イラン中央部、首都テヘランの南約340キロに位置するイスファハンは、古くから東西交易の要衝として繁栄したオアシス都市。
その中心に位置するイマーム広場は、周囲を青を基調とした精密なアラベスク模様のタイルで覆われた荘厳なモスクや宮殿によって囲まれた壮麗な広場で、1979年に世界遺産に登録されました。
「イスファハンは世界の半分」

アリ・カプ宮殿からイマーム広場を眺める。広さは南北約510m、東西約160mに及ぶ。
イマーム広場がある街、イスファハンが栄華の頂点を極めたのは、17世紀のこと。
16~18世紀前半にかけて、現在のイランを中心にこの地を支配したイスラム王朝、サファヴィー朝のアッバース1世が、1598年にイスファハンを首都と定めると、大規模な都市計画にもとづいて、イマーム広場を中心に贅を尽くした建造物を次々と建設しました。
そして人々はその繁栄ぶりを見て、「イスファハンは世界の半分」と称したといいます。
イマーム広場の概要

イマーム広場の中心にある池。その周囲を囲む2層のアーケードが圧巻だ。
1617年頃に完成したイマーム広場は、かつては「メイダーネ・シャー(王の広場)」と呼ばれ、正式名称は「メイダーネ・ナクシェ・ジャハーン(世界の肖像の広場)」といいます。
イスラム教の聖典『コーラン』に記されている楽園を手本とした壮麗な広場で、南北512メートル、東西159メートルという広大な長方形をしており、その周囲を2層のアーケードが取り囲んでいます。
そして、イマーム広場最大の特徴としては、四辺にそれぞれ1件ずつ、記念碑的な建築が配置されている点。
南には精密なアラベスク模様のタイルで覆われた「イマーム・モスク」、西にはかつて王が暮らした「アリ・カプ宮殿」、東には王族専用のモスクである「シェイク・ロトフォッラー・モスク」、そして北には「大バザール(市場)」が広がっています。

絶頂期を迎えたサファヴィー朝のイスラム建築を代表する、イマーム・モスク。もともとは創立者のアッバース1世を記念し、「マスジデ・シャー(王のモスク)」と呼ばれていた。1612年に建造が始まり、1630年に完成した。(Victor Jiang / Shutterstock.com)

イマーム・モスクのイーワーン( アーチを備えた少ホール)。天 井部分のハチの巣状の複雑な装飾に圧倒される。

イーワーンの天井に施された、鍾乳洞を模した複雑な装飾は必見。(Fotokon / Shutterstock.com)

イマーム広場の建設以前からあった建物のひとつである、アリ・カプ宮殿。15世紀のティムール朝時代に建てられ、アッバース1世が1598年に2層の建物を追加した。この建物は、王宮への「大門」、広場に面した「観閲場」、そして王室の「迎賓館」などの役割を持っていた。(Pe3k / Shutterstock.com)

シェイク・ロトフォッラー・モスク。イマーム・モスクが「男性のモスク」と呼ばれるのに対し、こちらは「女性のモスク」と呼ばれる。(Fotokon / Shutterstock.com)

精緻な装飾で埋め尽くされたシェイク・ロトフォッラー・モスクの内部。(Pe3k / Shutterstock.com)
現在のイマーム広場は、池などが設けられ公園化されていますが、本来は一面に砂が敷かれた平坦なグランドになっていて、さまざまな儀式や競技が催されたといいます。
イマーム広場の楽しみ方
そんなイマーム広場で最も楽しいのが、大バザールでのショッピング。大バザールには、スパイスやじゅうたん、貴金属類、絵画など、ありとあらゆるものが売られており、観光客でにぎわっています。

さまざまなものが売られる大バザール内。(Pe3k / Shutterstock.com)
また、広場を囲む長大なアーケードは、かつて上下2層のうち下層だけが店舗として活用され、アーチ1単位ごとに区分し、商人や手工業者に貸与されていたのですが、現在では数多くの雑貨店や土産物店が並んでいて、大バザールとともに、ショッピングのメッカとなっています◎

色鮮やかな手工芸品の数々は、見ているだけでも楽しい。

広場を囲むアーケード。1階部分にさまざまな店舗が入り、多くの人でにぎわっている。(eFesenko / Shutterstock.com)
ショッピングの合間には、イマーム広場を一望できる2階の「チャイハネ(喫茶店)」で、チャイを飲みながらひと休みしましょう◎
DATA
◉アクセス:テヘランからイスファハンまでバスで約6時間、バスターミナルから広場までタクシーで約25分。
◉ベストシーズン:3月下旬~5月、10月~11月