フランス最東端に位置するアルザス地方。スイスとドイツに接し、複雑な歴史を歩んできた背景から、さまざまな文化が混在する地域となりました。
なかでもコルマールは、ドイツ風のカラフルな木骨組みの家々が立ち並ぶ運河の街であり、そのメルヘンチックな街並みは、ディズニー映画「美女と野獣」やジブリ映画「ハウルの動く城」の舞台になったともいわれています。
フランスとドイツが混在する街「コルマール」

木枠を使った木骨組みの家や、石畳の道が美しいコルマール旧市街。(RossHelen / Shutterstock.com)
コルマールが初めて文献に登場するのは823年、当時は「鳩(ハト)小屋」を意味するラテン語「コルンバリウム(Columbarium)」と呼ばれていました。
その後、13世紀には現在のドイツを中心とする神聖ローマ帝国の支配下となり、街に城壁が築かれると、1226年に帝国自由都市の資格が与えられ、自由都市として繁栄します。
そして17世紀後半、アルザス地方がドイツ圏からフランス王国に割譲されたことにより、ドイツ文化圏のコルマールはフランス領アルザスの都市となりました。
しかし、1870年にフランスとドイツ・プロイセン王国の間で起こった普仏戦争で、フランスがプロイセンに敗北したことにより、コルマールは1871年にふたたびドイツ領に。
さらにその後、1918年にフランスがふたたびコルマールを自国領に編入したり、第二次世界大戦中の1941年にフランスがドイツに降伏したことでドイツ領になったり、ドイツの敗戦によってまたフランス領になったりと、2つの国の間で翻弄されるのです。
その結果、コルマールの街にはフランスとドイツ、2つの文化や建築が混在した、独特の街並みが築かれることとなったのです。

まさにおとぎ話のなかに出てきそうな、木骨組みの家。ドイツでは中世から受け継がれてきた伝統的な建築法で、積み木のように箱を積み上げたような構造が特徴。

小さな路地裏もこの通り、歩いているだけでいい気分に浸れること間違いなし。
コルマールの見どころ
コルマール最大の見どころは、なんといっても旧市街。街の中心である広場から運河に沿って歩くと、木骨組みのカラフルな家々が立ち並ぶ旧市街があり、中世からルネサンスにかけての面影を今に残しています。

コルマールを象徴する、「ポワッソヌリ通り(Quai de la Poissonnerie)」の景観。カラフルな家々や運河の美しさが、まるでイタリアのヴェネツィアのようだということで、「プティ・ヴニーズ(プチ・ヴェニス)」と呼ばれている。
中世絵画や工芸品を展示する「ウンターリンデン美術館」、コルマール出身であり、アメリカにある「自由の女神像」などを製作した彫刻家フレデリク・バルトルディの生家(記念館)、そしてスタジオジブリのアニメ映画『ハウルの動く城』にも登場する、1537年に建てられたルネッサンス建築「プフィスタの家」など、見どころも豊富。

建物自体も可愛らしい、ウンターリンデン美術館。「イーゼンハイム祭壇画」と呼ばれる、有名なキリストの絵は必見。(Jeff Whyte / Shutterstock.com)

彫刻家フレデリク・バルトルディの生家。現在は記念館として一般に公開されている。(g215 / Shutterstock.com)

ジブリ映画「ハウルの動く城」の主人公ソフィーが働いていた帽子屋のモデルとして有名な、「プフィスタの家」。1537年に帽子職人の館として建てられた。(RossHelen / Shutterstock.com)

コルマール旧市街にある、「サン・マルタン教会」。この教会の屋根にはコウノトリが巣を作っていて、「サン・マルタン教会のコウノトリを見たら幸せになれる」という言い伝えがある。(milosk50 / Shutterstock.com)

家々がクリスマス仕様に飾られるクリスマス・シーズンのコルマールは、さらにメルヘン度が増してオススメ◎

ドイツ文化が色濃いコルマールは、クリスマス・マーケットも開かれる。(cge2010 / Shutterstock.com)
ちなみに、コルマールは小さな街なので徒歩で周るだけでもじゅうぶん楽しめますが、街を走るレトロなトラムに乗って移動すれば、よりいっそう旅気分を盛り上げてくれます◎

ウンテーリンデン美術館前のクレベール通りから発着するトラム。じっさいには電車ではなく車両だが、コルマールの街によく似合う、レトロなデザインが◎(Thanakrit Sathavornmanee / Shutterstock.com)
DATA
◉ベストシーズン:4月~9月
◉アクセス:パリからTGVで約3時間。