日本の大学を卒業後、アメリカの短大でホスピタリティを学び、現在はアジアの航空会社でキャビンアテンダント(CA、客室乗務員)としてお仕事中の筆者が、日々のフライトで経験した、CAならではのウラ話をお届けしていきます◎
前回、非常口前の座席が「狭い!」と怒っていらっしゃった、ぽっちゃり体型のお客様の話をしましたが、後編では、そのフライトの続きの話をしたいと思います。
機内で急病人が発生!

他人事ではない、飛行機内の体調不良……。
非常口前の座席に座っていたお客様の怒りがどうにか収まったので、筆者は化粧室でちょっとひと息ついていました。
すると、いきなり「Japanese crew(日本人乗務員)!」という機内アナウンスが入ったのです。
通常、機内でお客様がいらっしゃる時に、そのように機内アナウンスで呼ばれることはなく、いつもはインターフォン(乗務員の席に付いている電話)で呼ばれます。
そのため、「アナウンスで呼び出しなんて、いったい何があったのだろう!?」と、急いで化粧室から出て、呼ばれた場所に向かいました。
するとそこには、40歳ぐらいの男性のお客様が、意識を失って泡を吹きながら痙攣していたのです。
その光景に、筆者も周りの方々もビックリ!!! 客室乗務員の訓練中に応急処置のトレーニングは受けていますが、さすがに痙攣の対応なんて習っていません。
そのお客様は、5~6人の友人と一緒に旅行中だったようで、友人の方がこのお客様には「てんかん」の持病があるということを教えて下さいました。
「飛行機の中にお医者様はいませんか?」

インターフォンで話すキャビンアテンダントさん。
まず、このような緊急事態が起きた場合、機内にお医者様がいらっしゃらないか、アナウンスを入れます。よく映画やドラマにあるようなシーンですが、もちろん毎回お医者様が乗っているとは限りません。
そしてこのときはというと、お医者様はいらっしゃらなかったものの、運良く看護師さんが乗っていて、名乗り出てくださいました。
その看護師さんの指示で、まずお客様が着ている服やズボンのボタンなどを緩め、その後、もし嘔吐した場合に嘔吐物が喉に詰まらないよう、身体を横向きに寝かせました。
すると幸いにも、お客様の痙攣は数分ほどで収まり、意識もその後すぐに回復。ご本人は何があったのかまったく分からないという状態で、ご友人の説明を聞いてとても驚いた様子でした。
看護師さんの指示により、しばらくは横になって様子を見ていましたが、その後は何もなく、無事日本に到着することができました。
もしも意識が戻っていなかったら、どこかの空港に緊急着陸という事態もあり得たと思うので、このときは大事に至らなくて、本当に良かったです……。
また、たまたま看護師さんが同乗していたことも、運が良かったとしか言えません!!
トラブルがトラブルを呼ぶ

何かあったときにはすぐに対処できるよう、キャビンアテンダントさんの説明はきちんと聞くようにしましょう!(Akimov Igor / Shutterstock.com)
前回の話から今回のこの話、すべて1回のフライトで起こったこと。映画やドラマならまだしも、現実の世界でこんなに事件が起こるフライトはなかなかありません!
「イレギュラーには引き寄せる力があって、続くときは続く」と同僚のキャビンアテンダントが言っていましたが、まさに、このときの筆者はイレギュラーを引き寄せていた気がします。
終始バタバタのフライトだったとはいえ、激怒していたぽっちゃりのお客様は笑顔で帰られたし、こちらのてんかんのお客様も無事に帰られたので、とにもかくにも本当に良かったです◎