世界中にたくさん存在する、幸運のしるし『ラッキーチャーム』。縁起が良かったり、ご利益があったり、魔よけになったり、その効用はさまざまです。
そんな数あるラッキーチャームのなかから、このシリーズではアニマルをピックアップ! 今回は苦手な方も多いであろう、“ヘビ”をご紹介します。
恐れられ、畏れられて、崇められ
独特の生態と見た目を持つヘビ。特に脱皮を繰り返す生態に、昔の人は復活と再生をイメージしました。
古代エジプト王家の守護神はヘビでしたし、古代ギリシャ神話では、医学の神・アスクレピオスが持つ杖には1匹のヘビが巻かれ、伝令の神・ヘルメスが持つ杖「カドゥケウス」にも2匹のヘビが絡みあっています。

エジプト第18王朝ツタンカーメンのミイラのマスク。額には、頭を持ち上げたコブラをデザインした「蛇形記章(ウラエウス)」が。
また、インド神話ではコブラを畏れ敬うことから、ヘビ神「ナーガ」が生まれました。

地域によって姿が異なる「ナーガ」。上半身を人間の姿で表し、下半身をヘビとして描いたもののほか、純粋にヘビとして描かれたもの、頭が7つあるものなどがある。
日本でも、その姿から「龍」が連想されたこともあり、縁起をもたらす神として敬われています。特に白ヘビは、金運の神様として有名ですね◎
ただ、キリスト教では、ヘビは悪魔に見立てられてしまいました。
これは、キリスト教以前の古代において、その形状によりヘビが「性の象徴」ともされていたため、悪者扱いされたのではないかと考えられます。
ヘビのチャーム その1 「カドゥケウス」

カドゥケウスをモチーフにしたアクセサリー。
ギリシャ神話に登場する伝令の神・ヘルメスが持つ、2匹のヘビと翼のある杖「カドゥケウス」。
別名「ケリュケイオン」ともいい、ヘルメスは商売、旅、伝令(情報)をつかさどる神です。
ある時ヘルメスは争っている2匹のヘビに向かって持っていた杖を投げたところ、その杖にヘビが巻き付き、和解したとされます。
さらにそこへ、早い情報伝達を意味する翼が加わり、現在の形になったそう。
この「カドゥケウス」の意匠は商業界でお目にかかることが多いほか、日本の一橋大学の校章にも採用されています。
ちなみに、デザインが似ているアスクレピオスの杖は、世界保健機関(WHO)の紋章など、医療系のシンボルとして使われることが多いです。

アスクレピオスの杖をデザインしたコイン。
ヘビのチャーム その2 「ウロボロス」

ウロボロスの彫刻。
ヘビが自分の尾を噛んで輪になっているものを、「ウロボロス」といいます。
復活・再生するヘビが、始まりも終わりもない永久に連続したもの=ウロボロスになるということは、つまるところ「不死」を意味します。
この「ウロボロス」は世界中のさまざまな神話に登場していて、なかには2匹のヘビがお互を噛み合って、「メビウスの輪」になっているバージョンも。
「ウロボロス」のチャームは生命力や力そのものを象徴し、そのまま指輪やブレスレットのデザインにもなっています◎
ヘビのチャーム その3 「鏡餅」

日本のお正月に欠かせない鏡餅。
食べられるチャームはいろいろありますが、まさかヘビの形の食べ物なんて…… と思いきや、じつはあるんです。しかも、とっても身近に。
お正月に飾られる「鏡餅」、とぐろを巻いたヘビに似ていませんか?
「似てるんだけど、なんか言っちゃいけないような気がする」と、長年胸に秘めていた人も多いのでは?
ヘビの古語は、「カガ」や「カガシ」(ヤマカガシというヘビがいますよね)。
そう。「カガミ」と似ています。
前述したように、日本でヘビは畏れられつつも奉られてきた存在。歳神様へのお供えであるお正月の餅を、あえてヘビに似せたのかもしれません◎
ラッキーチャームに会いに行こう!

シュールで個性的な像が並ぶワット・サラ・ケオクー(ワット・ケーク)。
メコン川を渡ればラオスという、タイ東北部の都市ノーンカーイにあるお寺、ワット・サラ・ケオクー(ワット・ケーク)。
タイの宗教家である、ルアンプー・ブンルア・スリーラット(Luang Pu Bunleua Sulilat)が作ったお寺で、氏が独自に解釈した伝統と現代の融合をモチーフとした数々の像で知られています。
なかなかシュールな像が立ち並ぶなか、ひときわ大きく目立っているのが、高さ25mにおよぶナーガ像。

最初に紹介したナーガの仏像とは打って変わって、敵意をむき出しにして口を開くナーガの像(neptunestocks / Shutterstock.com)。
とって食われそうな迫力ですが、よく見るとお釈迦様が鎮座されています。
このスリーラット氏は、ノーンカーイ出身。お隣のラオスにも、ブッダパーク「ワット・シェンクワン」を作っています。
一度見たら忘れられないほどのインパクトをもらえる、これらの像たち。きっとパワーも強力なはず。
タイに行った際は、ぜひ実際に見に行ってみてはいかがでしょう?