偶然生まれた人工の噴泉塔「フライ・カイザー」
アメリカ・ネバダ州北西部にあるブラックロック砂漠。標高1191メートルの高地に位置し、東西を山脈に挟まれた盆地に広がるこの砂漠には、虹色をした世にも不思議な墳泉塔があります。
その始まりは1916年、この過酷な土地に農園を造ろうと試みた開拓者たちが井戸を掘り続けたところ、ついに水源を掘り当てたことに端を発します。
しかし、その井戸は熱湯が絶え間なく噴き出し続ける熱水源だったのです。
以来、「フライ・ガイザー(Fly Geyser)」と呼ばれるこの噴泉塔はその後も100年近く成長を続け、現在の姿になりました。

自然のものとは思えないほどカラフルなフライ・ガイザー。
この大地から盛り上がった塊のようなものは、温水に含まれる炭酸カルシウムが蓄積して大きくなったもの。
そして、フライ・ガイザー最大の特徴である、自然のものとは思えない鮮やかな虹色は、高温下で育つ特殊な藻類とミネラル成分が反応した結果生まれたものなんだそう。

噴き出す熱湯の高さは3〜4mに達する。

夕暮れのフライ・ガイザー。奇観でもあり、絶景でもある。
世界最大の奇祭「バーニング・マン」
↑ 思い思いの衣装を身にまとった「バーニング・マン」の参加者。
そんなフライ・ガイザーがあるブラックロック砂漠で、毎年8月に開催される恒例イベントが、「バーニング・マン(Burning Man)」。
このバーニング・マンは、不毛の地に架空の街を造るという過酷なイベントで、アメリカの祝日「レイバー・デイ」にあたる8月の最終月曜日から9月の第1月曜日まで、およそ1週間かけて開催されます。
祭りの参加者は、まずブラックロック砂漠の「プラーヤ(Playa)」と呼ばれる平原にゼロから街を造り上げ、そこで出会った隣人たちと共同生活を営み、自分を表現しながら1週間を生き抜き、そして最後に造り上げた街や作品を燃やしてすべてを無に還すというもの。

どこまでもひたすら平原が続くブラックロック砂漠。もともとは古代の湖の底がむき出しになった乾湖で、塩が堆積した白い大地「プラーヤ」にはサボテンすら生えない。
バーニング・マンという名称は、この最終日の深夜に、街の象徴である人型の造形物「ザ・マン(The Man)」を燃やす(burn)ことに由来しており、この非常に独特なルールから、「世界最大の奇祭」とも呼ばれています。
外界から遮断された「理想の街」
ちなみに、バーニング・マンで造られる街は「ブラックロック・シティ(Black Rock City)」と呼ばれ、直径2.4キロの扇型の市街地と、中心部のオープンスペースなどで構成される、総面積約4.5平方キロの五角形をしています。
↑ バーニング・マンの会場となる「ブラックロック・シティ」。
ブラックロック・シティは、外部の世界からほぼ遮断されており、電気や水道、ガス、電話、ガソリンスタンドなどのインフラのほか、売店や屋台、食堂などもいっさいありません。
参加者に与えられるのは、自然環境保護のため必要とされる仮設トイレと、食料の鮮度を維持するための氷だけ。
参加者は、水や食べ物、住居、燃料など、1週間の砂漠生活で必要とするものはすべて事前に準備しなければいけないのです。
また、「ヒッピー」的な独特の価値観が基礎となっているブラックロック・シティでは、貨幣経済や商行為は忌むべきものとされ、明確に禁止されていることから、このイベントに参加するうえでは見返りを求めない「親切な心」や「助け合いの精神」が重要になっているという点も、バーニング・マンのオモシロいところ。
↑ 参加者同士で助け合いながら街を造る。
そんな過酷な日々のなか、参加者たちは、広大な会場の各所で思い思いのアート・インスタレーションを行ないます。昼夜を問わず、会場の至るところで多種多様な活動が行なわれる光景は、ある意味でアートの祭典ともいえ、バーニング・マンに参加する意義のひとつになっています。
↑ 夜にはイルミネーションやライトが光り輝くインスタレーションが行なわれる。
↑ 子どもも参加可能!
1986年、ラリー・ハーベイとジェリー・ジェイムスのたった2人の活動から生まれたバーニング・マン。今では世界各地から数万人もの参加者が集まる巨大なイベントとして、世界から注目されています◎
DATA
◉ベストシーズン:8月~9月
◉アクセス:ロサンゼルスからリノまで飛行機で約1時間半、空港から車で約4時間。