モロッコ最古のイスラム王都
モロッコ北部に位置する内陸都市、フェズ。789年、ベルベル人のムーレイ・イドリス1世によって建設されると、その後はマリーン朝をはじめとするイスラム王朝の首都が次々と置かれた、モロッコ最古の王都です。
特に13~14世紀にかけては、宗教、学問、文化、商業の中心地として大いに発展・繁栄したフェズ。
なかでも、東西2.2キロ、南北1.2キロの城壁に囲まれた旧市街「メディナ」には、モロッコ最古にして北アフリカ最大規模の「カラウィーン・モスク」をはじめ、この時代に建設された数多くのモスクやマドラサ(イスラム世界における高等教育施設)などの貴重な歴史的建造物が残されており、1981年には世界遺産に登録されました。

メディナを囲む巨大な城壁と、メディナへの入り口。

メディナの西側入り口にあるブー・ジュルード門。中央には「ブー・イナーニーヤ・マドラサ」(左)と「カラウィーン・モスク」(右)のミナレット(尖塔)が見える。

カラウィーンモスク。もともとは、859年にチュニジアから避難してきたアラブ人やユダヤ教徒のための礼拝堂として建てられた。その後は拡張され、モスク内に「世界最古の大学」ともいわれるカラウィーン大学も創建され、アラブ諸国から多くの留学生が集まった。

1351年から1356年にかけてベルベル人の王アブー・イナーン・ファーリスによって建設され、マリーン朝における代表的な建築物として知られる、「ブー・イナーニーヤ・マドラサ」の中庭。
「世界最大の迷宮都市」

上空から見た、フェズのメディナ。まさに「迷路」そのものだ。
フェズの旧市街「メディナ」の内部は、外敵の侵入を防ぐ目的から狭い路地が複雑に入り組み、建物がひしめき合うようにして建てられています。
そのため、フェズは「世界最大の迷宮都市」とも呼ばれ、人がすれ違うのがやっとという狭さの路地には車が進入できないため、今もなお、昔からの輸送手段であるロバやラバが利用されています。

メディナの路地。ナンバープレートを付けたロバが人や荷物を運んでいる光景をよく見かける。

土産物店が軒を連ねるメディナのバザール。モロッコは乙女心をくすぐる雑貨の宝庫でもある(Dinozzzaver / Shutterstock.com)。

ビビッドなカラーに壁が塗られ、カラフルなじゅうたんが並ぶ、フェズのメディナ。

カラフルなモロッカンタイルが可愛すぎる、フェズの家の中庭。

銅製品を売る店では、店先で職人が銅製品を作る様子も見られる(Marko Rupena / Shutterstock.com)。
たとえ地図があっても、必ず迷ってしまうといわれるフェズの旧市街。日本語を話せるガイドもいるので、観光の際はできるだけガイドを頼みましょう! 客引きや物売りが寄って来ないという意味でも安心です◎
そんなフェズの旧市街の最大の見どころは、なめし皮を染色する作業場「タンネリ」。革製品の製作が昔ながらの手作業で行われており、その光景は圧巻のひとことです。

フェズ川のほとりにある、なめし皮を染色する作業場「タンネリ」。中世から使用されている丸い染色桶が並び、今も手作業で皮染めを行っている(TinasDreamworld / Shutterstock.com)。

腰まで染料に浸かって染色作業をする職人たち(canyalcin / Shutterstock.com)。
DATA
◉ベストシーズン:3月~5月、9月~11月
◉アクセス:フェズ・サイス空港からタクシーで約30分。または、カサブランカから列車で約3時間半。