実在する「ロスト・ワールド」
コロンビア、ベネズエラ、ガイアナ、スリナム、フランス領ギアナ、ブラジルの6か国と地域にまたがる広大なジャングルのなかに、「テプイ」と呼ばれるテーブルマウンテンが、大小100余り林立するギアナ高地。
その中心となるベネズエラ南東部のカナイマ国立公園は、四国の1.6倍におよぶ面積を誇り、1994年に世界遺産に登録されました。

テーブルマウンテンが連なる光景。台形をした山がテーブルのように見えることからその名が付けられた。
このギアナ高地は、かつての地球の地軸に位置していて、20億年前に大陸が分裂していったプレートテクトニクスの際も同じ場所に留まったことから、テーブル状の不思議な地形ができたといわれ、20億年前の地球最古の地質がそのまま残されていると考えられています。
この過酷な自然環境のなかで動植物が独自に進化し、食虫植物や水棲のコオロギ、極小の跳べないカエルといった、めずらしい生物も数多く生息しています。

水かきがなく、泳ぐこともはねることもできず、卵からオタマジャクシにならずカエルのままふ化するカエルの一種で体長4センチ程度のオリオフリネラが数多く生息している。このオリオフリネラは、隣のクケナン山とロライマ山にしか生息していない。このため、2つの山は昔はひとつだったのではなかったかと推測されている。
こうしたことから、ギアナ高地は「世界最後の秘境」と呼ばれている場所なのです。
そして、かの有名なイギリスの作家コナン・ドイルは、この地にインスピレーションを得て、小説『ロスト・ワールド』を書いたといいます。
まさに、実在する「ロスト・ワールド」!
このほかにも、ピクサー映画「カールじいさんと空飛ぶ家(Up)」のモデルになったことでも有名です◎
「テーブルマウンテン」とは?
ギアナ高地の北西部に連なる、約17億年前の地表がむき出しになった、大小100にもなるテーブルマウンテン。
文字通り、テーブルのような形をしたこれらの山々は、2億5000万年前に大地が激しい雨で削り出されたことによって生まれました。

テーブルマウンテンに自生する多肉植物の一種。
それぞれの山は孤立しているうえ、標高は2000メートル級にもなるため、外界からは隔絶されています。そして頂上には荒涼とした岩だらけの世界が広がり、独自の進化を遂げた動植物が固有の生態系を形成していて、テーブルマウンテンで発見された4000種の植物のうち、なんと7割がこの地域固有のものでした。

荒涼とした世界が広がる、テーブルマウンテンの頂上。
その光景は、同じ地球のものとは思えないほど。
なかでも、標高2810メートルと最高峰を誇るのが、ロライマ山。

圧巻のロライマ山。
この山は、ベネズエラ、ガイアナ、ブラジルの3つの国境にまたがる巨大なテーブルマウンテンで、先住民ペモン族の言葉で「偉大」を意味する名前の通り、周囲に広がるサバンナの真ん中に垂直にそそり立つ威容は、陸に浮かぶ軍艦にも例えられるほどです。
テーブルマウンテンのなかでは比較的登山しやすいため、一般のトレッカーでも登ることができる貴重な山。それでも、ふもとの町サン・フランシスコから5泊6日の行程になるので、相応の準備は必要です!

トレッキングを終え、ロライマ山の頂上で絶景を眺める旅行者。
世界最大の落差を誇る「エンジェル・フォール(アンヘルの滝)」
そしてギアナ高地最大の見所は、なんといっても「エンジェル・フォール(アンヘルの滝)」でしょう!

エンジェル・フォール。当然あるはずの滝つぼがないという、不思議な光景を見ることができる。
この滝は、「悪霊のテプイ」という不吉な名前を持つ標高2535メートルのテーブルマウンテン「アウヤンテプイ」の山頂から流れ落ちる滝で、979メートルという世界最大の落差を誇ります。
あまりに高所から流れ落ちることにより、滝の水が滝つぼに落ちる前に飛沫となって空気中に拡散してしまうほど。そのため、エンジェル・フォールには滝つぼがありません!

エンジェル・フォールの地上部分は霧散した水により、つねに霧に覆われている。

上空から見たエンジェル・フォール。

エンジェル・フォールを真横から眺められる、絶景ポイント。
ちなみに「エンジェル・フォール」という名前は「悪霊のテプイ」に相対しているわけではなく、偶然にもこの滝を世界に広めたアメリカ人探検飛行家の名前がジミー・エンジェル氏だったから。
現地では、 「Kerepakupai merú(最も深いところにある滝)」や「Parakupa-vena(最も高くから落ちる滝)」と呼ばれています。
この滝の対岸にあるラトン島では、展望台から迫力ある水の落下を一望できますよ◎

カナイマ国立公園内を案内してくれるボートツアー(gary yim / Shutterstock.com)。
DATA
◉ベストシーズン:5月~9月
◉アクセス:首都カラカスから飛行機で約2時間。