レインボー視点でチョイスした映画を上映する架空映画館「テアトル・オネェ」。アタシがヴァニラ・ノブ支配人でございます。
今回上映するのは2018年度アカデミー賞作品賞、脚本賞、「ムーンライト」に次いでマハーシャラ・アリが助演男優賞を受賞した2019年3月1日より公開の「グリーンブック」。
◎「グリーンブック」のおすすめポイント
■今年のアカデミー賞作品賞・脚本賞・助演男優賞を受賞したのよ!
■脚本家のお父さんの実経験を基にしたお話
■ヴィゴ・モーテンセンとマハーラシャ・アリの演技のコラボに見惚れるわよ
◎気になるあらすじは……?
ニューヨークに住むイタリア人、トニー・リップはゴミの収集の運転手だったり饒舌さと人懐っこさ、腕っ節の強さを買われてクラブの用心棒兼運転手をしてるんだけど、そのクラブが改装工事のために2ヶ月間無職に。どうしようかと思ってたところに知人からドクター・シャーリーという人物の運転手をやらないかという話が。
よく理解できないまま面接に行くと、その人物はなんと音楽の殿堂カーネギーホールの上階にある高級マンションに住んでいるという。会ってみると、ドクター・シャーリーは医者ではなく、数々の博士号を持つ天才的なエリートピアニスト。しかも黒人の!
彼から提案されたのは、アメリカ南部への演奏ツアーへの同行。だけど数カ月、家族と離れることになるし、運転兼用心棒のみならず彼の身の回りの世話も条件と言われ、一旦は断るものの、ギャラと奥さんの説得もあり、しぶしぶ引き受けることにするの。
小さい頃から神童的に扱われ教育されてきたドクター・シャーリーと下町育ちのガサツなトニー・リップの珍道中が始まるんだけど、当時はまだ黒人差別が色濃く残っている時代。しかも訪れる土地はディープサウスという、さらに差別がしっかり根付いてる。
さて、水と油のようなふたりの前にどんな旅が待ち構えているのかしらってストーリー。
◎20世紀前半の差別渦巻くアメリカの物語なの

Cover of the book The Negro Motorist Green Book (1940 edition) (パブリック・ドメイン)
タイトルのグリーンブックは、1930年代から60年代にかけてアメリカ南部を旅する黒人が参考にしていたガイドブックのこと。そこには黒人が宿泊できるホテルや立ち入っていいレストラン、ガソリンスタンド、トイレなどが記されていたのね。だって当時はそのほとんどが黒人お断りの場所がほとんどだったから。
都会はまだマシとしても、ドクター・シャーリーたちが向かった南部の方は、まさに差別がしっかり垢のようにこびりついてたからガイドブックはドクターの運命を左右する重要なアイテムでもあったの。
◎ロードムービーとして物語は進むのだけど…
当然、道中はまずはトニーとドクターはぶつかり合う。そりゃ育ってきた環境が違うんだからすれ違いも否めないわよね(あれどっかで聞いたことあるフレーズ)。でもそれはあくまで雇用する側と雇用される側との関係でのこと。でもそれが南部に行くに従って、トニーもこれはなんだかおかしいぞってなってくるわけ。
それと同時にドクターの演奏を聴くたび、知性の一部を感じるたび、そしてなぜ彼がわざわざ南部へツアーに行くのかがわかってくるたびに彼の意識は変化していくの。もともと粗野だけど正義感は人一倍強い彼だけに、ドクターに降りかかる不当な差別にふつふつと怒りが。さらにエリートな人生だけれども孤独でもあったドクターに同情も芽生え始めるのね。
実はドクターにはある秘密があって、その場面では見てるアタシも胸が痛んだわ。アタシたちにも関係する“ある出来事”があった翌日、ドクターは「昨夜は悪かった」と謝るのね、それを受けてトニーは「気にすんな、俺はニューヨークのクラブで働いてたから知ってる・・・この世は複雑だ」って答えるの。このやり取りで、二人の間に信頼が生まれたなぁって思って、先に傷ついた胸は、今度は熱くなっちゃった。
◎さすがは名監督なのよ

アカデミー賞の前哨戦ともいわれるゴールデングローブでも作品賞、助演男優賞を獲り喜ぶ様子。左からヴィゴ・モーテンセン、ファレリー監督、リンダ・カーデリニ、マハーシャラ・アリ(Featureflash Photo Agency / Shutterstock.com)
監督はアタシの大好きな映画「愛しのローズマリー」や「メリーに首ったけ」のピーター・ファレリーなんだけど、前記した作品にはマイノリティな面々がたくさん出てくるの。彼らに対して愛情をたっぷりに描きつつも大笑いさせて、でもちゃんと彼らに対する問題も浮かび上がらせてきたの。
それがこの作品では、差別という厳しさを描きつつもコメディ要素を絶妙なバランスで組み込んで見事に昇華させてくれてた。アカデミー賞作品賞受賞は当然だったわ。
↑アカデミー賞作品賞受賞後のピーターファレル監督はじめスタッフ陣はしゃぐ姿がキュート◎
◎演じる俳優も超一流

AFI FEST 2018に登場した笑顔のマハーシャラ・アリ(左)と撮影も終わってほっそり元に戻ったヴィゴ・モーテンセン(右)(Vladimir Yazev / Shutterstock.com)
そして本当はデンマーク人なのに、イタリア人、トニー・リップを見事に演じたヴィゴ・モーテンセン(この作品のために20キロ太ったそう! しかも大食いのシーンではホットドッグを14個も平らげたらしいわよ。)と、映画「ムーンライト」ではいかにもマイアミの危険エリアで暮らしていそうな麻薬の売人を演じていたのが、今作では打って変わってとても美しい英語のアクセントを巧みに使いながら優雅な身のこなしでドクター・シャーリーを演じたマハーシャラ・アリの俳優としての凄さには、アタシが書きながら頭に浮かんだ日本の某俳優たちに爪の垢を煎じて飲んで、体に擦りつけたいわ!
とにかく必見!オススメしすぎるわ◎
MOVIE DATA
「グリーンブック(Green Book)」
■ 監督 …… ピーター・ファレリー
■ 出演 …… ビゴ・モーテンセン、マハーシャラ・アリ、リンダ・カーデリニ、ディミテル・D・マリノフ、マイク・ハットン ほか
■ 公開 …… 2019年3月1日(金)
■ 公式HP …… https://gaga.ne.jp/greenbook/