中国の首都・北京旧市街の中央に位置する巨大な宮殿、「紫禁城(しきんじょう)」。「昔の宮殿」を意味する「故宮(こきゅう)」という別名の通り、かつて明、清朝の王宮として、歴代24人の皇帝が暮らした場所です。
その総面積は約72万平方メートルにおよび、世界最大の宮殿の遺構として知られており、1961年には中国国務院によって国家重要文化財に指定され、その後、1987年には「北京と瀋陽(しんよう)の明・清王朝皇宮」のひとつとして、世界遺産に登録されました。
現在は、およそ100万点もの収蔵品を擁する「故宮博物院」として、一般に公開されています。
紫禁城(故宮)の歴史

紫禁城の中心であり、皇帝の即位、皇后冊立などの重要な儀礼が実施される場となった「太和殿(たいわでん)」と、その前の広場。
紫禁城(故宮)が完成したのは、1420年のこと。
明の第3代皇帝である、永楽帝(えいらくてい)により、15年の歳月と数十万人もの労働力を動員し、元代の宮殿を基に建造されました。
1644年には、李自成が起こした農民反乱「李自成(りじせい)の乱」によって北京が占領された際、一度は焼失してしまいますが、その後、李自成を滅ぼして北京に入城した清朝によって再建され、皇帝の居城兼政治の舞台となりました。
紫禁城(故宮)の大きさは、南北960メートル、東西760メートル、部屋数は9000近くにおよびます。かつてはここに、皇族に仕える9000人の宮女と、10万人の宦官(かんがん、去勢を施された官吏)が暮らしたといいますから、「宮殿」というよりも、むしろ「街」に近い規模といえるでしょう。

「太和殿」。最も権威のある建物で、式典時には前の広場に官吏たちがずらりと並び、全員で手と額を地面に付ける「三跪九叩頭(さんききゅうこうとう)の礼」を行った。

「太和殿」の屋根の上に並ぶ、魔除けの装飾。通常、中国建築では先頭に霊鳥に乗った仙人が、最後に龍(「旁吻」または「倉獣」)、その間に神獣(「脊獣」または「走獣」)が数体並び、神獣の数は建物の格が高くなるほど増えていく。「太和殿」の神獣は10体で、中国最高となっている。

紫禁城をぐるりと囲む幅52メートルの堀、「内金水河(ないきんすいが)」。奥には「太和殿」への入り口である「太和門」がそびえる。

「太和殿」、「中和殿」とともに、外朝の三宮殿を構成すると「保和殿(ほわでん)」の玉座。ここでは、淸・乾隆年間以降ずっと、この建物で皇帝自らが執り行う「科挙」の最高試験、「殿試」が行われた。

皇帝が私的生活を送る「内廷(ないてい)」の中心となる宮殿「乾清宮」の内部。第4代康熙帝(こうきてい)まで、皇帝の寝所として使用された。玉座が安置され、その上には『正大光明』の扁額がある。(Zhao jian kang / Shutterstock.com)

かつて中国皇帝の妃たちの居住区として使われた、「内廷東六宮」内にある、「大成左門」。現在は「鐘粹宮玉器館(しょうすいきゅうぎょくきかん)」の入り口として使用されており、内部には玉の展示品が200余り展示されている。

紫禁城の敷地の四隅に設けられた角楼のひとつ、北東の角楼。ライトアップされる夜間もおすすめだ。

中国で有名な3つの「九龍壁」のひとつ。長さ29.4メートル、高さ3.5メートルもある巨大な瑠璃装飾の壁で、1772年に建造された。現在は、紫禁城(故宮)観光のメインのひとつとなっているが、この九龍壁を見るには、別料金が必要となる。
紫禁城(故宮)を一望できる絶景スポット

「景山公園」の北門と、山頂の「万春亭」。景山は、明代に紫禁城を造った際、元の宮殿であった「延春閣」の跡地に、堀を掘った時の残土で5つの峰を形成する形で造られた、人工の山。風水を元に、紫禁城に殺気が入ることを防ぐため、紫禁城の真北に造られたと言われている。
街のように巨大な紫禁城(故宮)は、近くからだとほんの一部しか見ることはできません。そこでオススメなのが、紫禁城(故宮)の北側にそびえる「景山」に登ること。
景山は、かつて皇帝の庭園として使用された山で、現在は「景山公園」として一般開放されています。その山頂にある堂「万春亭」からは、紫禁城の全容を一望でき、その眺めはまさに絶景のひと言です◎

紫禁城の北側にそびえる景山の頂上から、街のように広大な紫禁城を望む。
DATA
◉アクセス:天安門西駅から徒歩で約10分、バスで約5分。または、北京国際空港からタクシーで約30分。
◉ベストシーズン:9月中旬~11月中旬