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【世界の官能名画美術館 #16】ブロンズィーノの「寓意のヴィーナス(愛の勝利の寓意)」(前編)

西洋の美の歴史は、つねに性愛とかかわるものでした。あまたの巨匠たちが性を想起させ、異性を誘惑する魅惑の肉体を備えたヌード画を描き、究極の美を追求してきたのです。

このシリーズでは、世界に名だたる西洋絵画の巨匠たちと、彼らが究極の美を追い求めて描いた名画をご紹介していきます◎

誰もが知る名画には、いったいどんなエロティシズムが隠されているのでしょうか?

第16回目は、”マニエリスム随一の寓意画家”と呼ばれるイタリアの画家、アーニョロ・ブロンズィーノが描いた「寓意のヴィーナス(愛の勝利の寓意)」を、前後編にわたってひも解いてみましょう。

【後編はコチラ】

複雑な象徴が絡み合う、寓意画の名作

【世界の官能名画美術館 #16】ブロンズィーノの「寓意のヴィーナス(愛の勝利の寓意)」(前編)01

「寓意のヴィーナス(愛の勝利の寓意、愛のアレゴリー)」1540〜1545年頃、板・油彩、146×116㎝、ロンドン、ナショナル・ギャラリー蔵。

西洋美術に大きな革新をもたらしたルネサンスも、宗教改革や神聖ローマ皇帝カール5世の軍隊によっ
て引き起こされたローマ市民への殺りくや略奪である「ローマ劫掠(ごうりゃく)」などが引き金となって終わりを告げ、以後、「マニエリスム」という美術様式が興隆するようになります。

古代ギリシャ・ローマの美を再興させることを主眼においたルネサンスと異なり、時代の不穏な空気を受けながら画家たちがそれぞれの個性を発揮し、作品を制作したマニエリスムにおいては、しばしば複雑な意味を持つ絵画が生まれました。

今回ご紹介するアーニョロ・ブロンズィーノの「寓意のヴィーナス」(別名「愛の勝利の寓意」「愛のアレゴリー」)は、こうしたマニエリスムの代表的作品のひとつです。

鮮やかな色彩で描かれた登場人物たちの人体は、いずれも不自然に引き延ばされています。そしてどこか、仮面のように冷たい表情をしています。

前景と後景と、複雑にモチーフが配置され、不気味さと美しさが同居しつつも、それぞれの図像にいったいどんな意味が込められているのかは、一見しただけでは判別しにくいのが特徴です。

こうしたさまざまな象徴が複数描き込まれ、複雑な意味を形づくっている絵画のことを、「寓意画」と呼びます。

この寓意を読み解くためには、古今東西のさまざまな教養を要したことから、描く側も鑑賞する側も、一定の教養人でなくてはならなかったのです。

本作の中央に描かれているのは、ギリシャ神話に登場する愛と美の女神「ヴィーナス」と、その息子「クピド(キューピッド)」。

2人はあたかも恋人同士のような熱い口づけを交わしていますが、彼らは親子。

つまりこの作品は、近親相姦的な「禁断の愛」を連想させる、危ないヌード寓意画でもあるのです。

【世界の官能名画美術館 #16】ブロンズィーノの「寓意のヴィーナス(愛の勝利の寓意)」(前編)02

頭部が欠けている女性。後頭部が無いように見える女性は、一説では「忘却」を意味するとされる。しかし、別の説ではこれは仮面をつけているだけであって、「欺瞞(ぎまん)」あるいは「隠された真理」などを暗示するとも解釈されている。

【世界の官能名画美術館 #16】ブロンズィーノの「寓意のヴィーナス(愛の勝利の寓意)」(前編)03

ヴィーナスの横に立つ少年が手にしているのは、バラ。バラはヴィーナスの聖花でありシンボルだが、ここでは「愛欲によるはかない快楽」を意味していると、しばしば解釈されている。

【後編はコチラ】

出典:『愛と美の官能名画』(メディアソフト)

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