日本の大学を卒業後、アメリカの短大でホスピタリティを学び、現在はアジアの航空会社でキャビンアテンダント(CA、客室乗務員)としてお仕事中の筆者が、日々のフライトで経験した、CAならではのウラ話をお届けしていきます◎
今回は、キャビンアテンダントと同様によく飛行機を利用する”旅のプロ”、「旅行会社のツアー添乗員さん」についてお話ししたいと思います!
ツアー添乗員は旅のプロ!

デキる添乗員さんとの旅は、ノンストレスで快適!
飛行機の搭乗中、何かの書類を持って前へ後ろへと機内を行ったり来たりしているお客様。ひと目見てすぐ、旅行会社のツアー添乗員さんだと分かります。
こうした添乗員さんたちはすでに旅慣れていらっしゃるので、客室乗務員がお話しをしたりお手伝いをしたりするという機会はあまりありませんし、機内でもツアー客の皆さんへの対応で忙しくしていらっしゃいます。今回は、そんな添乗員さんについてのお話。
先日筆者がお会いしたツアー添乗員さんで、とても丁寧な方がいました。その方は、すべての機内サービスに「ありがとうございます」と言ってくださり、「空いている席がございますので、よろしければどうぞお移りください」とご案内した際には、「添乗しているお客様にここの座席を知らせてありますので」とお断りされて、後々ギャレー(配膳準備スペース)までわざわざお礼に来てくださりしました。
筆者は、「こんなに丁寧で優しい添乗員さんと旅行したら、楽しいだろうし安心だろうな」と思いました。と、同時に、別の添乗員さんに関する、ある一件を思い出したのです……。
ツアー客がべた褒めの添乗員さん

パスポートなど貴重品の管理までやってくれる添乗員さん。旅慣れない人にとっては、まさに命綱のような存在です。(TonyV3112 / Shutterstock.com)
その日、筆者はエコノミークラスの担当でした。サービスが一段落した頃、ビジネスクラスのお客様に呼ばれて対応させていただくことになったのですが、その方はツアー旅行中に自宅の鍵が入ったカバンをなくされたとのこと。
すでに現地で気付いてツアー添乗員さんに相談したところ、もうカバンは諦めて、自宅まで鍵屋さんに来てもらおうということになったそうです。ただ、飛行機に乗ってみたら、今度はなくしたカバンから個人情報が漏れてしまわないかと心配になってきて、それを添乗員さんに伝えてほしいというお話でした。
そのお客様は添乗員さんの座席が分からないようだったので、添乗員さんの名前をお聞きして座席を調べるというやり取りのなかで、「この添乗員さんがすごくいい方で、日本に帰ったら旅行会社にお手紙を書こうと思っている」とおっしゃっていました。
別件の揉め事が発生
その添乗員さんの座席が分かったので、ご本人にお伝えしに行こうとしていたところ、また別件で、お客様同士がモメているから来てほしいという呼び出しが……。行ってみると、外国人のお客様と日本人のお客様がモメており、筆者が通訳としてお話しさせていただくことになりました。
そこでしばらく話していると、数列離れた座席のお客様から、「うるさい! そんな話どっか別でやって!」と怒鳴られてしまったのです。筆者はその言葉にビックリしつつ、ほかのお客様にご迷惑がかかってしまったな……と反省しながら、気を付けながら揉め事の対応をさせていただきました。
ようやく無事に事態が終息したので、”さぁ、さっきの添乗員さんにお伝えに行こう”と思ったそのとき、気付いてしまったのです! その添乗員さんこそが、さっき筆者が怒鳴られたお客様だったんです!!
「表」と「裏」の顔を持つ添乗員!?

人間だからイライラする時もあるだろうけど……?
ですが、筆者の頭の中では、しばらくその添乗員さんのイメージが一致しませんでした。
ビジネスクラスのお客様がベタ褒めしていたぐらい良い方なのに、たった今、私はその方から怒鳴られたのです……。そのため、ほかの人と間違えているのでは? と、何度も名前と座席を確認しましたが、やはり間違いありません。
気まずさを抱えながら、その添乗員さんにビジネスクラスのお客様の話をお伝えすると、「降りたら話しましょうと伝えてください」と、キレ気味に言われました。
なんだか、人の「表」と「裏」を見てしまったような気分でした。きっとツアー中もいろいろと大変で、機内ではゆっくり休もうと思っていたところに近くで騒がれ、イライラしたのだと思います。
そんな事情は想像できますが、旅行会社の顔でもある添乗員さんです。筆者達乗務員がもっと静かに対応できていればよかったという反省もありますが、周りにご自身のお客様がいらっしゃらなかったとはいえ、プロとしてはちょっと態度が悪すぎるんじゃないかと思ってしまいました。
筆者がその添乗員さんの旅行会社に悪いイメージを持ってしまったように、もしかしたら周りのお客様もどこの旅行会社の方か気付いていたかもしれませんし、そうなれば、将来ツアーを選ぶ際に別の旅行会社を選ぶという可能性も出てきます。
「人のふり見て……」というふうに、筆者も制服を着ているときは、今まで以上に自身のふるまいに気をつけようと思った一件でした。