「麻の葉」、「七宝(しっぽう)」、「籠目(かごめ)」、「千鳥」……。
いつだったか、どこかで聞いたことのあるこれらの名前は、私たち日本人になじみの深いもの。日本に古くからある伝統模様の名前です。ひとことで「模様」といっても、その背景にある歴史や意味は奥深く、縁起もさまざま。
そんな日本の伝統模様のなかから、今回は「梅」をご紹介しましょう!
「梅模様」の由来と縁起

京都・北野天満宮の菅原道真の神紋。
「学問に励むと梅が咲く」という、中国の故事があります。中国の皇帝が学問にいそしむと梅の花が咲き、怠けていると咲かなかったという逸話が元。このことから、中国では梅は「好文木」と呼ばれ、「知的さ」や「勤勉さ」を象徴してきました。
また日本では、”学業の神”である菅原道真が梅を愛したことから、道真=天神様の神紋となっています。
そんな梅模様は、大きく分けて「梅花文(ばいかもん)」と「梅鉢文(うめばちもん)」の2つに分類されます。
梅花文は、梅の花を写実的に模様にしたもの。オシベとメシベが描かれていることが多いです。一方の梅鉢文は、梅を幾何学的にデザインしたものです。
「梅花文(ばいかもん)」のバリエーション
「表梅」「裏梅」

「裏梅」。
「表梅」は、梅の花を真上からみた模様。「裏梅」は、梅の花を後ろから見た模様で、ガクがあります。
「光琳梅」

「光琳梅」。
「光琳梅」とは、5枚ある梅の花びらが、ひとかたまりになって描かれている模様のこと。梅の中に三日月が横たわっています。
名前からもお分かりのように、かの有名な日本画家、尾形光琳が作った模様で、さまざまにアレンジされています。
「捻り梅」

「捻り梅」。
その名のとおり、梅の花びらが捻じったようにデザインされています。スクリューに似ていると言えば、イメージしやすいかも。
「向こう梅」

「向こう梅」。
オシベとメシベが、梅の花びらの中心で円を描くように並んでいる、美しい梅模様です。
「梅鉢文(うめばちもん)」のバリエーション
「星梅鉢」

「星梅鉢」。
梅の花びらを究極的にデフォルメした「丸」を、少し小さめの丸を中心にして、周りに5つ配した模様。
大安や友引の総称である、「六曜」の紋と形がよく似ています。
「剣梅鉢」

「剣梅鉢」。
「星梅鉢」の中心に、剣模様が入ったのが「剣梅鉢」。加賀藩・前田家の家紋で有名です。
「利休梅」

「利休梅」。
「星梅鉢」の中心の円と、周囲の5つの円を線で結んだ幾何学的なデザイン。この柄を千利休が好んだので、「利休梅」と呼ばれるようになったとか。
ちなみに、「リキュウバイ(利休梅)」という植物もあり、利休梅模様とよく形が似ています。リアルなリキュウバイから利休梅模様ができたのではなく、先に模様があって、その模様に似ている花だから「利休梅」という名が植物の方に付いたそうです。

植物の方の「リキュウバイ(利休梅)」。
「梅模様」のバリエーションは無限!?
梅模様のバリエーションは、時代が下るにつれ増え続け、今や無限状態! 「梅花文」と「梅鉢文」に分類されない現代模様も、たくさんあります。最後に、ちょっと特別な古典模様をいくつか紹介します◎
「枝梅(えだうめ)」
模様化された梅の花を付けた枝ごと、模様になっています。
「梅樹(うめき)」
梅の木が写実的に描かれた、風景画のような模様。
「梅鶴(うめづる)」

「梅鶴(うめづる)」。カワイイ!!
梅の花とツル(鶴)が合体した、かわいらしくも縁起の良い模様。この「梅鶴」のように、梅とほかの意匠が合わさった模様もたくさんあります◎