最近、若い女性たちの間でも大人気の『鳥獣戯画』。
ウサギやカエル、サルなどの動物が、相撲を取ったり、水遊びをしたり、綱引きしたりと、墨で生き生きと描かれたこの800年前の絵巻物は、現在のマンガにも用いられるような手法が見られることもあって、「日本最古のマンガ」ともいわれています。
そんな『鳥獣戯画』の代名詞ともいえる「甲巻」について、詳しい内容をご紹介していくこの連載。
今回は、23紙からなる「甲巻」の、第17紙~第19紙までを解説してみたいと思います!

甲巻「第17紙 – 第19紙」。
~ 第17紙 ~
『鳥獣戯画』甲巻のなかでも、最も有名で人気の高い場面が、この第17紙に描かれているウサギとカエルの相撲の情景です。
声援するウサギたちや、ウサギの耳にかぶりつき足技をかけるカエルなど、その表情はきわめて豊か。
画面が水平にスクロールされることによって、次に描かれる絵は、ここで相撲を取っているのと同じウサギとカエルであることがわかります。
~ 第18紙 ~
画面がスクロールし、変わって第18紙は、ウサギとカエルの相撲の結末が明かされます。
勝利の軍配はカエルにあがりました!
第17紙の画面左に描かれたカエルを見ると、口から吐き出される気炎(きえん)を線で表現するところなど、現代のマンガにも受け継がれている技法です。
このウサギとカエルは、直前の第17紙で相撲を取っていたウサギとカエルと同じキャラクターです。
ウサギを投げ飛ばして雄叫びをあげるカエル、投げ飛ばされて仰向けにひっくり返るウサギ、それを見て笑い転げるカエルたちなど、ここでも動物たちの生き生きとした描写を見ることができます。
同じ絵のつらなりで時間の経過を順番に表す手法、すなわち第2紙で登場した「異時同図法」が、ここでも使われていることがわかります。
~ 第19紙 ~
場面は変わって第19紙。背景が続いていることから、第18と第19紙の場面の連続性が保たれていることがわかります。
ここでは、当時貴族の間で流行していた遊びである「双六(すごろく)」の盤をかついで歩くサルと、中に碁石が入っていることが予想される袋を抱えたサルの様子が描かれています。
この後、現存する第20紙とのつながりが唐突であるところを見ると、実際にはこの間に別の場面が挿入されていたであろうことが想像されます。
実際に、長尾家旧蔵の模本には、サルとウサギが双六(すごろく)の盤を囲んで遊ぶ場面(囲碁をとっている場面)が残されています。
出典:『世界に誇る鳥獣戯画と日本四大絵巻』 山口 謠司 監修(メディアソフト)

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