ヴァニラ・ノブです。アタシが支配人を務める架空映画館「テアトル・オネェ」。
新旧・内外・ジャンルも問わず、オススメの映画を取り上げてご紹介させていただきます◎
今回の上映作品は、ある世代のオネェたちにとってはライフスタイルのバイブル的映画、「SEX AND THE CITY」。
「SEX AND THE CITY」のおすすめポイント
■ “L”を探し続ける女性、オネェに必見の作品
■ きっと誰かに当てはまる4人の女性のキャラクター
■ 見終わった後、語り合いたくなるキーワード満載
■ いつ観ても斬新な、パトリシア・フィールドの衣装
■ 豪華すぎるウェディングシーン!
「SEX AND THE CITY」のあらすじ
1998年から2004年までシーズン6まで作られ放送されたドラマの映画化。
ニューヨークで暮らす、キャリー、サマンサ、ミランダ、シャーロットというそれぞれ成功した女性たちの恋愛、仕事、ライフスタイルを描いたもの。
放送開始からもう20年経つのよね〜。私も歳をとるはずだわ。
当時、アメリカに住むゲイ友が「すっごいドラマなの! まだ放送されてないの?なんで日本でやらないの! 絶対ハマるから見て!」って、ギャーギャー言いながら連絡があり、後日、数話録画したビデオが送られてきたのね。で、観たらオープニングで“これってもしかしてアタシたちのためのドラマ?”と、すでにアドレナリン噴出、終わる頃にはドーパミンもエンドロフィンもカウパーも全部出っぱなし!早く続きが見たいと思っていたらそうこうしてるうちにWOWOWで鳴り物入りで放送がスタート。
女性にも、ゲイにも見どころたっぷり

アカデミー賞授賞式に出席したパトリシア・フィールド(Everett Collection / Shutterstock.com)。
思った以上に直球であけすけなセックスライフを描いた内容は、これまでのドラマにはほぼ皆無だったからとても新鮮だったし、そこにニューヨークという最先端な街の文化や情報、パトリシア・フィールドのスタイリングによるファッションが加わって、女性はもちろんだけど、ゲイにはたまらないキーワードやアイコンが散りばめられていて、このドラマを見たいがゆえにWOWOWに加入したってゲイも多かったわぁ。
それに男の裸がたくさん出てくるのも見る要因のひとつでもあったわね。
ドラマを見ていたみなさんもきっとそうだったと思うけれど、それぞれがキャラ立ちした4人の女たちに自分を重ね合わせて、一喜一憂してたはず。かくいうアタシたちもゲイバーに集まっては「誰がキャリー?あっしはサマンだわー」なんて当てはめながら内容や出てきた男たちを肴にあーだこーだ言っては深酒してはハッテン場に消えたり、男探しにバーをハシゴしたりしたこともあったし……。
かくいうアタシはというと、好きが高じて、ニューヨークへ行ってロケ地巡りをしたほど。カップケーキで有名なマグノリアベーカリーやらキャリーのアパートの玄関を見に行ったり、そしてスタイリングしているパトリシア・フィールドの店舗に行ってめぼしいものはないかしらんと、年齢考えず訪れたり。でも当時はキティちゃんをはじめとした日本のKawaii!アイテムで溢れ返ってて、原宿にあるお店なんかと変わらないなぁってちょっとがっかりしたっけ。
ドラマ「SATC」から4年後の映画化

映画『セックス・アンド・ザ・シティ2』を撮影中のサラ・ジェシカ・パーカー(Everett Collection / Shutterstock.com)。
だからドラマが終わる頃にはほんと寂しくて、SATCロスになりかけで、シーズン1からもっかい見直し始めてこのまま永遠にループ視聴するんじゃないかなと思ったりしてた。それから数年後、やっとSATCロスも癒された頃に映画化の情報が流れ、そして放送終了から4年後、「SEX AND THE CITY」は映画版となってご帰還。そりゃもう友だちと狂喜乱舞。
とはいえ、若干の不安もないではなかったの、映画は実際のドラマ終わってからの年月である4年後を描いた物語になると。ということは、シーズン1からシーズン6でもかなりの変化が見られていたから、きっと4人の女性たち、お顔に相当なダメージが予測され、で、それを見越して、いろんなことをメンテナンスしてカスタマイズされた状態で出られちゃうと興醒めしちゃうしなぁって。それに映画のポスターはすでにフォトショップとタイアップしたんじゃないかしらと思うほどの多大なる力を借りてたし(特にサマンサ)。
それでも押さえきれないのがゲイの心情。世界中のゲイネットワークを駆使して情報が入ってくるごとにゲイ友たちとゲイバーでのおミー(あ、ミーティングのことね)を開催し、酒量も増えて、翌日浮腫んで、またおミーして情報交換と共有をし続ける日々が続いたっけ(遠い目)。
そしてすでに映画関係の仕事もしてたおかげで、試写会へ。当日は一緒に行ったゲイ友たちと完全SATC気取りで自分たちなりにおしゃれして、キャリーがつけてたネームネックレスをまねて、”Nobu” って綴りのネックレスを付けて(今思うと、アタシいったい何を目指してたんだろう……)待ちに待った映画版「SEX AND THE CITY」を。
で、気になる内容は……

