新旧・内外・ジャンルも問わず、オススメの映画を取り上げてご紹介させていただく架空映画館「テアトル・オネェ」。 支配人を務めます、ヴァニラ・ノブでございます◎
今回はファッション映画の金字塔、「プラダを着た悪魔」!
◎「プラダを着た悪魔」のおすすめポイント
■ ファッション雑誌の世界での女同士のバトルは見モノ!
■ ゲイも身もだえするパトリシア・フィールドのスタイリングは、今も参考になるわよ◎
■ パワハラをもう一度考えるうえで、いい参考になるかもね
◎気になるあらすじは……?
ジャーナリストになることを夢見て、アメリカ・オハイオ州からニューヨークへやってきた主人公アンディ(アン・ハサウェイ)は、あちこちの出版社に履歴書を送り、連絡が来たのはファッション雑誌『RUNWAY(ランウェイ)』の人事部から。
仕事は、編集長ミランダ(メリル・ストリープ)のアシスタント。
ファッションには特段興味もなかったアンディは、面接でいきなり洗礼を浴びるものの(このときのミランダの出の場面は、もはや”歌舞伎”!)、意外や採用されることに。
はい、そこからアンディのファッション雑誌冥府魔道の道行がスタート!
とりあえずは、24時間体制でミランダにお仕え。早朝から深夜まで、ことあるごとに携帯で用事を言いつけられ、それに対応しないとさらに追い詰める。
言い訳はもちろん許されないし、質問に対して聞き返すなんてもってのほか。とにかくミランダから発せられた任務を遂行するのみ。
まさに「ミランダ=絶対君主」の世界なの!
「自分のキャリアのため」と言い聞かせながら、ひたすらミランダの横暴に応えるアンディ。でもそんなある日、あまりにムチャすぎる任務を遂行できなかったことで、さんざんなじられて落ち込んだアンディは、ミランダの右腕的存在のナイジェル(スタンリー・トゥッチ)に相談することに……。
◎アメリカ映画の重要な役どころって、マイノリティー多くない?
↑ ナイジェルがアンディのために服を選んであげる、身もだえシーン。
このナイジェルがゲイなんだけど、アメリカ映画ではよくある役回りなのよねぇ。主人公を助ける存在が、マイノリティーや有色人種、身分違いっていうのが……。
大昔で言えば、「風と共に去りぬ」のスカーレット・オハラと乳母、「ジッパー・ディー・ドゥー・ダー」の曲で有名な、ディズニー映画の「南部の唄」の主人公の少年と黒人のおじいさん、ちょっと前だと「キューティ・ブロンド」の主人公エルとネイルサロンの店主たち、最近だと「スパイダーマン・ホームカミング」の主人公ピーター・パーカーとクラスメイトのネッドなんかは、わかりやすい例かもね。
とはいえ、ナイジェルのスタイリングやコーディネートのおかげでアヒルが白鳥になるというか、アンディは先輩であるエミリー(エミリー・ブラント)のみならず、ミランダでさえも「あら」とビックリするくらい、洗練されていくのね。
◎とにかく身もだえするようなファッションの洪水よ!

