サン・ピエトロ大聖堂が、カトリックの総本山になった理由
カトリックの総本山、サン・ピエトロ大聖堂は、キリストの使徒・聖ペテロを祭る教会堂として、4世紀に建立されました。
サン・ピエトロ大聖堂が建設されて以降も、ローマ教皇の座所は14世紀までローマのラテラノ大聖堂にありましたが、1309年、フランス国王フィリップ4世によってフランスのアヴィニョンに移されることとなります。
それから68年後、教皇庁は再びローマに戻ったものの、当時ラテラノ大聖堂が荒廃していたため、サン・ピエトロ大聖堂の隣に教皇宮殿を築き、新たなローマ教皇の座所としたのです。

サン・ピエトロ広場から見た大聖堂の正面(Ravenash / Shutterstock.com)。

大聖堂のバルコニーからクリスマスの演説を行う、第266代ローマ教皇フランシスコ(Irina Demenkova / Shutterstock.com)。

サン・ピエトロ大聖堂から望む、サン・ピエトロ広場。バロック芸術の巨匠ベルニーニの設計により、1667年に建設された。4列のドーリア式円柱による列柱廊と140体の聖人像に囲まれた広場の中央に、古代エジプトのオベリスクが立つ(Mirko Kuzmanovic / Shutterstock.com)。

夕暮れのサン・ピエトロ大聖堂とサンタンジェロ橋。
巨匠ミケランジェロが無給で手がけた、「聖堂のなかの聖堂」
16世紀に入ると、老朽化したサン・ピエトロ大聖堂を再建するため、ルネサンス期の美学を反映した壮大な建設計画が練られました。
しかし、財政難や歴代教皇の方針の違いにより、工事は一向に進まなかったといいます。
そんななか、1546年にサン・ピエトロ大聖堂の主任建築家に任命されたのが、当時すでに71歳だったミケランジェロ。
ミケランジェロは、これまでの設計を大幅に変えて予算と規模を切り詰め、驚異的な早さで工事を進めました。
そして彼は晩年までの17年間、なんと無給で大聖堂の再建に取り組んだといわれています。
そしてついにサン・ピエトロ大聖堂が完成したのは、1626年のこと。
ルネサンス期を代表する芸術家たちが手がけ、世界一の規模を誇る威容は、「聖堂のなかの聖堂」と呼ばれています。

広大なサン・ピエトロ大聖堂の内部は、「聖地のなかの聖地」といった神聖な空気に満ちている(Sun_Shine / Shutterstock.com)。

サン・ピエトロ大聖堂のクーポラから差し込む光が、より神秘的な空間を生み出している(Flowersandtraveling / Shutterstock.com)。

内陣の中央部に鎮座する、ベルニーニが作製したブロンズの「大天蓋(バルダッキーノ)」。高さ約29mと、ブロンズ像のなかで最大級の規模を誇り、この地下深くには聖ペテロの墓がある(mgallar / Shutterstock.com)。

聖堂の最奥部に置かれた、巨大な聖ペテロの椅子「カテドラ・ペトリ」。ベルニーニの手によるもので、10年の期間を要して1666年に完成した(DinoPh / Shutterstock.com)。
サン・ピエトロ大聖堂の見どころ
サン・ピエトロ大聖堂の内部に安置されている、十字架から降ろされたキリストを抱える聖母の彫刻、「ピエタ像」。
この像は、ミケランジェロが25歳の時に完成させた代表作で、彼が署名を入れた唯一の作品としても知られているほか、完成当時から「奇跡といえる彫刻」と高く評価され、同じ題材で造られたピエタ像のなかでも無類の最高傑作とされています。

ミケランジェロの「ピエタ像」。1972年にはトルコ人の精神病者がハンマーを打ち付ける事件が起き、それ以来防弾ガラスが据えられた(Moomusician / Shutterstock.com)。
サン・ピエトロ大聖堂内には、このほかにも時代を代表する芸術家たちの作品が数百にわたって収蔵されており、その多くが大作・傑作といわれている名品ぞろい。
「大聖堂」でありながら、「美術館」や「博物館」としても世界一の威容を誇っていると言えます。

大聖堂前に建つ聖ペテロの像。右手にはキリストに授けられた天国の鍵を持っている(DinoPh / Shutterstock.com)。

大聖堂周辺に立つスイス衛兵。彼らは伝統的にすべてスイス人で、衛兵になるためには、スイス国籍を持つカトリック信者で、道徳的に欠陥がなく、19~30歳までの未婚者、身長174センチ以上、高校を卒業しているか専門職免許があり、軍事訓練を受けていることなど、多くの条件が必要。カラフルな衣装はミケランジェロがデザインしたとも言われている(The World in HDR / Shutterstock.com)。
DATA
◉アクセス:ローマ・テルミニ駅からオッタヴィアーノ・サン・ピエトロ駅まで、地下鉄A線で約11分、駅から徒歩で約10分。
◉休業日:無休(ただし祭事等がある場合は入場制限あり)。