日本人の生活のなかに、欠かせない存在となっている「コンビニ」。食品や雑誌だけでなく、文房具や化粧品、医薬品にいたるまでありとあらゆるものが取り揃えてあり、いつでもどこでも手に入れられることのできる極めて便利なお店ですが、実はヨーロッパには「コンビニ」と呼ばれるものがないんです。
そうは言っても、「コンビニなんて台湾や韓国、中国をはじめとするアジアの国々のどこへ行っても簡単に見つけられるし、アメリカやオーストラリアなどにもあるよ!」と思う方もいるかもしれませんが、実は著者の住むイギリスをはじめとするヨーロッパでは24時間営業のお店がほとんどありません。
では「コンビニ」のない社会で暮らすヨーロッパ人は、いったいどうやって生活しているのでしょうか? 今回は、その謎に迫りたいと思います。
「コンビニ」に相当するお店はスーパーの小規模店

スーパーの「Sainsbury’s(セインズベリー)」が営業するコンビニ。(Andriy Blokhin / Shutterstock.com)
イギリスには、郊外に行くと巨大駐車場の付いた超大型スーパーマーケットがあり、それらの店舗が平日に24時間営業を行なっていることがあります。また、ガソリンスタンドに併設されたスーパーマーケットは小規模ながら24時間営業を行っています。しかしながら、気軽に徒歩で行ける場所ではないのが、やっぱり日本の「コンビニ」とは違うところ。

イギリス最大のスーパーマーケットチェーン「TESCO(テスコ)」。総合マーケットやコンビニなども展開中。(Peter Gudella / Shutterstock.com)

雑貨や雑誌、飲料などが置かれていてちょっと困ったときに便利。(Mick Harper / Shutterstock.com)
一方で、牛乳やサンドウィッチ、パイ、菓子類といった食品や新聞・雑誌、風邪薬やアルコールなどを販売している「コーナーショップ(角の店)」と呼ばれるお店が街のあちこちにあります。主に中東系やインド系の方達が営む小さなお店で、イギリスではこのようなお店が伝統的に「コンビニ」のような役割を果たしてきたと言えるかもしれません。ただ、この「コーナーショップ」は24時間営業ではなく、夜9時または遅くとも10時くらいには閉店してしまうお店が多いようです。

安いスーパーとして人気が高いイギリスのスーパーASDA(アズダ)は24時間営業の店舗も。(Luis Santos / Shutterstock.com)
また、街のあちこちにあるスーパーマーケットの多くは大型店舗と小型店舗の両方を展開しており、小型店舗は24時間営業ではありませんが、平日なら夜11時、または夜12時まで営業しています。割高な「コーナーショップ」よりも価格が安く、夜何か買い忘れていたことを思いたした時に、さっと買いに行ける「コンビニ」要素の高いお店として親しまれています。
なぜヨーロッパは24時間営業のお店が少ないの?

規制緩和が進められているが、イギリスでは法律でお店の規模で営業時間が決められている。(Chris Jenner / Shutterstock.com)
イギリスのスーパーマーケットやデパートなどは、日曜日になるとさらに時間を短縮して営業しています。これは法律によって、売り場面積280平方メートル以上の店舗の日曜営業が最長6時間までと定められているのが理由で、大抵のお店は午後4時か5時に閉まってしまいます。そのため、著者は日曜日になると朝からソワソワしてしまいます(苦笑)。
また、最近では規制緩和が進んでいると言われるものの、ヨーロッパには「閉店法」と言われる法律があり、ドイツでは、小売店の営業時間は平日・土曜日の午前6時から夜8時まで、日曜日は終日閉店と決められています。
労働者には休息が必要という考え方が主流
最近、日本でもコンビニの24時間営業の是非が話題になっていますが、ヨーロッパでは「労働者には休息が必要」という考え方が広く浸透しています。日曜日の営業を禁止する法律は、もとは宗教上の安息日の伝統から来ているようですが、ヨーロッパには深夜や日曜日に買い物をする習慣がなく、特に不便を感じることはないそう。むしろ、その時間帯は通常「休息の時間」と考えられており、人が休む時間に誰かに仕事をさせるのは、労働者を酷使する恐れがあると感じる傾向があるようです。普段から便利さに慣れ切ってしまっている日本人ですが、「便利さ」と「生活の質」のどちらを優先するのか、一度立ち止まって考えてみるのもいいかもしれませんね。
(写真::Thinglass / Shutterstock.com)