世界中にたくさん存在する、幸運のしるし『ラッキーチャーム』。特に、生活に密着している野菜や果物、お花などの植物には、幸運を意味する伝説や歴史・風習を持つラッキーチャームが多く見られます。
そんなラッキープラントのなかから、今回は“モモ(桃)”をご紹介します。
「モモ(桃)」の縁起

見た目も味も香りもいい、モモ。
日本人にはなじみ深い果物のひとつである、「モモ(桃)」。魔除けや長寿、女性の魅力の象徴であり、英語でも「ピーチ(Peach)」は「魅力的な女性」を意味することも。
たくさんの実をつけるため、子孫繁栄の象徴でもあります。「桃太郎」も、モモから生まれて元気に育ってますね!
また、モモの花も、果実と同じく魔除けの花であり、3月3日の「桃の節句」では、女の子を守るために活躍してくれます◎

モモの花。サクラやウメに似ているが、花びらの先端の形がそれぞれ違い、サクラは先割れ、ウメは丸、モモは尖っているという特徴がある。
モモのラッキー その1「古事記」

イザナミ(左)とイザナギ(右)。(作・小林永濯、パブリック・ドメイン)
日本とモモの関わりは古く、日本最古の歴史書である『古事記』にも登場しています。
死者の世界である「黄泉(よみ)の国」から妻のイザナミを連れ帰る途中、イザナギは彼女との約束を破り、つい彼女の方を振り返ってしまいます。
腐敗した醜い姿を見られ、怒ったイザナミは、黄泉の国の生き物を連れてイザナギを追いかけますが、イザナギは地上近くに実っていたモモを投げて逃げ切ったとか。
この『古事記』の記述から、モモには魔除けの力があるといわれているのです。
モモのラッキー その2「不老長寿のモモ”蟠桃(バントウ)”」

白い果肉と丸く平らな形が特徴的な「蟠桃(バントウ)」。1800年代に中国からアメリカへ渡り、英語ではその形状から「サターン・ピーチ(Saturn peach)」や「ドーナッツ・ピーチ(Donut peach)」と呼ばれている。
中国においても、モモは縁起が良く、魔除けの効果もある果物とされています。
中国で古くから信仰されている、人間の寿命をつかさどる女仙・西王母(せいおうぼ)。彼女が住む「崑崙(こんろん、クンルン)山」には、3000年に一度だけ実を付けるという不老長寿のモモ「蟠桃(バントウ)」があるそうです。
蟠桃(バントウ)が実ると、それを祝って「蟠桃会」という宴を開いたというほど、縁起のいいモモでした。
ちなみにこの蟠桃(バントウ)は実在していて、平べったい形が特徴です。”3000年に一度”とはいいませんが、生産量は少なく、まさに幻……。
そしてなんと、日本には「西王母(せいおうぼ)」という品種のモモもあります。とても大玉で甘く、旬は9月下旬~と遅めです。
また、中国風水では、恋愛運のことを「桃花運」とも呼びます。モモの花の美しさや果実の美味しさが、恋愛のように人の心を誘うところから来ているのでしょう◎
モモのラッキー その3「ギリシャ神話の”ネクタル”」

濃厚で甘い、モモのネクタージュース。
ギリシャ神話において、天上世界で神々が飲む飲み物・神酒のことを「ネクタル(ネクタール、Nektar)」といいます。みずみずしくて甘く、不死を与えてくれる飲み物だそう。
そして、”この「ネクタル」ほどに美味!”ということで名付けられたのが、モモの一種である「ネクタリン(Nectarine)」です。味も最高ですが、縁起も最高ですね!

強い甘みと適度な酸味をもつ「ネクタリン」。表面にモモのような毛がないのが特徴。
さらに、ネクタル由来の飲み物といえば、「ネクター(Nectar)」。ピューレ状にすりつぶした果肉を使ったドリンクで、世界中にいろんな種類があるのですが、日本では濃厚モモジュースとして有名です。
ちなみに神様の飲み物は「ネクタル」ですが、食べ物の方は「アンブロシア(アムブロシアー)」といいます。こちらも、口にすると不死になるんだそう。
モモのパワーをもらいに行こう!~「中国・桃花島」~

風光明媚な景観で知られる「桃花島」。

モモの木も植えられている。
中国・上海(シャンハイ)のちょっと南に位置する舟山(しゅうざん)群島に、「桃花島(とうかとう)」という島があります。
「桃花岩」という、モモの花に似た模様のある石が採れるため、その名が付けられたのですが、恋愛運が上がるパワースポットとも言われています。
また、ドラマにもなった中国の有名な武侠小説『射雕英雄伝(しゃちょうえいゆうでん)』の舞台でもあり、ドラマのロケ地や小説ゆかりの場所が観光名所になっています◎