ヴァニラ・ノブが支配人を務める架空映画館「テアトル・オネェ」。新旧・内外・ジャンルも問わず、オススメの映画を取り上げさせていただいております◎
今回は、タイのオネエ・バレーボールチームの奮闘を描いた伝説の映画、「アタック・ナンバーハーフ」シリーズの第3弾、「アタック・ナンバーハーフ・デラックス」をどうぞ!
◎「アタック・ナンバーハーフ・デラックス」のおすすめポイント
■ タイのオネエさんたちのバレーチームを描いた実話!
■ タイのLGBTドタバタコメディだけど、現実も知ることができるわよ!
■ 年末年始のパーティームービーとしてもオススメ◎
◎「アタック・ナンバーハーフ」って映画はご存知よね?
みなさん、タイのLGBTのバレーボールチーム「サトリー・レック」をご存知かしらん?
訳すと「鋼鉄の淑女」という意味なんだけど、実在したチームなのね。そして、彼らのことを映画化したのが、今から17年前に公開されたタイ映画、「アタック・ナンバーハーフ」。
日本でもちょこちょこ話題になったから覚えてらっしゃる方もいるかもしれないけれど、じつはこの作品、個人的に思い出があって、某お笑い会社が映画を買い付けた縁で、なぜかアタシが字幕監修をさせていただくことになり、さらに出演していたトランスジェンダーのピア役のゴッゴーン・ベンジャーティグーンさんと、コメディリリーフを務めた三つ子のオネエさま方が宣伝キャンペーンのために来日した際、関西でアテンドをさせていただいたの。
その時に、三つ子のオネエさまたちがゴリゴリのゲイで、忙しい取材などが終わって「何をしたいですか?」って聞いたら、一様に「日本のゲイディスコかクラブに行きたい」なんて言い出したもんだから、急いで友人に連絡を取ると、ちょうど大阪は堂山にある「エクスプロージョン」というゲイクラブで、「イベントのオーガナイズをやってるからキャンペーンに来たらどう?」と言ってくれ、サプライズでキャンペーンをすることに。
ゲイのなかでは「アタック・ナンバーハーフ」を知っている人も多かったようで、出演者たちの突然の乱入でイベントは大盛り上がり!
しかも三つ子のオネエさま自体もテンション上がりまくりで、「もうホテルに帰らなきゃいけない」と言っても、「まだ遊んで帰る〜!」と拒み続け、結局ピアさんとほかのスタッフは先に帰り、アタシがお目付役としてクラブに残ってホテルまで送り届けたのよねぇ……。
そんなことがあったから、個人的にも1作目には思い入れたっぷりだったし、作品自体もキワモノ的な視点はあるにはあったけれど、ちゃんとLGBTの苦悩というのも描かれていて、繰り返し見ても胸にジーンとくる内容だったわ。
この作品がタイでもヒットして、続編の「アタック・ナンバーハーフ2 全員集合!」が作られたんだけれど、内容は残念ながら前作のクオリティーを超せず、パワーダウンしてたのは残念。
◎1作目とは違った楽しみ
でもって、”鋼鉄の淑女”たちのことも徐々に忘れ去られていた2014年(日本での公開は2016年)に突然、「アタック・ナンバーハーフ・デラックス」として復活したの!
リブートとしてLGBTなキャラクターは踏襲されているものの、1作目よりも大幅に脚色されて、基本ドタバタコメディとして描かれてるの。
だから、1作目を観た後ではその差にビックリするかも知れないけれど、今作は女性同士やゲイ友同士でワイワイ大笑いしながら観る、パーティームービーとして捉える方がイイわね!
◎気になるあらすじは…….?
「アタック・ナンバーハーフ・デラックス」では、中年のゲイの観客がタイと日本のバレーボール国際親善試合を観戦中に、かつて自分たちが活躍した国内大会でのことが思い出されるの。
それはさかのぼること約20年前。レズビアンの監督から声をかけられ、県代表として召集されたLGBTの面々たちが困難を乗り越えて活躍する、といったもの。
とにかく、この10人の選手たちが個性豊か! チームのキャプテンのムイ、監督の教え子でチームを集めることとなるジュン、マッチョオネエのヌイ、毒舌問題児のカントーク、キショガリメガネのノイナー、家庭に問題のあるトムなどなど……。
そんな彼らが体を張ったギャグを繰り広げてくれるんだけど、正直ゲイからすれば、“ちょっとヤリすぎなんじゃないの!?”という部分と、”ゲイあるあるだわ〜”という部分があって、マジメに観るよりも、あらかじめ”清濁併せ呑んで笑い飛ばしましょう!”っていう寛容な気持ちで臨むことが必要かもね。
そんな下ネタ満載でドタバタな展開が繰り広げられる「アタック・ナンバーハーフ・デラックス」だけれど、LGBTに対して比較的優しいとされる、タイの実情は……という現実的な部分もちゃんと描かれてるの。

2018年バンコクで行われた、LGBTによるファッションショー「Thailand LGBT Fashion Showcase 2018」。(Jade ThaiCatwalk / Shutterstock.com)
そりゃそうよね。全員が全員LGBTを認めるはずがないし、存在としているのはかまわないけれど、関わってほしくないという人もいるわよね。
そこんところもしっかり描いているという点で、今作ではタイのリアルも感じられて好感が持てたわ◎
それと、今作のもうひとつの醍醐味として、タイのイケメン俳優たちがたくさん見られるのがイイのよ〜! 濃い目の顔だけど可愛いし、おとなしそうな顔してがっつりタトゥーが入ってたりするギャップにもアガりますっ!!
↑ キャプテンのムイを演じる、ラッタプーン・トーコンサップ。イケメン!!
◎とにかく楽しく観てちょうだい!
テアトル・オネエの第1作目に取り上げた「プリシラ」をオマージュした部分や、「少林サッカー」や「カンフーハッスル」などのチャウ・シンチー監督作品をリスペクトしたシーンに、タイ音楽のペンペラペンなメロディーも相まって、年末年始に友人たちが集まって、”なんか映画観る?”ってときにオススメ!
もちろん、「タイスキ」をメインにタイ料理を囲んで観るのが最高よ◎
MOVIE DATA
「アタック・ナンバーハーフ・デラックス(Satri lek tob lok taek)」
■ 監督 …… ポット・パセート
■ 出演 …… ラッタプーン・トーコンサップ、ウォラチャイ・シリコンスワン、スダーラット・ブットプロム、パランユー・ロジャナワティタム、パドゥン・ソンセーン ほか

アタック・ナンバーハーフ・デラックス(字幕版)
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