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【世界の官能名画美術館 #10】モディリアーニの「赤い裸婦」

西洋の美の歴史は、つねに性愛とかかわるものでした。あまたの巨匠たちが性を想起させ、異性を誘惑する魅惑の肉体を備えたヌード画を描き、究極の美を追求してきたのです。

このシリーズでは、世界に名だたる西洋絵画の巨匠たちと、彼らが究極の美を追い求めて描いた名画をご紹介していきます◎

誰もが知る名画には、いったいどんなエロティシズムが隠されているのでしょうか?

第10回目は、イタリア出身で「エコール・ド・パリ(パリ派)」の画家のひとりに数えられる、アメデオ・モディリアーニ「赤い裸婦(腕を広げて横たわる裸婦」についてひも解いてみましょう。

画面いっぱいに広がる、新しい女性ヌード

【世界の官能名画美術館 #10】モディリアーニの「赤い裸婦」1

「赤い裸婦(腕を広げて横たわる裸婦)」。1917年、油彩・カンヴァス、60×92cm、ミラノ・ヴェネツィア、マッテオリ・コレクション所蔵。

間延びした顔、白目のない目、彫刻のような身体、異邦の雰囲気さえ漂う肌の色。そのすべてにおいて、独創性の強い作風を確立したのが、イタリアの画家アメデオ・モディリアーニです。

今回ご紹介する「赤い裸婦(腕を広げて横たわる裸婦)」は、1917年、フランス・パリのベルト・ヴェイユ画廊のショーウィンドウに初めて展示されました。しかしその猥雑さが問題視され、たちまちスキャンダルの的となり、展示が中止される事件となったのです。

問題となったのは、横たわる女性のアンダーヘアが描き込まれたことでした。

西洋絵画のスキャンダルな伝統は、このアンダーヘアを描くか描かないかにありました。モディリアーニの本作も、争点となったのはこの部分だったのです。

また、西洋絵画のなかでも、横たわる女性のヌードを描いた作品は多いのですが、画面をはみ出すほどいっぱいに裸体を描いた構図は、モディリアーニが採用するまであまり見られない表現だったのです。

これによって、胴体の形と曲線が強調され、官能的な印象が高められています。まさに、これまでの伝統から離れた近代の夜明けを告げる、新しいヴィーナス像の誕生でした。

【世界の官能名画美術館 #10】モディリアーニの「赤い裸婦」2

モディリアーニはポートレートを多数描いたことで知られるが、いずれもアーモンド型の塗りつぶされた目、間延びした顔が特徴的である。あらゆる個別性を捨て去ったようにも見えながら、そこには不思議と個性を感じさせるものが存在する。この「赤い裸婦」もまた、抽象化されながらも妖しく官能性を放つ表情をしている。

才能と悲劇に愛された画家、モディリアーニ(1884-1920年)

【世界の官能名画美術館 #10】モディリアーニの「赤い裸婦」3

モンマルトルにあった集合アトリエ兼住宅で、ピカソによってキュビスムが誕生した場所として知られる「洗濯船(バトー・ラヴォワール)」でのモディリアーニ。

1884年、イタリア・トスカーナ地方の都市リヴォルノに生まれたアメデオ・モディリアーニは、芸術や哲学の素養に恵まれ、その後、14歳の頃にデッサンの修行を始め、母とともにイタリア中を旅行しながら、ヨーロッパ美術の中心地として培われた伝統芸術の名作を鑑賞してまわりました。

この経験が、彼の芸術家としての血肉となり、1906年、フランス・パリへ移住。モンマルトルのコランクール街にアトリエを構え、創作活動に没頭していきます。

その後、モンパルナスに移住したモディリアーニですが、大量の飲酒癖と、持病だった肺結核が彼の身体をむしばんでいくことになります。

画商レオポルド・ズボロフスキーの支援を受けながら、1917年に生前唯一の個展を開くのですが、猥雑な絵が問題となり、あえなく中止となってしまいます。

同年、ジャンヌ・エビュテルヌと結婚し、翌年には長女が生まれますが、モディリアーニの無頼な生活は変わらず、1920年、結核がもとで35歳の若さで亡くなりました。

さらにその当時、ジャンヌは第2子をみごもっていたのですが、夫の死の2日後、ショックのあまり自ら命を絶ってしまいました。

モディリアーニの人生は、芸術家、そして悲劇の主人公の代名詞のような生涯でした。

【世界の官能名画美術館 #10】モディリアーニの「赤い裸婦」4

モディリアーニのミューズとなったジャンヌ・エビュテルヌの肖像写真。モディリアーニの死後、ショックのあまり、自ら命を絶った。

【世界の官能名画美術館 #10】モディリアーニの「赤い裸婦」5

モディリアーニが描いたジャンヌの肖像。長い首と顔、取り澄ましたような表情が、謎めいた印象を与える。アメデオ・モディリアーニ「赤毛の若い娘(ジャンヌ・エビュテルヌの肖像)」(1918年、油彩・カンヴァス、個人蔵)。

出典:『世界の官能名画―光と闇に彩られた官能絵画の祭典』(メディアソフト)

【世界の官能名画美術館 #10】モディリアーニの「赤い裸婦」

『世界の官能名画―光と闇に彩られた官能絵画の祭典 』(メディアソフト)

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