映画「ヘアスプレー」【テアトル・オネェ 第16回】

新旧・内外・ジャンルも問わず、レインボーな視点でオススメの映画を取り上げる架空映画館「テアトル・オネェ」。支配人のヴァニラ・ノブです!

今回は、2007年に公開された大ヒットミュージカル映画「ヘアスプレー」をプログラム◎

映画「ヘアスプレー」【テアトル・オネェ 第16回】01

◎「ヘアスプレー」のおすすめポイント

■ クセの強すぎるオリジナルを、ミュージカル化するという奇跡

■ マイノリティへの愛があふれているの!

■ ジョン・トラボルタをはじめとした、豪華キャストの”怪演”も必見よ!

◎気になるあらすじは……?

1962年、アメリカはメリーランド州最大の都市、ボルチモア。

まだまだ黒人差別がしぶとく残るこの街に暮らす女子高校生トレイシー(ニッキー・ブロンスキー)。彼女の好きなものは、地元の若者の間で大人気のテレビ番組「コーニー・コリンズショー」。

夢は、同じ高校に通うルックスが良くて歌やダンスの上手い同級生たちが出ているその番組に出演し、憧れの男子、リンク(ザック・エフロン)と一緒に踊ること。

だけど彼女は超おデブちゃん…..。でも、ポジティブ・シンキング全力で、夢は叶うと信じてるの。

そんなある日、番組のメンバーに欠員が出ることとなり、一生に一度のチャンスと、トレイシーはオーディションに挑戦するんだけど、番組のプロデューサーであるベルマ(ミシェル・ファイファー)から、容姿を理由に不合格不合格にされてしまう……。

しかも、オーディションを受けたばっかりに学校に遅刻した彼女は、先生から居残りを命じられ、落ちこぼれたちが集められたクラスへ行かされることに……。

ところがそこで、彼女は素晴らしいダンスを披露するシーウィード(イライジャ・ケリー)をはじめとする黒人生徒たちと仲良くなり、彼らにダンスを教えてもらうことに。しかもその場面を憧れのリンクに偶然目撃され、番組が主催するパーティーに誘われるの。

黒人仕込みのヒップなダンスを披露する彼女に番組のホスト、コーニー・コリンズ(ジェームズ・マースデン)からスカウトされて出演が決定〜〜〜!

そこからトレイシーの躍進がスタート!

トレイシーが使ってるヘアスプレーは売れまくるし、彼女には大きなサイズの洋服店のスポンサーが付いてイメージキャラクターにも選ばれ、ますます注目されることになるんだけど、それをヨシと思わないのが、それまで番組でセンターを張ってたアンバー(ブリタニー・スノウ)と、彼女の母親で、トレイシーをオーディションで落としたプロデューサーのベルマ。

何としてもトレイシーを“自分たちの”番組から消し去りたい2人は、あらゆる手を尽くして彼女を追い出そうと躍起になるの。

そんな頃、トレイシーは番組内でも行われていた人種差別の撤廃を訴えてデモを行うんだけど、今度はその首謀者として追われることに!

さて、彼女の運命はいかに……!?︎ ってストーリーよ◎

◎元ネタは、じつはカルトなのよ!

この作品、もともとは「ピンク・フラミンゴ」という、今も伝説のカルトムービーとして君臨する映画を監督した、ジョン・ウォーターズの初のメジャー系作品がベースになってるの(上の動画がオリジナル版トレーラー)!

このオリジナル作品はアタシも大好きなんだけど、それが2002年、ブロードウェイでミュージカルとして上演されて、その舞台を映画化したのが今作なの。

それにしても、最初にあの作品がミュージカル化されるというニュースを聞いたときは、本当にビックリしたわぁ……。

ジョン・ウォーターズといえば、前述した「ピンク・フラミンゴ」をはじめ、見世物小屋の経営者が繰り広げるビザールな物話「マルチプル・マニアックス」や、ひたすら堕ちていく女を描いた元祖「嫌われ松子の一生」みたいな「フィメール・トラブル」、狂ったラブストーリーを「オドラマ・システム」という史上初の匂いのついたカードをこすりながら観るという斬新すぎる映画「ポリエステル(Polyester)」、ジョニー・デップの出世作(!?)もしくは黒歴史の「クライ・ベイビー」、それまで「白いドレスの女」や「ロマンシング・ストーン」、「ペギー・スーの結婚」などで、妖艶かつアクションもできる美人女優として活躍していたキャスリン・ターナーが、殺人鬼のお母さんを怪演したことで、それまでのキャリアを悪い意味で一変させたと言われる「シリアル・ママ」といった、どちらかというと万人向けではないクセの強すぎる作品を発表してきた人だから、”まさかミュージカルに、しかもブロードウェイで上演されるとは、アメリカのショウビズ界はどうなってしまったのよ?”って思ったわ。

映画「ヘアスプレー」【テアトル・オネェ 第16回】02

ジョン・ウォーターズ監督。トレードマークのヒゲは、付け髭。(Everett Collection / Shutterstock.com)

◎ゲイカルチャーでは重要な作品よ

映画「ヘアスプレー」【テアトル・オネェ 第16回】03

ミュージカル版を元に生放送で放送された特別番組「ヘアスプレー ライブ!」のプレミアに登場した、ハーヴェイ・ファイアスタイン。左は共演者のダヴ・キャメロン、右はギャレット・クレイトン。(Kathy Hutchins / Shutterstock.com)

