新旧・内外・ジャンルも問わず、ゲイにまつわるオススメの映画を取り上げてご紹介させていただく架空映画館「テアトル・オネェ」。 支配人を務めます、ヴァニラ・ノブでございます◎
今回は11月9日(金曜日)から公開されます、今年の大注目映画「ボヘミアン・ラプソディ」!
◎「ボヘミアン・ラプソディ」のおすすめポイント
■ 若い世代にも知ってほしい、フレディ・マーキュリーのレジェンドぶり
■ 名曲だらけのライブシーンの再現と迫力に高揚して!
■ HIVやエイズについても考えさせてくれるわよ!
◎”空耳”でもおなじみのクイーンよ!
1991年、HIV感染合併症によって45歳の若さで亡くなった、イギリスのロックバンド「クイーン(Queen)」のリードボーカリスト、フレディ・マーキュリーの人生を描いた作品。
クイーンといえば、映画のタイトルにもなっている「ボヘミアン・ラプソディ(Bohemian Rhapsody)」をはじめ、「伝説のチャンピオン(We Are the Champions)」、「ウイ・ウィル・ロック・ユー(We Will Rock You)」、レディ・ガガの名前の由来となった「レディオ・ガガ(Radio Ga Ga)」、“エビィバディ〜わしゃコケた〜”と空耳でお馴染みな「愛にすべてを(Somebody To Love)」や、同じく“ガンバ〜レ、タブチィ”の空耳「キラー・クイーン(Killer Queen)」などなど、若い世代にはなかなか馴染みはないかもしれないけれど、曲を聴けば「あぁ知ってる〜」と言っちゃうくらい、キャッチーでコール&レスポンスを必ずやりたくなるメロディでおなじみのバンド。
70年代にデビューした頃は、イギリスでの人気は当然のことながら、じつはアメリカよりも日本での人気がすごかったの!
グラム・ロックからの流れもあったし、UKシーンは今よりももっともっとアツかったし。
そしてフレディ・マーキュリーよりも、ドラムのロジャー・テイラーのほうが女子ウケがよかったのよね。だから初来日のときは、空港は金髪男前のロジャー目当ての女子でいっぱいだったそう。
あと、フレディは親日家でもあって、「来日した際は気軽に新宿2丁目の某ゲイバーにも顔出してはったのよ〜」って、先輩ゲイが言ってたわぁ……。
◎キャストがもうホンモノそっくりすぎてビックリ!

左から、リードギタリスト/ブライアン・メイ役のグウィリム・リー、ドラマー/ロジャー・テイラー役のベン・ハーディー、フレディ・マーキュリー役のラミ・マレック、ベーシスト/ジョン・ディーコン役のジョゼフ・マゼロ。(Featureflash Photo Agency / Shutterstock.com)
フレディ・マーキュリーを演じているのは、べン・スティラー主演の「ナイト ミュージアム」でエジプトの若き王クメンラーや、テレビドラマ「MR.ROBOT/ミスター・ロボット」で、主人公の天才ハッカーを演じたラミ・マレック。
付け歯や鼻など、特殊メイクでの顔の寄せ方はもちろんだけど、「ムーブメント・コーチ」と呼ばれる人(コレオグラファーじゃなく、こういう役割の人がいるっていうの、今回初めて知ったわ)が、付きっきりでフレディの動作や表情などをレクチャーした甲斐もあって、「本人?」と思うくらいそっくり!
さらに、ブライアン・メイ、ロジャー・テイラー、ジョン・ディーコンといったバンドのメンバーなんかもみんな本当によく似てて、ビックリしちゃった。
◎アタシの人生を決めたと言っても過言ではない、フレディ・マーキュリー
アタシのクイーン原体験は、1980年代初期に公開された「フラッシュ・ゴードン」というSF映画(しゃべるクマのぬいぐるみと独身男のコメディ映画「テッド」では、リスペクト・ムービーとしてオマージュされたの)。
家族で観に行ったんだけど、この映画の音楽を担当していたのが、クイーンだったのよね。
「♩フラッシュ! アァ〜セヴィァーオブザユニバースッ♫」ってフレーズが、キッチュでモンドな極彩色の映像と相まって、子ども心に強烈な印象を残してくれたの。
それきっかけでクイーンを聴き出し、フレディの唯一無二な声の洗礼を浴びて、さらにトリッキーだけどキャッチーなメロディーにシビれたのね。
そして「I Want To Break Free」という強烈すぎるMVが、少年だった私の琴線に触れまくったの!
フレディ扮するヒゲの女装子(じょそこ)が掃除しながら歌い、ギリシャ神話に出てくるパンみたいなフレディがブドウをかじり倒すとか、狂ったセンスが素晴らしいその映像は、結果としてアタシのその後の道を決めたものだと思うわ……。
◎気になるあらすじは……?
さて、話を映画に戻しましょう。
空港の荷物係として働きながら、夜はライブハウスに入り浸るフレディが、ブライアンやロジャーたちと出会い、やがてクイーンが誕生し、ミュージシャンとしてステージを昇っていくなかで、恋人から生涯の友人となるメアリーという女性との関係、やがて自分のセクシャリティーに悩みながらも欲望の赴くままにゲイ活動し、やがて仲間との決裂や裏切り、そしてHIVの感染と闘病を経て、クライマックスに1985年にアフリカ難民救済のために開催された20世紀最大のチャリティーコンサートと言われる「ライヴエイド(LIVE AID)」でのステージを描いているんだけど、コレがまた実際のライブを見事に再現していて、高揚感ハンパないっ!
それだけに、その後訪れるフレディの死は、やはり残念としか言いようがないの……。
ただ、その後のHIV/エイズへの予防や啓蒙にもつながったことや、残ったメンバーやマネージャーたちが、1992年に「マーキュリー・フェニックス・トラスト(The Mercury Phoenix Trust)」というエイズと戦うチャリティー財団を設立して、今も活動しているのを知ると、彼の死があったからこそだと思うわ。
◎いろいろと考えたい映画よ……
フレディが亡くなった90年代前後は、俳優のロック・ハドソンやストリートアートの先駆者だったキース・ヘリング、写真家のロバート・メープルソープ、ミュージシャンのクラウス・ノミ、映画監督のジャック・ドゥミ、パフォーマーで強烈なビジュアルのドラァグクイーンのリー・バウリー、作家のマヌエル・プイグや哲学者のミシェル・フーコー、以前紹介したピアニストのリベラーチェなど、才能ある人やまだまだこれからという著名人たちが次々とHIVという病に倒れたこともあり、”感染すると即、死が待っている”という通念があったし、”HIV/エイズは同性愛者だけの病気である”という誤解もあったし、今ほど同性愛者に対しての寛容さもない時代だっただけに、感染していることを知ったフレディの当時の心境を思うと、涙がこぼれてしまう……。
今となっては、”即、死”という病気ではなくなりつつあるHIV/エイズ。それでも日本では現在、同性愛者のみならず、男女の感染者も増加していたりするのよね。
11月24日は、フレディが亡くなって27年を迎える日だけれど、この映画を観て、彼の音楽界での偉業を改めて再評価すると同時に、HIV/エイズという病気について考えてみるのもいい機会かもね。
MOVIE DATA
「ボヘミアン・ラプソディ(Bohemian Rhapsody)」
■ 監督 …… ブライアン・シンガー
■ 出演 …… ラミ・マレック、ルーシー・ボイントン、グウィリム・リー ほか
■ 公開 …… 2018年11月9日(金)