イギリス・スコットランド北部の都市アバディーンの郊外に位置する港町、ストーンヘブン。ダノター城は、このスコットランドの南北を結ぶ要衝の地に廃墟となって残る、スコットランドの歴史を見つめ続けてきた中世の古城です。
ダノター城の歴史

地上からは1本の道でつながっているダノター城。廃城となっているが、観光客が立ち入ることはできる。
周囲を断崖絶壁に囲まれた、岩山の上に築かれているダノター城。現在お城が建つ場所には、かつてローマ帝国に支配されていた時代から、ピクト人と呼ばれる人々が居住していました。
そして5世紀頃、キリスト教を伝えるためにこの地を訪れた宣教師、聖ニニアンにより教会が建てられます。
その後7世紀になると、ヴァイキングの侵略に備えて石造りの砦に改築され、14世紀に入るとマリシャル伯爵家の居城として、現在の城が築かれました。
しかし17世紀、イングランド軍の総司令官兼総督だったオリバー・クロムウェルによるスコットランド侵攻の際には、スコットランド王党派の最後の拠点としてスコットランド王家の宝物を守り、激しい戦闘が行われました。

周囲には、スコットランドらしい景観が広がっている。

ダノター城へと続く小路。トンネルをくぐって入っていくという、冒険心をくすぐられる入り口となっている。

教会や貯蔵庫などが点在する城内。荒廃が進んで、ほとんどの建物の天井が抜け落ちている。(Jeff Whyte / Shutterstock.com)

かつて鍛冶場として使用されていた建物。城内で使用される鉄製品をここで作っていた。

建物の中に入り、上を見上げるとこのとおり。カモメなどの海鳥のかっこうの住処となっている。

天井がないため、建物の内部は雨にぬれ、コケに覆われている場所も。(Stefano_Valeri / Shutterstock.com)

石造りの重厚感と廃墟感が相まって、ファンタジー好きにはたまらない光景を織り成している。(Stefano_Valeri / Shutterstock.com)

壁の石に刻まれた紋章も見ることができる。(Stefano_Valeri / Shutterstock.com)
122人が獄死した「ホイッグス・ヴォールト」

「ホイッグス・ヴォールト(Whig’s Vault)」。122人が詰め込まれるには、狭すぎる空間だ。(Stefano_Valeri / Shutterstock.com)
なかでもダノター城を有名にしているのが、「ホイッグス・ヴォールト(Whig’s Vault)」という部屋。
1685年、新しくイングランド王に即位したジェームズ2世への忠誠を拒否したホイッグ党派の122人の男性と45人の女性が、ダノター城の「王の寝室(King’s Bedroom)」と呼ばれる部屋の丸天井の地下室に収監されました。
9週間におよんだ収監期間のあいだ、わずかな食料だけが与えられ、結果全員がこの部屋で獄死してしまったのです。
以来、この部屋は「ホイッグス・ヴォールト(The Whig’s Vault、ホイッグ党の丸天井)」と呼ばれるようになりました。
そして1715年、ダノター城を保有していた最後の伯爵が、王に対する反逆の罪によって有罪判決を受けると、城は政府に没収され、そのまま廃墟となったのです。
しかし、その美しいたたずまいは今なお人気があり、1990年にはメル・ギブソン主演の映画「ハムレット」がここで撮影されるなど、多くの人々を魅了し続けています。

とてもファンタジックな、ダノター城の夜明け。
DATA
◎アクセス:ストーンヘブンから車またはバスで約10分。