それでも、母親のエドナ役の俳優を見て、ちょっと安心したの。その名前は、ハーヴェイ・ファイアスタイン。

トーチソング・トリロジー」という、ゲイにとっては重要な舞台とその映画版で脚本と主演を担当し、さらに「ラ・カージュ・オ・フォール」や「キンキー・ブーツ」という、これまたゲイにとっては重要なミュージカルでも脚本を執筆している、ゲイにとったら信頼できるお方(ちなみに前者は、日本版では市村正親と鹿賀丈史がW主演していて好評を博しているし、後者は三浦春馬と小池徹平が出演していて来年再演するわよ!)。

そうなるといてもたってもいられなくなって、”なんとか彼が出演しているうちに!!”、ということで、初演を観たくてニューヨークへ飛んだわ。

アタシにとって、ハーヴェイ・ファイアスタインは神! 彼が登場するだけで興奮しまくり。

大きな巨体を揺らしながら、決して美声ではなく、むしろダミ声なのに、劇場をしっかり包み込む歌声。娘に対する慈愛が地響きのように身体に伝わる感じに、思わず涙しちゃった……。

もちろん、トレイシー役のマリッサ・ジャレット・ウィノカーの、ぽっちゃりなのにしっかり歌えて踊れて、キュートさを損なわない演技にシビレたし、リンク役ははまだ「glee/グリー」のウィル先生でブレイクする前のマシュー・モリソンが演じていて、今思うとやはり華があったわぁ……。

◎マイノリティへの応援歌でもあるの◎

↑ ジョン・ウォーターズ作品になくてはならない存在だったディヴァイン。1988年に43歳の若さで亡くなった。

オリジナルのジョン・ウォーターズ版で表現されていた“毒”は、舞台版ではもちろん薄められているけれど、ところどころにオリジナルに敬意を払った下品さはちゃんと残してるし、何よりも「人と違っていることはいいことなの」というテーマが、しっかりというか舞台版の方がもっと前面に出されていたわね!

おデブやガリなどの容姿、黒人などの肌の違い、同性愛といったマイノリティに対して、設定である1960年代初期はもっともっと偏見があった時代だけど、その偏見はまだまだ今も残っている。

それに対して、「”黙る””逃げる”のではなく、声を上げていかなければいけない」というメッセージが伝わって、ラストの大団円では号泣どころの騒ぎではなかったなぁ……。

◎映画版は、やっぱり華が大事なのね……

映画「ヘアスプレー」【テアトル・オネェ 第16回】04

左から、ジョン・トラボルタの妻である女優のケリー・プレストン、エドナ役のジョン・トラボルタ、ベルマ役のミシェル・ファイファー。(Jose Gil / Shutterstock.com)

そんな舞台版を映画化した今作。エドナ役は、なんとジョン・トラボルタ! 「サタデー・ナイト・フィーバー」や、「パルプ・フィクション」などで知られるゴリゴリの彼が、お母さん役!!

ミュージカル映画「シカゴ」のビリー役を断って後悔したからか、特殊メイクを施してノリノリで歌い踊ってる。

アタシとしては、オリジナル版のディバイン(伝説のドラァグクイーン)、そしてブロードウェイ版のハーヴェイ・ファイアスタインと、”母親役をリアルゲイが演じていることに意味がある”と思っていたから、正直残念な気持ちもあったんだけど、映画版ならではの“華”を考えると、それも致し方ないかなと。

映画「ヘアスプレー」【テアトル・オネェ 第16回】05

左から、ベルマ役のミシェル・ファイファー、監督のアダム・シャンクマン、“モーターマウス”役のクィーン・ラティファ、トレイシー役のニッキー・ブロンスキー、ペニー役のアマンダ・バインズ。(Jose Gil / Shutterstock.com)

それに、ほかの役者たちもクリストファー・ウォーケン、ミシェル・ファイファー、ザック・エフロン、クイーン・ラティファ、ジェームズ・マースデン、アリソン・ジャネイといった映画ならではのキャストで(しかも全員歌がうまい実力派!)。

加えて、オリジナル版でトレイシー役を演じたリッキー・レイクや、お父さん役を演じたジェリー・スティラー(ベン・スティラーのお父さん!)や、ジョン・ウォーターズ監督本人も出演しているっていうのも見どころね◎

さらに、「Good Morning Baltimore」「Welcome to the 60’s」「You Can’t Stop the Beat」などなど、キッチュでポップでインパクトのある曲たちは、マーク・シャイアンとスコット・ウィットマンのゲイカップルが作詞・作曲!

コチラもわかってらっしゃるので、琴線触れまくり!! 今からサントラ購入しても遅くないわよ◎

“人と違っていることはいいことなの”が全編にあふれた今作、観た人も観ていない人も、ぜひとも鑑賞してほしいわ!

MOVIE DATA

「ヘアスプレー(Hairspray)」

■ 監督 …… アダム・シャンクマン

■ 出演 …… ジョン・トラヴォルタ、ミシェル・ファイファー、クリストファー・ウォーケン、ニッキー・ブロンスキー、クイーン・ラティファ、ザック・エフロン、ジェームズ・マースデン、アリソン・ジャネイ ほか

映画「ヘアスプレー」【テアトル・オネェ 第16回】

ヘアスプレー (字幕版)

Buy for Amazon

キーワード