世界には国、地域、民族、宗教などに由来する、たくさんのお守りがあります。多くは幸運のお守りで、金運や恋愛などに特化したお守りも見られます。
そのなかでも、このシリーズでは「魔除け」としての働きが大きいアイテムやノウハウを、ピックアップ! 目に見えない悪を退ける、さまざまな魔除けたちをご紹介します◎
今回は日本の雛祭りをピックアップ。3月3日の桃の節句に行う、女の子のお祭りですが、実は魔除けの行事なのです。
●雛人形は、魔除けの人形(ひとがた)だった

「蘭亭曲水図」 山本若麟 1790年 絹本着色(パブリック・ドメイン)
3月3日は、雛祭り。上巳(じょうし/じょうみ)の節句、桃の節句とも言われます。
もともと上巳とは旧暦3月の最初の巳の日ことで、冬から春に変わる時期。古代の中国では、季節の変わり目は体調を崩しやすい上巳の頃、病魔を払い、身についている穢れも払い落とそうと、水辺で体を清めたと言います。
その風習が奈良時代に日本に伝わり、水で清めたり、人形(ひとがた)の紙で体をなでて穢れを移して川や海に流したりするようになりました。
●女の子のお祭りに

もはや何段かわからない絢爛豪華なひな人形もあります◎
平安時代に貴族の子どもたちの間で、お人形遊びが流行したのもあり、室町時代の頃には、人形の紙は人形へと姿を変えていきました。日にちも、奇数が重なり縁起がいい3月3日に固定されます。
江戸時代には、宮中をそのまま人形に写し取ったような、とても川に流すにはもったいない人形となります。お内裏様にお雛様に……どんどん人形の数も増え豪華になり、段飾りとなり、女の子たちが人形を飾って楽しむ行事へと変わっていきます。
●菱餅も魔除け!
お雛様にお供えする菱餅にも、魔除けの役割があります。赤・白・緑の3色の菱餅ですが、赤は魔除けの色、白は栄養価も高く薬効もある菱の実を混ぜたお餅の色、緑はその独特の匂いや薬効から魔除け草ともいわれるヨモギの色から来ています。
魔除けではありませんが、雛祭りで食されるハマグリは、夫婦和合の意味があります。対のハマグリの殻でないと決して合わさらないからです。
●桃も魔除け!

桜よりひと足早く春の訪れを知らせてくれる丸くてかわいい桃の花。
3月3日の頃は、桃の開花の時期。桃は、日本や中国の神話の中で魔除けとして登場します。桃の実にある毛を魔が嫌うからとされています。
時代は移り変わり、雛祭りの形も変わりましたが、人形を飾ることで魔を払い幸せを願うという気持ちが変わらないのです。