ギリシャ・テッサリア地方の都市カランバカにある「メテオラ」は、垂直に突き出した高さ数百メートルの奇岩群と、その上に築かれた修道院群です。
風雨の浸食が生み出した自然美と、伝統的な修道院文化を伝える6つの修道院は、1988年、世界複合遺産に登録されました。
メテオラの歴史

メテオラの奇岩群と、奇岩の上に建てられた修道院。6千万年前に海底で堆積した砂岩が隆起し、浸食されて今の地形となった。
メテオラの奇岩群に人が住み始めたのは、9世紀のこと。ある修道士が岩山に洞穴や裂け目を見つけ、自然のなかでひとり祈りにふけるために、この地で修行を行うようになったといいます。

かつて修道士が修行生活を送っていた洞穴。
1340年頃、東ローマ帝国の弱体化により、ギリシャにはセルビア王国の勢力が及んでいました。当時の修道院活動の中心地は北東部のアトス山でしたが、アトス山の修道士たちは戦乱を避けてメテオラに避難します。
そして1356年、アサナシオスという修道士が、岩山のひとつにメガロ・メテオロン修道院を創立し、メテオラに修道院共同体が成立したのです。

メテオラ修道院群のなかで最大の修道院である、メガロ・メテオロン修道院。かつての食堂の建物が現在は博物館として公開されている。
なかでも名高いのが、1475年に修道士ドメティオスが「アギア・トリアダ(至聖三者)」にささげる修道院として創建した、アギア・トリアダ修道院。
高さ565メートルの奇岩上に建つ姿は、メテオラで最も有名な景観で、アギア・トリアダ修道院のなかでは、現在も数人の修道士がかつてのままの修道生活を継承し、メテオラの修道院文化を守り続けています。

アギア・トリアダ修道院。周囲を崖に囲まれ、まるで宙に浮んでいるかのように見える。

アギア・トリアダ修道院と、ふもとの町カランバカ。

上空から見たアギア・トリアダ修道院。

夕暮れのメテオラは、さらに荘厳さが増す。

修道服に身を包んだ、アギア・トリアダ修道院の修道士たち。修道院内部は、質素な内装。
アギア・トリアダ修道院の見どころ
「アギア・トリアダ(至聖三者)」とは、キリスト教の正教会において「父(神)」と「子(キリスト)」と「聖霊」が「一体(唯一の神)」であるとする教えのこと。

至聖三者を象徴する3人の天使を描いたイコン(Zvonimir Atletic / Shutterstock.com)。
正教会では、神そのものを絵に描くことは認められていませんが、『旧約聖書』に登場する3人の天使が至聖三者を象徴する図像表現としては公認されています。
そして、ギリシャ正教会には、こうした「イコン(聖画像)」に祈りをささげるという大きな特徴があり、アギア・トリアダ修道院にも至聖三者を象徴する3人の天使を描いたイコンを見ることができる。

16~17世紀のフレスコ画で埋め尽くされた、アギア・トリアダ修道院内部。

今もなお色鮮やかな状態を保っている(lexan / Shutterstock.com)。
DATA
◉アクセス:アテネからカランバカまで列車で約5時間、カランバカからバスで約20分。
◉休業日:木曜日