最近では日本でも、若い世代を中心に中古のマンションや戸建てを「リノベーション」して住むという人も増えてきており、家を買うなら何が何でも「新築物件」という日本の住宅事情にも変化が生まれているようです。
そうは言っても、日本で流通している中古物件は全体の13%ほどにとどまっているそうで、中古物件が全体の約9割というイギリスやアメリカと比べると、依然として圧倒的に低い数字となっています。
一方で、イギリスで家を探すときに「築100年」くらいの物件に出くわすことは、決して珍しいことではなく、古い(歴史的な)建築物であるほど物件の値段は高くなると言われています。
今回は、そんな日本とイギリス(欧米諸国)の「住宅をめぐる文化の違い」をご紹介します。
日本の「新築志向」はどこからきたのか?
日本では、戦後から高度経済成長期に至るまでに深刻な住宅不足に陥り、住宅の数を増やすことが何よりも優先されていました。そのため、住宅のクオリティーが低下してしまい、築年数が増えるほど老朽化が加速し、価値がなくなると考えられるようになったと言われています。そのため、「マイホームを買うなら新築でなければ」という志向が高まっていったと考えられています。
また、欧米などの海外では一軒家などの住宅も投資対象の商品として扱われていますが、日本では、一軒家の住宅を投資のための商品として考える習慣はないようです。日本でもマンションなどでは、所有者たちが修繕費用を積み立てて定期的なメンテナンスを行うことが一般的になっていますが、一軒家の所有者には特にその義務はありません。
そのため、適切な修繕を定期的に行っていない物件は、老朽化が急速に進んでしまい、商品価値も下がってしまうことになります。日本では、築年数の経った物件に対して、このような「老朽化」のイメージがつきまとってしまい、中古物件を避ける人が多いようです。
古いものが大好きなイギリス人
一方で、新築の物件よりもが築年数がかなり経過した「古い家」の方が「価値がある」と考えるイギリス人。彼らが、古い家にあえて投資をする大きな理由の一つが「当時の(先代の)建築技法や装飾技術」に高い関心があるからだと言われています。なかでも、住宅の購入を考えている人の多くが、希望する物件の条件として「建築当時の窓が残されていること」「建築当時の暖炉が残されていること」また「本物の木製の床が使用されていること」「当時の伝統的なタイルが使用されていること」といった住宅の特徴を提示しているとか。
ところが、こうした年代物の物件はイギリスでは価値が高く、値段も高騰するため、初めて家を買う若者にとっては手が届かない物件も多いそうです。そのため、22歳から37歳までのミレニアル世代の多くは、「新築物件」を選択するという人も少なくないそうです。

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イギリスでは、「低価格の新築物件」、「高価な中古物件」という印象が強く、日本とはまるで逆の構図になっているのも面白いですね。
自分の家は自分でカスタマイズするのが常識
イギリス人にとって、家を買うということは「箱」を買うことと同じです。建築当時のオリジナルの装飾を残しつつ、思い思いのデザインに内装を変えていくことが当たり前になっています。もちろん、築100年近い住宅は、内装に手を加えたといっても不具合は少なくありません。窓枠がゆがんで隙間風が入ったり、配管が老朽化して故障することも多々あります。
日本人にしてみると「不便」の一言で一蹴してしまいそうなライフスタイルではありますが、年代物の建築物には魅力が溢れており、何度も手を加えながら美しい家に住み続けるという文化がイギリスには染み付いているのかもしれません。