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映画「疑惑」【テアトル・オネエ第22回】

新旧・内外・ジャンルも問わず、レインボー視点でチョイスした映画を上映する架空映画館「テアトル・オネェ」。アタシがヴァニラ・ノブ支配人でございます。今回の上映作品は、このコラム初の邦画! 社会派推理小説の第一人者、松本清張の原作を映画化した「疑惑」

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◎「疑惑」のおすすめポイント

■元祖!? 後妻業映画!

■ゲイが見るべき三大邦画と言われているうちの一本。

■岩下志麻と桃井かおりの壮絶なるディスり合戦に失禁必至!?

◎オネエがはまるわけ

ゲイバーで映画の話がよく出るんだけれど、その時、先輩ゲイから必ずと言っていいほどというか口を酸っぱくして言われたのが--

「ゲイなら観るべき邦画が3本あるわ。一本は『吉原炎上』。もう一本は『Wの悲劇』。そして疑惑よ!これを観てないといっぱしのゲイとは言えないわよ!」。

そう言われると、何気にプライドの高いゲイは観なきゃいけないという気持ちに駆られ、慌ててレンタルショップに駆け込み、いざ観ると、そのゲイの琴線触れまくりのストーリーと、キャラクター、場面、台詞にいちいち魅了され、どうしても人に勧めたくなるわけ、「あんたまだ観てないの? 観ないと損するわよ」って。

ワタシもそんなゲイの中の一人。おかげでいっぱしのゲイになった、と思うわ。それにしてもこの3本を何度繰り返して観たことか。そのおかげでお気に入りの台詞もソラで言えるほどになったもの。

奇しくも80年代の日本映画界に生まれたこの3本。コンプライアンスが云々と言われる今じゃ、このテンションでリメイクされるなんて到底無理だけに、まさに奇跡の映画と言わざる得ないわ。

2019年、「疑惑」は米倉涼子黒木華テレビドラマとしてリメイクされたけど、挑戦はわかるけれど、すでにスキのない完璧な作品があるというのに、なんで今やるの? と思うほど物足りなさで充満してた。そして木村佳乃主演のテレビドラマ後妻業も、お行儀が良くてやはり物足りない。どんなに頑張ってもやはり1982年版「疑惑」を一度でも観てしまうと、「疑惑」の前に「疑惑」なし。「疑惑」の後に「疑惑」なしなのよねぇ(アタシ何回「疑惑」って書いてんのかしら)。

◎気になるあらすじは……?

富山県のある港の岸壁から一台の車が海へっ突っ込み、夫・福太郎が死亡したんだけど、妻はなんとか自力で脱出し、助かったの。

死んだ男性は地元で有名な酒造会社の社長で、彼には多額の保険金がかけられていたの。しかも受取人は後妻の鬼塚球磨子。当然、球磨子は保険金殺人の容疑がかけられ警察に逮捕されることに。

病院では看護婦に鏡をもっとちゃんと持てと怒り、劇場型とも言われる記者会見では、球磨子に対しての記事を率先して書いた北陸日報の記者に対して「あなた、もう少し後ろに下がってお願いだから喋ってくださる? 下がって。面白いわね、私はやってないんだから。無実ははっきりしてるじゃない。バカみたい。面白半分に人の興味をそそるような記事を書いて・・・。あんたみたいなのをペン乞食って言うのよ」と、強烈なキーワードを挿入しながらムカつかせる台詞を吐くんだけど、この時の桃井かおりの話し方や手ぶりはThis is かおり

ちなみにこの場面、大阪のドラァグクイーン界の隠し兵器と言われるルドミラ・フォンテンブルグさんのリップシンクショウの十八番としても使われるほどゲイの間ではお馴染みとなってるわ!

