「麻の葉」、「七宝(しっぽう)」、「籠目(かごめ)」、「千鳥」……。
いつだったか、どこかで聞いたことのあるこれらの名前は、私たち日本人になじみの深いもの。日本に古くからある伝統模様の名前です。ひとことで「模様」といっても、その背景にある歴史や意味は奥深く、縁起もさまざま。
そんな日本の伝統模様のなかから、今回は日本のお正月に欠かせない「松模様」をご紹介します。
「松模様」の由来と縁起

松模様。
春夏秋冬、1年を通して緑の葉をつけ続け、ほかの植物が生きていけないような厳しい環境でも育つ松は、「不老不死」の象徴とされています。
日本ではおなじみの縁起のよいモチーフで、お正月には「門松」や「松飾り」として、”歳神(としがみ)様が家を訪ねてくれるように”と、目印として玄関に飾られました。
松の木が常盤に緑なことから、この松模様も時期を選ばず使える文様です。縁起ものとして、また日本の風情を色濃く表す植物として、さまざまな道具に使われています◎
「松模様」のバリエーション

「笠松模様」。
松の葉……「松葉」は、1本1本は細い針葉です。しかし、その密度は濃く、遠くから松の木を見ると、葉の部分はこんもりと固まって見えます。
その様子がディフォルメされ、「松模様」といえば思い描くのが、「笠松模様」。松の葉の部分がモコモコとした笠に、枝の部分は紐のように線で描かれます。
「若松模様」は、名前の通り若い松が模様になったもの。もっともっと伸びてゆく命の勢いが感じられます。別名「小松模様」とも呼ばれます。
反対に「老松(おいまつ)模様」は、樹齢を重ねて枝葉が見事となった松が模様となったものです。
そして「三階松」は、松が3つ重なった模様。右寄りに重なっていると「右に三階松」、左だと「左に三階松」とユーモラスな名前に◎

「三階松」。
その他、松の模様はあまりにもバリエーション豊か。家紋にも多く使われています。
夫婦円満の「松葉」も模様に!

「松葉」。
ちなみに、針葉の「松葉」もまた別の伝統模様となっています。
松葉は2本で1セットの葉であるため、「仲の良い夫婦」を表していると言われています。「松葉」は「夫婦円満」、「恋愛運アップ」のお守りなのです◎
また、「松葉散らし」は、二股に分かれた松葉が、文字通り散らばっている模様。細かくちりばめられたものは「松葉小紋」と呼ばれます。

「松葉散らし」。
「松ぼっくり」も模様に!!

「松笠文様」の図案。
松ぼっくりがシンプルな線で表現され、文様となったのが、「松笠文様」。ナナメの線が松ぼっくりの1枚1枚を表していて、青森・津軽地方の刺し子「こぎん刺し」で見ることができます。
また、日本料理においても、イカやアワビの「松笠切り」は松笠模様に通じるところがありますね!
縁起モチーフと組み合わせて

おなじみ「松竹梅」。
「松」自体、縁起の良いモチーフですが、ほかの縁起モチーフとの組み合わせも多く見られます。なかでも、松の若枝をくわえて飛ぶツルの模様「松喰鶴(まつくいづる)」は、とても有名。
そしてなんといっても、「松竹梅」! ちなみに、本来はこの3つに優劣はありません〜◎