日本の大学を卒業後、アメリカの短大でホスピタリティを学び、現在はアジアの航空会社でキャビンアテンダント(CA、客室乗務員)としてお仕事中の筆者が、日々のフライトで経験した、CAならではのウラ話をお届けしていきます◎
今回は、前後編。ある日の忙しいどころじゃ済まない「トラブル続きのフライト」についてお話ししたいと思います!
たまにある、トラブル続きのフライト

普段のフライトはだいたい平和だけど……?(pcruciatti / Shutterstock.com)
普段のフライトでは、何事もなく平和に終わることが通常。満席の場合など、お客様のコールに対応したり、トイレ掃除を何度もしたりと、忙しい時はもちろんありますが、それでもただ忙しいだけで、何の問題もありません。
ですが、たまに忙しいどころじゃ済まないような、トラブル続きのフライトも……。今回は、筆者が経験したある日のフライトについてご紹介しようと思います!
大人気の「非常口前の座席」でクレーム発生

人気の非常口前の座席。前が広いぶん、機内エンターテイメント画面やリモコンが、座席の横(肘掛けの下)に収納されています。
その日は、満席の大阪行きでお客様はほぼ日本人というなか、日本人クルーは筆者ひとりだけというフライトでした。
食事のサービスがひと段落したと思っていたところ、外国人クルーに呼ばれ、「日本人のお客様が怒っているから対応してほしい」とのこと。
そのお客様は男性で、非常口前の座席に座っていらっしゃいました。
ちなみに、この「非常口前の座席」。非常時の通路として使うため前の座席がなく、通常の座席よりも足元が広くなっています。そのため、隣の乗客を気にすることなくトイレに行けるなど、比較的自由に過ごせることから、お客様に人気の座席なのです。
たとえば、マイレージメンバーの上級会員であるゴールドメンバーのお客様でもその席を指定する方がいますし、この座席の横を通りすぎながら「この席がよかったね」と洩らすお客様もいらっしゃるほど。
そのくらい人気のある席なのですが、そのお客様は「座席の狭さ」について不満がある様子だったのです。
飛行機によって変わる座席の仕様

普通の座席なら、前の座席にモニターとリモコンが付いています。
そのお客様は、筆者がお話をうかがいに行った時からすでに、「狭い! 狭い! 狭い!」と連呼していました。そして詳しく話を聞いてみると、「座席が狭くて居心地が悪い」とのこと。
そのお客様ですが、ひと目見てすぐに分かるぐらいなかなか割腹の良い方で、確かにエコノミークラスの座席では狭いだろうな……という印象でした。
ただ問題は、行きの便でもエコノミークラスに乗られていたのですが、その時はそこまで狭くはなかったそうなのです。
では何が違っていたかというと、この時の飛行機は非常口前の座席の場合、映画などが見られる機内エンターテイメントのリモコンが、座席の横に付いているタイプだったのです。
普通の座席であれば、前の座席に取り付けられたビデオスクリーンの下にリモコンがあることが多いのですが、非常口前の座席ということで、それができない仕様でした。
このリモコンがあるせいで座席の幅がせばまってしまい、怒りが爆発したようでした。
ひたすら話を聞いて謝罪!

通常なら乗客は立ち入れない、飛行機のギャレー。(Jordan Tan / Shutterstock.com)
まずは座席でお話をうかがっていたのですが、お客様の怒りはいっこうに収まる気配がありません……。そこで、ほかのお客様のご迷惑にならないようにと、お客様にギャレー(配膳準備スペース)まで来ていただくことにしました。
ギャレーで筆者が話をうかがっていると、隣にいた外国人クルー達も一緒になって、日本語の内容は分からないなりに話を聞いてくれていました。
しかしこのお客様、外国人クルー達が本国の言葉で会話すると、「そうやってワケの分からない言葉で話されたら、俺に文句言ってるようにしか聞こえないんだよ!」とますますお怒りに……。
外国人クルー達には申し訳なかったのですが、いったん静かにしてもらい、筆者とお客様だけで話を続けるしかありませんでした。
あいにく満席のフライトだったため、座席を変更することもできません。リモコンの設置場所の違いであることや、次回からは非常口前の座席以外を希望してほしいということなどを伝えつつ、ただただ謝罪するのみ……。
すると、お客様ご自身も話をしているうち徐々に怒りが収まってきたようで、最終的には自分の座席に戻り、その後は終始静かにお休みになっていらっしゃいました。
ようやく落ち着いたと思ったら……?
こうして、やっと落ち着いたと思っていたら、今度は別の事件が起きたのです!
もう10年以上キャビンアテンダントの仕事をしていますが、1回のフライトでこんなにドタバタしたことは、後にも先にもありません(苦笑)
その話は、また次回に……。