「麻の葉」、「七宝(しっぽう)」、「籠目(かごめ)」、「千鳥」……。
いつだったか、どこかで聞いたことのあるこれらの名前は、私たち日本人になじみの深いもの。日本に古くからある伝統模様の名前です。ひとことで「模様」といっても、その背景にある歴史や意味は奥深く、縁起もさまざま。
そんな日本の伝統模様のなかから、今回は「竹」をご紹介! 縁起の良い「松竹梅」でおなじみの模様です◎
「竹模様」の由来と縁起

竹模様。
日本人の生活に欠かせない植物である「竹」には、たくさんの縁起が詰まっています。
真っすぐに天に向かって伸び、生育が早く丈夫なところは、「気高さ」と「力強さ」を表します。そして、真っすぐに割れるけれど中が空洞なところは、裏表がなく何も隠すことがないという「潔白さ」を。
特に冬の寒さをものともせず常に青々としているところは、「清浄さ」の象徴であると共に「永遠・不老不死」の象徴ともされ、人々の心を元気づけてきました。
そして、「節制」をイメージさせる幾何学的な節の美しさから、模様として愛されることとなったのです。
すっきりしたフォルムの竹は、ほかの模様とコラボレーションしやすく、それぞれの意味が合わさって縁起度もアップ! 単独では「清涼さ」がイメージされ、一重や浴衣など夏の着物によく用いられていますが、通年使用可の模様です。

浴衣でもよく見かけるパターン。

こちらは竹の節を組み合わせた幾何学的なパターン。

竹の節を並べたパターン。骨のように見えなくもない!?

竹の節と蝶を組み合わせた、「竹の縞に蝶」。
「笹模様」

笹の葉模様のパターン。
「笹(ささ)」は、竹の葉っぱに当たる部分。背丈の短い竹のことを言います。
模様の世界では竹と笹は特に区別をしませんが、竹を描かない葉だけの「笹模様」も存在します。
そして、笹といえば”笹の葉さらさら”の「七夕(たなばた)」。ということもあって、夏の模様のイメージですが、笹は冬でも緑がみずみずしいため、竹と同じく1年を通して使える模様となっています◎

枝と葉があるパターン。

葉のみのパターン。
「竹に雀」

伊達家の「竹に雀」(左)と、上杉家の「竹に二羽飛び雀」(右)。
家紋にも多く用いられている竹ですが、いちばんといっていいほど有名な家紋は、「竹に雀」ではないでしょうか?
伊達政宗と上杉謙信がパッと思い浮かぶ戦国時代の名家、伊達家の「竹に雀」と、上杉家の「竹に二羽飛び雀」の家紋は、驚くほど似ています。
それもそのはず。この2つの家、じつは親戚同士。もともと縁戚だった伊達家と上杉家は、乱世のなかでさらに結びつきを強くしようとします。
伊達政宗の大叔父である伊達実元(さねもと)を、上杉謙信の義理の叔父にあたる上杉定実(さだざね)の養子にすべく準備が進められ、おめでたい結びつきの引き出物として、家紋の「竹に雀」も上杉家に贈られたのです。
ちなみに、この養子縁組はお家騒動で立ち消えてしまったとのことですが、東北地方で竹由来の家紋が多いのは、伊達家とのかかわりがあるからとされています。