イギリス中部のダラムは、かつてのイングランドとスコットランドの国境地帯に位置する要所として栄えた、古い歴史を持つ街。
この街に建つダラム城は、ノルマン建築様式の威厳あるお城です。
ダラム城の歴史

ダラムの街並みと、丘の上に築かれたダラム城。
その原型は、ノルマン人によるイングランド征服後、ノルマン朝の勢力を誇示するために、ウィリアム1世によって1072年に築かれました。
ダラム城の建築時には、手早く建てることができるという点から、10~12世紀にイギリスやフランスで盛んに築城された初期「モット・アンド・ベーリー」と呼ばれる築城形式が採用され、完成すると、中世に確立したノルマン建築様式の最高傑作と称されました。
ちなみに、「モット・アンド・ベーリー」とはヨーロッパにおける築城形式のひとつで、モットは「小山」、ベーリーは「外壁」を意味し、土を掘って堀を造り、その土で小山を築いて塔を建て、周囲を堀で囲んだことから名付けられました。

街を流れるウェア川に囲まれるようにして建っている。

夜のダラム城は、ライトアップされてさらに雰囲気たっぷり。
当初はスコットランドへの威嚇を目的としていましたが、時代とともにダラム城の役割は変化し、のちにイングランド北部を統治する権力者で、国王と同等の権限が与えられていたダラム司教の居城として使用されるようになりました。
多くの学生が暮らすお城
居城としては、ダラム司教の邸宅が完成するまでの間のみ使用されたダラム城でしたが、しだいに有用性を失い、1837年にダラム大学に寄付されると、3年後の1840年からは学生寮として利用されることになります。
その後1986年には、隣接するダラム大聖堂とともに世界遺産に登録されました。

ダラム城と向かい合って建つダラム大聖堂。

雰囲気たっぷりのダラム大聖堂内部。リンディスファーン修道院でさまざまな奇跡を起こしたと言われる聖カスバートの聖遺物や、セント・オズワルド・オブ・ノーザンブリアの頭部、『イングランド教会史』を著した聖ベーダの遺体など、多くの聖遺物が安置されている(Arvind Balaraman / Shutterstock.com)。

中庭に並ぶ学生用のテーブルとイス(EQRoy / Shutterstock.com)。
現在も多くの学生が暮らしているダラム城。世界遺産でもあるお城で学生生活を過ごせるなんて、うらやましい限りですね~……。
ハリー・ポッターファンなら一度は行きたい見学ツアー
そんなダラム城で特に有名なスポットが、天井高14m、全長30mもある大広間。
↑ 14世紀の初めに造られた、ダラム城の大広間。ホグワーツ魔法魔術学校の晩餐のシーンで使用された。
ここは映画「ハリー・ポッター」シリーズに登場する、ホグワーツ魔法魔術学校のロケ地になったことでも有名になりました。
このほかにも、回廊に囲まれた広場でハリーが白フクロウを飛ばす場面や、ハリーと友人たちがおしゃべりをしながら歩く回廊など、城内にはファンならすぐに気づくような場所が点在しています。

ダラム大聖堂の回廊。

同じく大聖堂の回廊。映画「賢者の石」では、ハリーがヘドウィグを雪の庭に放すシーンで、「秘密の部屋」では、ロンがナメクジを吐き出すシーンで登場した(Tanasut Chindasuthi / Shutterstock.com)。

回廊がぐるりと中庭を囲んでいる( Inspired By Maps / Shutterstock.com)。
そのため、世界中からハリー・ポッターファンが訪れる聖地となっていますが、現在でも現役の学生寮として使用されるダラム城は、多くの学生の生活の場となっているため、城内の見学は学生による見学ツアーでのみ可能となっています。見学ツアーでは、図書館、食堂と厨房、居室、サロンなどの学生用空間を細かく説明しながら見せてくれるのですが、階段や手すり、さりげなく置かれたベンチ、黒光りする壁など、説明されないようなものも、すべてが骨董品!

ファンタジー感満載の、ダラム城の入り口。この先は大学の施設となっている。

ダラム大聖堂のガイコツの装飾。
そして、吸い込む空気は「ハリー・ポッター」の世界につながっているような気さえしてきて、物語の中に入り込んだような気分を味わえます◎
しかし、学生寮ということもあって非公開日が多いので、ガイドツアーに参加したい場合には、事前に電話で確認を取っておきましょう!
DATA
◉アクセス:ロンドン・キングス・クロス駅からダラム駅まで列車で約3時間、駅からバスで約10分。