日本の大学を卒業後、アメリカの短大でホスピタリティを学び、現在はアジアの航空会社でキャビンアテンダント(CA)としてお仕事中の筆者が、日々のフライトで経験した、CAならではのウラ話をお届けしていきます◎
ところで皆さんは、”自分のなかでは当たり前のことが、ほかの人には全然違っていた”ということ、ありませんか? 機内でたとえると、以前にお話したリクライニングの件も、皆さんそれぞれに見解が違っていましたよね!
今回は、そんな「当たり前」の違いによって生まれた、「座席の肘掛けの使い方」についてのできごとをお伝えしたいと思います◎
飛行機あるある「肘掛けの争奪戦」

すでに隣の人が使っていたら、空気を読んでなんとなく遠慮……。でも心の中では「なんで?」と思っていたり。
ある日のフライトでのこと。3列並んだ座席のうち、通路側には日本人の男性客が、真ん中にはインド人と思わしき女性客が、窓側にはインドか中東あたりの男性客が座っていました。
そして、搭乗がだいたい終わりかけていた頃に、真ん中に座っていたインド人の女性客にコールボタンで呼ばれて、お話を聞きに行くことに。
するとこの女性は、「この真ん中の肘掛けは、いったい誰のための肘掛けなの!?」と、しょっぱなからすでにご立腹の様子でした。
そこで私は、”真ん中の席だし、両隣のお客様に肘掛けを使われてしまったのかな?”と解釈しました。飛行機で2列以上座席が並ぶ場合、肘掛けの数はどうしても人数分より少なくなってしまうため、すべての席にお客様が座っている場合は、譲り合って使っていただくしかありません。
私もその旨を説明しましたが、その女性の言い分では、「窓側と通路側の人はすでに両端の肘掛けがあるんだから、真ん中にある2つの肘掛けは、いちばん居心地の悪い席に座っている真ん中の人のモノだ」ということだったのです。
なるほど……。私のなかでは、”肘掛けはみんなで譲り合って使う”という考えが当たり前で、その女性のような発想はなかったため、少々面食らってしまいました。
肘掛けの使い方は、航空会社によって決まりがある!?

限られたスペースでは、どうしても肘掛けの数は少なくなる。
さらにその女性は、「ほかの航空会社では決まりがあり、2つの肘掛けは真ん中の席の人のモノで、なぜこの会社には決まりがないのか理解できない」とおっしゃっていました。
そこで私は、「のちほど責任者に確認しておきます」とお伝えして、いったんその席を離れることに……。
その後、すべてのお客様の搭乗が終了したときに、窓側の座席にはすでにお客様がいるけれど、真ん中と通路側は空いているという席があったので、先ほどの女性に、「その席に移ってはどうか?」ということを提案してみました。
すると女性は「ぜひ移ります!」とおっしゃったので、私も「これで収まるか……」とホッとしたのもつかの間、彼女はその席に着いたとたん、こんどは「私はあなたに恥ずかしい思いをさせられた。あんな言い方をされると、まるで私が間違っているみたいじゃないの!!」と、さらに怒り始めるではありませんか!
私はお客様の言い分を否定したつもりはいっさいありませんし、ただ私の航空会社の事情を説明しただけのつもりだったので、そのクレーム内容にはさらにビックリ。
さらには、「肘掛けのこと、責任者に確認を取ってください。これであなたが間違っていたら、レポートします!」と、そのお怒りは増す一方でした……。
なんとか見つけた解決策は?

「譲り合って仲良く……」が理想だけど、そうもいかないのが人の世。
その後もひたすら謝罪をしながらお話をうかがっていたところ、どうやら最初の席で隣に座っていた日本人の男性は、この女性の旦那様であるということが分かりました。
そこで私は、新しい席の窓側に座っていたお客様に、「女性の旦那様が座っている席と代わっていただけないか?」と打診をしてみたところ、快諾して下さりました。
そして旦那様が隣にやって来た頃には、その女性も怒りがおさまって私の謝罪と対応に納得し、最後には笑顔で「ありがとう」と言ってくださりました◎
のちほど、”肘掛けの所有権”について責任者に確認してみましたが、やはり私の会社には肘掛けに関する決まりはなく、「譲り合って使ってもらうしかない」と言っていました。
またその責任者は、「インドの航空会社にはあるのかな?」と言っていたので、今度インドの航空会社の方に会う機会があれば、聞いてみたいと思います。ちなみに、アジアのほかの航空会社で働く友人にも聞いてみましたが、やはり”そのような決まりはない”とのことでした。
まとめ

「どうしても両側の肘掛けを占有したい!」という人は、ビジネスクラスやファーストクラスを利用しましょう◎
このときは結果的に丸く収まりましたが、”ものごとの解釈は人それぞれ違っているし、私の言い方ひとつでお客様に不快な思いをさせてしまうのだな”と反省しました。
また、このときの会話は英語でのやり取りだったということもあり、日本語のようにオブラートに包んだ言い方ができないため、”もしかして単刀直入すぎてお客様を傷つけてしまったのかな?”とも思ったり……。
今回の件では、私の見解が航空会社と一致していましたが、もしもインドの航空会社だったら、私の見解が間違っていたのかもしれません。とにかく、何ごとにおいても自分の考えが正しいと思わず、いったんそれぞれの立場になって考えてみることも大事だと学んだフライトでした◎