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映画「ムーンライト」【テアトル・オネェ 第19回】

ヴァニラ・ノブが支配人を務める架空映画館「テアトル・オネェ」。新旧・内外・ジャンルも問わず、オススメの映画をレインボーな視点で取り上げ、ご紹介させていただきます◎

今回上映するのは2016年度のアカデミー賞で作品賞を受賞したものの、誤って「ラ・ラ・ランド」と発表され、その年の授賞式が最後の最後になって上を下への大騒ぎとなっちゃった「ムーンライト」

映画「ムーンライト」【テアトル・オネェ 第19回】1

 

◎「ムーンライト」のおすすめポイント

■ サバイバル人生を送る1人の男の子の物語
■少ないセリフで考える余白をくれる
肌色の処理が素晴らしい映像美も魅力

 


◎気になるあらすじは……?

この作品は、主人公の少年期・ティーンエイジャー・青年期の3つのパートに分かれて描かれてるの。
マイアミのリバティ・スクエアという貧困地域で、麻薬常習者の母親と暮らすシャイロン(日本語訳ではなぜかシャロンと誤訳)。体が小さく細く、引っ込み思案の彼は“リトル”って呼ばれていじめられてるの。しかも、家庭ではネグレクト状態で精神的にドン底。

そんなとき、ひょんなことから出会った麻薬ディーラーのフアン。彼はシャイロンに闇を感じたのか、声をかけて家に連れて帰り、妻のテレサに紹介したことから徐々に可愛がってもらうようになるのね。でも相変わらず学校ではいじめられるし、家では母親は薬でどうにもならない。それでも、フアンたちの優しさと、そして唯一の同級生の友人ケビンの存在が光を見いだして暮らしていけてるって感じなんだけど、母親に麻薬を売っているのが、実はフアンだということがわかって・・・。

ティーンエイジャーになったシャイロンは相変わらず、いじめられてる。母親は以前にも増して薬物中毒になり、売春までして薬代を手に入れてる始末。心のよりどころだったフアンは亡くなり、妻のテレサがシャイロンを何かと気にかけてくれている。そんなある日、とうとうあることで親友だったケビンにも裏切られ、そのショックと憤りから、シャイロンはその原因をつくったいじめっ子に制裁を下して、そのまま逮捕されてしまうの・・・。

月日が経ち大人になったシャイロン。“ブラック”て通称で呼ばれ、少年院を出てからアトランタに引っ越し、フアン同様に薬物の売人となって生計を立ててるの。しかも昔とは違う筋骨隆々の見違えるようなセクシーな男になってる。

現在、薬物依存更生施設に入ってる母親からは頻繁に家に帰ってきてって電話がかかってくるものの、何を今さらって感じで日々を刹那的に生きている。そんなある夜、学生時代のあの出来事以来、会わないままになっていたケヴィンから電話がかかってくるの。あの時のことを謝りたいから、もしよければ自分が働いているダイナーに来て欲しいって・・・。

シャイロンは意を決して母親の様子を見に行くという自分なりの大義を持ってマイアミに向かい、母を訪ね、そしてケヴィンの働くダイナーへ。そこでワインを飲みながら、懐かしさといまだある憤りを抱えながら、ぎこちない再会を果たすの。

でも・・・。

◎わたしには心にずんずん響いたわ

結論から言えば、シャイロンはゲイなのね。唯一の友人だったケヴィンは初恋の相手。だから、ティーンエイジャーのパートで彼に裏切られたときの絶望感といったら見ていて胸が張り裂けそうだった。逮捕されたシャイロンをなんともいえない目で見送るケヴィンと、見つめ返すシャイロンの空虚な瞳。そこにいろんなことが去来するのは見ているアタシたちにもよくわかる。そして青年期のパートで、みるからに変わったブラックに何があったのかどういう暮らしをしていたのかも理解。
貧困で黒人、そしてゲイという、人生をサバイバルせざる得ない要素が揃った主人公にとって、フアンのような生き方を選んだことは必然だったのかもしれない。

今でこそ、こうやってオネェぶッこいて映画のことを書かせていただいているアタシだけど、10代から20代はやはりクローゼット状態。
時代も今と違って寛容ではない時代だったから、自分がゲイだということがわからないよう、立ち居振る舞いを意識していたし、目立たぬようにゲイバーに飲みに行ったり(飲みに行っとんのかい!)してたわ。でも、まだアタシは都会に住んでいたという部分に救いはあったかもしれない。地方に住んでいると、もっとハードルは高かった。 アタシたち以上に家というものが付いてくるし、近所や職場のコミュニティも濃厚だし・・・。

◎誰にでもあるかもしれない、誰にも言えない心の闇ね

「ムーンライト」を見た地方出身の友人は、映画のシャイロンのように体が小さくて細く、そこへ持ってきて声が高かったので、いじめ対象としてロックオン。
それは映画と同じようだったり、もっと陰湿だったり。時には教師すらいじめを見て見ぬ振りだったと言ってた。
だから映画を見てそのときのことを思い出して気持ち悪くなり、トイレに駆け込みながらもなんとか最後まで観て、救いがあって良かったと泣きはらしたと、涙ぐみながら話してくれたわ。
友人は、地元を出たい一心で勉強して大阪のいい大学に進学し、そのまま大阪で就職して、今は人生を謳歌してるんだけど、地元には戻りたくないし、同窓会も出たくないし、何より興味がないってつれなかった。でもそのときの顔を見たら表情が明るくて、ある意味それが彼なりの復讐であり、救いなのかしらと感じたわ。

◎ストーリーもさることながら映像美にも注目して

“リトル”、“シャ(イ)ロン”“ブラック”それぞれのパートは全編を通してセリフが少なく、主人公に対して説明的な語りがないぶん、余白を委ねて描かれる。しかも、これまでのステレオタイプな黒人とは違う描き方も新鮮だったわ。さらに映像にもそれぞれ処理が施されていて肌の色が美しいの!

“ブラック”のパートはその真骨頂。色気のある映像の中で、それまでの実は巧妙に張り巡らせたアイテムやキーワードが繋がって、ブラックのケヴィンへの秘めたる思いがわかり、心のひだをビロンビロンしてくれるわよ。

MOVIE DATA

「ムーンライト(Moonlight)」

■ 監督 …… バリー・ジェンキンス

■ 出演 …… トレヴァンテ・ローズ、ジャネール・モネイ、ジャレル・ジェローム、ナオミ・ハリス、マハーシャラ・アリ ほか

■ 公式HP …… http://moonlight-movie.jp/

 

ムーンライト(字幕版)の画像

ムーンライト(字幕版)

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