2008年、映画『セックス・アンド・ザ・シティ the MOVIE』のプレミア試写会の様子。左から、シャーロット役のクリスティン・デイヴィス、キャリー役のサラ・ジェシカ・パーカー、ミランダ役のシンシア・ニクソン、サマンサ役のキム・キャトラル。
お話は、あれから4年。大富豪のミスタービッグとの関係は順調で、自身もセレブコラムニストとして成功し活躍するキャリー、年下の俳優の恋人、スミスとL.Aに移住したサマンサ、仕事を辞め養女を迎え、専業主婦となったシャーロット、仕事と家庭の板挟みになっているミランダと、それぞれの人生を歩んでいた4人が、キャリーが結婚することになり、再び集まるのだけど、様々な問題が次々と露呈するってもの。
「毎年、20代の女性たちが、ふたつの“L”を求めてニューヨークにやってくる。 “LABEL”と“LOVE”。 20年前、私もそのひとりだった……」 で始まるオープニングでなぜか号泣(今思うとアタシいったい何に涙したんだろう……今ならXLのサイズの服を求めてばかりなんだけど)。あとはキャリーの結婚話を軸に中年女性たちの抱えるリアルな問題が浮かび上がって笑ったり、喜んだり、怒ったり、涙したり、4人の劣化の度合いを心配したり、ニューヨークへすぐにでも旅立ちたくなったりの2時間26分だった。
見終わって、興奮冷めやらぬ状態で、予約していたワインバーへ移動し、シュワシュワをポンと空けて、それぞれの感想を好き勝手に話し続けてたっけ(ゲイの好き勝手は、本当に好き勝手なので自分の話したい事さえ話せればいいの)……。その時の記憶は……ほとんどないの、ごめんなさい……。そんな喜怒哀楽をゲイにも味あわせてくれた映画版が公開されて、今年で10年よ!さらに歳取ったわ〜。
今回、改めて見たけれど、我の強すぎた「細雪」って感じが。それに実年齢がキャラクターたちと近いからか当時よりもエピソードがいちいち胸にグサグサと突き刺さる、突き刺さる。キャリーのワガママぶりと女王様ぶりはしょうがないわねと思って、結局は「風と共に去りぬ」のレッド・バトラーや「嵐が丘」のヒース・クリフみたいな男が好きなのねとか、キャリーの親友でゲイのスタンフォードの、一見地味だけど彼女たちに取っての存在の大きさ(だからと言って、ゲイ友を安易に求めたりしちゃ、あなたたちはダメよ!)、サマンサの「あなたより自分を愛しているの、自分自身と付き合って49年、私には自分が必要なの」という言葉にはゲイとしてハッとさせられたり、ミランダの、仕事する女性に対する男たちの見方というのは今の#Me Too運動にも通じるわねと感じたり……。
観るたびに新しい発見があって

映画『セックス・アンド・ザ・シティ2』の撮影風景(Everett Collection / Shutterstock.com)。
パトリシア・フィールドが映画に登場する服について「持続するファッションである事。翌年のファッションではないの、その次のシーズンでもない。この映画が今から20年経ってもちゃんと見えるものを作る事なの」って発言してるんだけど、監督も脚本家も、出演者もそう思ってたはず。だから今も見ても全てが新鮮さを感じさせられる要素を持ってる。根底には2つの“L”があるから。“愛”は色褪せない永遠のブランド。“愛”を求めてる限り、この映画は毎回発見があるかもしれないわね。
ちなみに、2年後に作られた映画版の続編「SEX AND THE CITY2」は、オープニングのスタンフォードと犬猿の仲だったアンソニーとの同性婚のシーンで、まさかのライザ・ミネリが登場してビヨンセの「Single Ladies」を歌い踊る場面以外は4人へのご褒美社員旅行映画だったわ。「SEX AND THE CITY3」が作られるとか言ってたけど、正直、もういいなって思っちゃう。3つ目の“L”がLonelinessの“L”にならないように。SATCには似合わないし。
MOVIE DATA
「セックス・アンド・ザ・シティ(Sex and the City)」
■ 監督 …… マイケル・パトリック・キング
■ 出演 …… サラ・ジェシカ・パーカー、キム・キャトラル、クリスティン・デイヴィス、シンシア・ニクソンほか

セックス・アンド・ザ・シティ (字幕版)
Buy for Amazon