さらに通夜の席に乗り込んだ球磨子が、一族が冷たい視線と憎しみオーラを向ける中、夫・福太郎の亡骸を見るやいなやいきなりえずき倒すという地獄絵図を見せてくれる……

そのふてぶてしい態度と、彼女の過去のトラブルを知り、マスコミも様々な記事を書き、球磨子の犯行と疑わないムードに。そんな中、国選弁護士の佐原律子が弁護人となり、裁判が始まるが・・・って話。

原作では弁護士は男性なんだけど、映画では女性になってるの。この変更が奇跡を生んだわね。

◎まさに龍虎相搏つよ

鬼塚球磨子を演じるのは桃井かおり。佐原律子を演じるのは岩下志麻

竜虎相搏つと言っていいのかしら。もうね、それはそれはすごい戦いが繰り広げられるわけよ。

球磨子は本人が「前科四犯、夫に保険金をかけて殺した北陸一の毒婦・鬼塚球磨子・・・。鬼塚球磨子って名前がマズイわねぇ」と笑いながら言うくらい、ふてぶてしく感情の起伏が激しく向上心に依存心、金銭欲の強い女。

かたや律子はやり手の弁護士だけど、プライドは高く傲慢。そして仕事人間であるがゆえに家庭崩壊。「あなた」ではなく「あーた」が口癖の女性。

初対面ではリスクが高すぎると誰も引き受けようとしないない弁護を引き受けた律子と六法全書を読み、自分で弁護する気満々の球磨子との初対面の場では、「嫌いだなぁアンタの顔」とカマす球磨子に「あーた、死刑になりたければそうすれば」と上から目線で威嚇する律子の言葉で初戦を飾る。

そそりゃお互い水と油でもあるし、でも、どこかしら似ている部分もある。それだけに衝突は避けられない。その衝突ぶりは互いに一歩も引き下がらないから余計にえげつないの。

裁判が始まれば証言台に立つ彼女の関係者にいちいち牙を剥き、悪態をつく球磨子を猛獣使いのようにさばく律子。

◎大大女優の登場に圧倒されるわ

この裁判のシーンもいちいちツボ。特に球磨子が務めていたクラブのママ、堀内時枝の場面は素晴らしい。演じるのは大大女優の山田五十鈴

まず証言台に立つと裁判長に年齢を聞かれ、咳き込んでごまかす五十鈴にまず1ポイント。そして回想シーンのクラブで亡くなった夫・福太郎が飲みに来て、球磨子が口説きにかかった姿を見るときの五十鈴の目。昨日、今日のポッと出には絶対にできない視線は絶品。さすが大大女優で2ポイント。

その後も球磨子に「おだまり! アンタがいつ儲けさせてくれたのさ! お得意様横取りして囲いもんになって、その上バンスを返さないでさっさと辞めちまったんじゃないか! こっちは大損だよ!」と、お里が知れる口っぷりでいなして6ポイント。

律子が五十鈴に質問をすれば、それにムカついて「女が金目当てに男を垂らすのは当たり前だろ! 男だってわかって遊びに来るんだ! あたしゃね、30年この商売やってるんだよ! 男と女のことだったらね、悪いけどアンタなんかよりよっぽど泥水飲んでんだよ! 騙すも騙されるも紙一重! そんなことも知らないでよく弁護士やってられんねぇ! うち帰ってよく亭主に聞いてごらん! そんな 調子じゃ逃げられちまうよ!」と、ピシャリと啖呵を切られさらに律子にとって夫のことは図星だっただけに何も言えず、ヘビに睨まれたカエルのごとき表情で見つめるしかない場面で五十鈴へのポイントは5倍。てな具合なの!

◎あとは自分で結末を確認してね

そんな数々の証言者とのやりとりを経て球磨子が犯人かどうかって裁かれるんだけど、それは映画を観てのお楽しみ。さらに最後に球磨子と律子が対峙するんだけど、この場面があるからこそゲイが代々「観なきゃいけない作品の一本よ!」と、語り継ぐ意味がわかるはずよ。

MOVIE DATA

「疑惑

■ 原作 …… 松本清張

■ 監督 …… 野村芳太郎

■ 出演 …… 桃井かおり、岩下志麻、鹿賀丈史、小林稔侍、柄本明、仲谷昇、丹波哲郎、山田五十鈴 ほか

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