主人公アンディを演じたアン・ハサウェイ。この映画を機に、本人自身のファッションもブラッシュアップされていくことに。(Featureflash Photo Agency / Shutterstock.com)
この豪華なファッション取っ替え引っ替えのシーンは、ゲイ同士で観に行ったときも思わず「ギャ〜ッ」って身もだえしてしまったくらい! さらにDVDが出たときは、みんなで一時停止しながら「このブランドどこのかしらん?」なんてキャッキャ言いながら観てたわ〜。
まさに、「SEX AND THE CITY」でのスタイリングで女子もゲイも魅了してくれたパトリシア・フィールドが、本作でも衣装を担当しているんだけど、アン・ハサウェイという素材を得て、スタイリングの真骨頂を見せてくれたわね!
そして、この映画を観た日本の女子たちも大いにそのスタイリングを参考にしたそうなんだけど、友達のスタイリストに聞いたところによると、それは主人公のアンディがブロンドではなく黒髪だったことが大きかったからだそう。
そういえば「SEX AND THE CITY」でも、日本ではキャリーやサマンサ、ミランダより、シャーロットを参考にしてた女子も多かったし(そもそもキャリーのスタイリングは個性的すぎてハードル高かったからねぇ)。
で、アンディなんだけど、見た目が変わって自分に自信が持てるようになると、実力も伴ってガンガン仕事できるようになり、ミランダからも徐々に信頼を得るようになってくるなかで、アンディも「あぁ、私キャリアに生きてるわぁ……」なんて、ハードではあるけれど仕事では充実。
が、人間イイこともあれば、悪いことも起こる。これ、運命の采配とばかり、プライベートが犠牲になってくの。
仕事を理由に、彼氏や友達との約束を反故にしていくアンディは、そんな自分にイラ立つ反面、「今頑張らないと」って気持ちも捨てられなくて……。
◎みんな若い頃の思い出に共感するんじゃないかしら?

アンディの先輩エミリーを演じるエミリー・ブラント。今作でゴールデングローブ賞 助演女優賞や英国アカデミー賞 助演女優賞にノミネートされ、注目を集めるきっかけに。(Everett Collection / Shutterstock.com)
ここら辺のシーンは、正直言って共感したわぁ。……と同時に、過去を思い出してちょっと後悔もした。
アタシも若かりし頃、仕事が波に乗ってブイブイ言わしてたときは、”仕事が1番、2番も仕事”って感じで、「とにかく仕事に時間をささげなきゃ」って、妙な義務感に駆られていろいろと犠牲にしたことあるもの(私生活はもちろん、体も壊したし……)。
でもね、そんなときに限って、大きな試練や失敗を引き寄せちゃうのよね。
主人公のアンディも、やらかしちゃいけないことをやっちゃってミランダ様の逆鱗に触れ、スーパー・ミッション・インポッシブルな任務をおおせつかることに……。
果たして彼女は無事に任務遂行できるのか? そしてさらにその後もいろんな波風が起こるんだけど、最終的にアンディはどんな道を選ぶのか?
◎パワハラの仕返しにはご注意を
↑ ミランダ役を演じ、14回目のアカデミー賞候補となったメリル・ストリープ。この役、ホントに怖かった……。
そんな「プラダを着た悪魔」。つい最近だと思ってたら、なんと12年も前の映画だってことにビックリしちゃった。
でも、今観るとパワハラの度が過ぎてるわよね、ホント。もしミランダの言動が録音や録画されたりして証拠残されたら、訴えられて敗訴するランク(でもミランダならなんとかしそうだけど)。
それでも、時代を作り、流行を発信し、世界を動かすほどの影響力がある雑誌に関われるなら、どんな仕打ちにあったとしてもしがみついておきたいって思いでガマンできるのかしら……。
ちなみにゲイのナイジェルは、ミランダに手ひどい仕打ちをされるんだけど、個人的にはその復讐譚を続編として観たいわ〜。「ゲイを怒らせ、敵に回したら怖いわよ」ってこと、知らしめてほしいし。
”That’s All 〜”(ミランダの決めゼリフ)

ミランダのモデルとウワサされる、アメリカ版『VOGUE(ヴォーグ)』詩のカリスマ編集長アナ・ウィンター。映画の原作である小説の著者ローレン・ワイズバーガーは、アナ・ウィンターのアシスタントをしていた経歴を持ち、本人は否定しているものの、作品は彼女の実体験が基になっているとされている。(DKSStyle / Shutterstock.com)
MOVIE DATA
「プラダを着た悪魔(The Devil Wears Prada)」
■ 監督 …… デヴィッド・フランケル
■ 出演 …… メリル・ストリープ、アン・ハサウェイ、エミリー・ブラント、スタンリー・トゥッチ ほか

プラダを着た悪魔 (字幕版)
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