絶海の孤島
だだっ広い太平洋上に、北端のハワイ諸島(アメリカ)、南東端のイースター島(チリ)、南西端のアオテアロア(ニュージーランド)の3点から成る三角形「ポリネシア・トライアングル」と呼ばれる海域があります。
その東端に位置するイースター島は、最も近い有人島までも直線距離2000キロと、周囲にはほぼ島らしい島が存在しない、文字通りの絶海の孤島で、現在は4000人ほどが暮らしています。

モアイ像と野生の馬。
いくつもある島名の由来
イースター島という名前は、1722年のイースター(復活祭)に発見されたことに由来したもので、日本ではこの英語名が浸透していますが、正式名称はスペイン語で「復活祭」を意味する「バスクア島」といい、現地語ではさらに別の「ラパ・ヌイ」と呼ばれています。
「ラパ・ヌイ」とは、19世紀後半にこの島へ辿り着いたポリネシア系の先住民が付けた名前で、「広い大地」や「大きな端」を意味し、かつてはこのほかにも「テ・ピト・オ・ヘヌア(世界のへそ)」や、「マタ・キ・テ・ランギ(天を見る眼)」などと呼ばれたそう。
イースター島は世界遺産でもありますが、この現地名を採用した「ラパ・ヌイ国立公園」という遺産名で登録されています。

ラノ・カウ火山のカルデラ湖。ラノ・カウとは「豊かな水のある広い場所」という意味で、カルデラ湖には、長い年月をかけて貯まった雨水に植物が生殖し、絶景を作り出している。
ご存知「モアイ」
面積約180平方キロほどのこの小さな島を有名にしているのが、ご存知巨大なモアイ像。
軟らかく加工しやすい凝灰岩で造られたモアイ像は、最大のもので重さ80トン、高さ約8メートルに及び、イースター島内に1000体以上ものモアイ像が存在するのです。

モアイ像が削り出されていた石切り場、ラノ・ララク。制作途中や運搬途中のまま放置された約 400体ものモアイ像があり、ここでモアイ像を制作した後、島の各所に運んでいたと考えられている。
問題は、「こんな巨大な像を、なぜこんなにいっぱい造ったのか?」ということ。
研究によると、7~8世紀頃に「アフ」と呼ばれるプラットホーム状の石の祭壇作りが始まり、その後、10世紀頃にはアフの上に祖先信仰の偶像としてモアイ像が祀られるようになったと考えられています。
これらのモアイ像は、イースター島の各地にできた集落ごとに造られ、その集落の方向を向いて設置されていることから、守り神的な存在だったのではないかという説が有力。
ちなみに、モアイ像のデザインも時代よって変化があり、人の姿に近いもので下半身もあるものから、下半身がなく細長い手をお腹の辺りで組んでいるものに変化し、最後にいわゆる「モアイ」と聞いて想像する長い顔だけのデザインになりました。

「プカオ」と呼ばれる巨大な赤い石を帽子のようにかぶったモアイ像。
突如として破壊されたモアイ像
時代は下って18世紀。大航海時代を迎えたヨーロッパによってイースター島が発見されると、そのモアイ像に変化が起きていました。
最初は崇められていたモアイ像が、徐々に破壊され始めたのです。
現在直立しているモアイ像は、すべて現代人によって修復し設置し直されたもので、一時期はすべてのモアイ像が破壊され、倒されていたそうです。

破壊されたモアイ像。
なぜそれまで大切な存在だったモアイ像が破壊されたのか?
訪れたヨーロッパ人によって、キリスト教布教の妨げになると、現地の文字で書かれた資料の多くが焼き払われたこともあって、未だにその真相が分かっておらず、次のような仮説が唱えられています。
環境破壊による部族間の争い
モアイ造りには大量の木材が必要で、爆発的に人口が増えたイースター島でモアイ像が乱立され、それとともに森林破壊が進んだ結果、食料不足になって部族間の争いが始まり、相手の守り神であるモアイをうつ伏せに倒し、「マナ(霊力)」が宿るとされた目を粉々に破壊したという説。
かなり悲しい結末ですね……。
しかし、この説には矛盾もあることから、今なお研究が続けられています。

イースター島のパワースポット「テ・ピト・クラ」。中央の石は磁気をおびていて、不思議な力を秘めていると伝えられており、石におでこを当てるとパワーが貰えるとされる(RPBaiao / Shutterstock.com)。
イースター島いちばんの絶景ポイントと、日本の縁
イースター島最大の規模を誇るモアイ像群が見られるのが、島の東端にある最大の遺跡「アフ・トンガリキ」です。

アフ・トンガリキのモアイ像。人の大きさと比べると、その巨大さがよく分かる。
長さ100メートルのアフの上に、高さ5メートルを超える15体の巨大なモアイ像が立ち並ぶこの場所は、美しい日の出が見られることでも有名。

アフ・トンガリキのモアイ像と日の出の様子。
ここは、1960年のチリ沖大地震津波によってアフもモアイも押し流されてしまっていたのですが、その後1992年から日本のクレーン会社が協力して修復し、見事本来の姿を取り戻しました。
この時活躍した日本のクレーンは、今もなおモアイ像の修復に活躍しているそう。なんだか嬉しいですね◎
DATA
◉ベストシーズン:11月~4月
◉アクセス:チリの首都サンチアゴから飛行機で約5時間40分。