【世界の官能名画美術館〈番外編〉】ジャン・レオン・ジェロームと、魅惑のオリエンタリズム top

【世界の官能名画美術館〈番外編 1 〉】ジャン・レオン・ジェロームと、魅惑のオリエンタリズム

西洋の美の歴史は、つねに性愛とかかわるものでした。あまたの巨匠たちが性を想起させ、異性を誘惑する魅惑の肉体を備えたヌード画を描き、究極の美を追求してきたのです。

このシリーズでは、世界に名だたる西洋絵画の巨匠たちと、彼らが究極の美を追い求めて描いた名画をご紹介していきます◎

誰もが知る名画には、いったいどんなエロティシズムが隠されているのでしょうか?

今回は番外編。東洋の神秘に新たな美を求めていった西洋の画家たち。「オリエンタリズム」「オリエンタリスト」(東洋趣味)と呼ばれた東洋趣味の画家たちが描いた、エキゾチックな魅力をたたえる名画について、ご紹介していきます◎

「オリエンタリズム」が生まれた背景

19世紀、西洋の列強諸国が、それまでのヨーロッパ内での小国同士の小競り合いから、航海時代を通じて新大陸などの発見を伴い、植民地支配の体制を確立し始めました。そして領土の拡大は、やがてアフリカや新大陸、中東、アジアへと広がっていったのです。

これにより、西洋社会には今まで見たことがない異国の文物が流入することになり、各国の収集家や新しもの好きの美術愛好家たちに人気を博すことになります。芸術家たちもまたこれに大きな影響を受け、自身の作品のモチーフにする者たちが、フランスを中心に現われました。

これがいわゆる「オリエンタリズム」、あるいは「オリエンタリスト」(東洋趣味)の画家たちです。

オリエンタリズムを代表する画家、ジャン・レオン・ジェローム

【世界の官能名画美術館〈番外編〉】ジャン・レオン・ジェロームと、魅惑のオリエンタリズム01

ジャン・レオン・ジェロームの肖像写真。

1893年には、パリでオリエンタリスト画家協会が結成されましたが、その初代会長を務めたのが、ジャン・レオン・ジェロームです。

1824年、フランス東南部の地方都市に生まれたジェロームは、地元の美術教室で、少年期からデッサンの指導を受けていました。16歳になるとパリへ出て、写実的な手法で評判だった画家ポール・ドラローシュに師事。その後、アカデミーで着実に評価を得て、フランス・アカデミスムの中心的な画家へと成長していきます。

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「アレオパゴス会議のフリュネ」。1861年、油彩・カンヴァス、80×128cm、ハンブルグ、ハンブルグ美術館所蔵。ジェロームが1861年に制作した絵画で、古代ギリシャの伝説的なヘタイラ(娼婦)であるフリュネが、不敬虔を理由に裁判にかけられた場面を主題にしている。

なかでもジェロームにとって転機となったのは、1853年のトルコへの旅行でした。

現地で見たイスラム文化の建物や装飾品、人々の生活に魅了されたジェロームは、その後、小アジアやアルジェリアなどを転々とし、異国情緒あふれる光景を自身の作品に反映させていったのです。

ジェロームは特に、画中に描き込まれた装身具や化粧、調度品をできる限り現実に即して描くことで知られ、その緻密な作業は、民族学者が異国の文物をこと細かに描写する「民族誌学」にたとえられるほどでした。

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「蛇使いの誘惑」。1879年、油彩・カンヴァス、82.2×121cm、マサチューセッツ、スターリング&フランシーヌ・クラーク美術館所蔵。

男性を魅了する、東洋女性の姿

ここでは、そんなジェロームの東洋(オリエント)を題材にした、主要な作品を紹介していきましょう。

【世界の官能名画美術館〈番外編〉】ジャン・レオン・ジェロームと、魅惑のオリエンタリズム03

「奴隷市場」。1866年、油彩・カンヴァス、84.3×63cm、ウィリアムズタウン、スターリング&フランシーヌ・クラーク美術館所蔵。

【世界の官能名画美術館〈番外編〉】ジャン・レオン・ジェロームと、魅惑のオリエンタリズム04

「ブルサの大浴場」。1885年、70cm×100cm、個人所蔵。トルコにあった大浴場の様子を描いたもの。

ジェロームの描く東洋は、主に中東を指しています。特に女性は男性を誘惑するかのように、魅惑的かつ官能的に表現され、描かれるアラブ系男性は好色な印象を与えます。

じつはこうした作品傾向は、ジェロームだけではなく、いずれも「オリエンタリズム」と呼ばれる画家・作品群には共通のものでした。

それはいわば、「西洋から見た東洋」を、的確に表現したものだといえます。西洋人の男性が、理性的で物事を的確に観察する画家のような存在ならば、東洋はつねに描かれる題材となる側でした。

そうして描かれた作品たちには、”東洋の男性は好色で堕落しており、東洋の女性は性をむさぼり、淫乱である”、といった主張が裏に隠されていたのです。

出典:『世界の官能名画―光と闇に彩られた官能絵画の祭典』(メディアソフト)

【世界の官能名画美術館〈番外編 1 〉】ジャン・レオン・ジェロームと、魅惑のオリエンタリズム

『世界の官能名画―光と闇に彩られた官能絵画の祭典 』(メディアソフト)

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