味唐辛子」にも入っています。

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ヘンプシード。

麻は、衣服に、そして健康に、世界中で役立っている植物なんです!

大麻は歴史も伝統もあり、役に立つ植物なのですが……

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大麻畑。

そんな大麻ですが、「薬物」としての大麻は、人体にきわめて有害なものなります。

そのため、日本の伝統需要衣服用の繊維果実の収穫などの目的で大麻が必要な場合、厳しい管理のもとで低毒性品種の大麻が栽培されています。

こうして栽培される大麻について、厚生労働省のパンフレットには「大麻草の成熟した茎や繊維等の製品と、大麻草の種子及びその製品は大麻から除かれ、規制の対象外です」と書かれています。

日本文化と密着している大麻。偏見のない目で見つめたいものですね!

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