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映画「フォー・ウェディング」【テアトル・オネエ第28回】

奥歯が痛くなったので歯医者に行ったら、速攻で抜歯しないとダメ! と言われて抜いたら途端に滑舌が悪くなった架空映画館「テアトル・オネェ」支配人のヴァニラ・ノブです。

今回上映するのは1994年に公開された「フォー・ウェディング」

 

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◎「フォー・ウェディング」のおすすめポイント

■かつてロマコメの帝王と呼ばれたヒュー・グラントの出世作

■4つの結婚式とひとつのお葬式の重さ

■結婚の意味を改めて考えさせてくれるわ

◎令和になるけど、ヒュー・グラントの時代があったのを思い出して

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若かりしヒュー・グラント。「恋するための3つのルール」(1999)で共演したジーン・トリプルホーンとプロモーションショット。(Featureflash Photo Agency / Shutterstock.com)

モーリスという名作同性愛映画で注目されて以後、妊娠した妻と子どもが欲しくない夫との出産までの日々を描いた9ヶ月ジュリア・ロバーツ演じるハリウッドの売れっ子女優が、ロンドンの地方都市で赤字続きの書店を営む男性と恋に落ちるノッティング・ヒルの恋人レニー・セルウィガー演じる30代の独身女性が真実の愛を探すブリジット・ジョーンズの日記サンドラ・ブロック演じる弁護士と不動産会社社長とのギクシャクした恋愛を描いたトゥー・ウィークス・ノーティス、大人になりきれない大人と闇を抱える子どもとの交流を描いたアバウト・ア・ボーイ、クリスマスを軸に様々な人たちの人間模様を描いたラブ・アクチュアリー、作曲家と植木の水やり女性が曲作りをするラブソングができるまでと、90年代から00年代、コンスタントに彼メインの映画がつくられ、日本でも公開され、ヒットしていた時代があったの。ヒュー・グラントエイジが確実にあったのよ!

 「ノッティング・ヒルの恋人」(1999)トレーラー  ヒュー・グラントもジュリア・ロバーツもキュート◎

今じゃ初老に差しかかり、目尻のシワがしっかりの枯れたイケオヤジになってるけれど、出てた作品からロマンティック・コメディの帝王って称されてたのよ。

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ラブ・コメディ「ラブソングができるまで」(2008)のプレミア上映会での笑顔。(Tinseltown / Shutterstock.com)

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2019年ゴールデングローブ賞会場にて、2018年に結婚したスウェーデン出身のプロデューサー、アナ・エリザベット・エーベルシュタインとのツーショット。(Featureflash Photo Agency / Shutterstock.com)

◎気になるあらすじは……

そんな帝王だった彼の出世作となったのが「フォー・ウェディング」

タイトルの通り、ヒュー・グラント演じる主人公が関係する4つの結婚式が行われ、これにひとつの葬式が加わり描かれてるの。

一応人生において困らない程度にモテてきて、恋愛には不自由をこじらせてこなかった独身男チャールズ。ただ結婚となると話は別で、そこはとても消極的。そんな彼が友人花婿の付添人を務めることに。が、寝坊・・・。ルームメイトの妹分、スカーレットに叩き起こされ慌てて式場へ。でもってうっかり花婿に渡さなきゃいけない結婚指輪を忘れてしまうも友人たちに助けられ緊急対応でことなきを得て無事に式は終了。その時に出会ったのがキャリーというアメリカ人女性。パーティーのテンション、さらに酔いと下心もあって、勢いのまま彼女と一夜を過ごすんだけど、ある言葉がきっかけでキャリーとその場でグッバイ・・・。

数ヶ月後、2つ目の結婚式が。

再び遅刻しかけるチャールズとスカーレット。そこではいろんな展開が(新米司祭役にミスター・ビーンことローワン・アトキンソンが演じてて爪痕しっかり残してます)。チャールズがテーブルに着くと同席者は元カノだらけだわ、キャリーと再会するもすでに彼女はフィアンセがいるわ、成り行きで元カノと再び寝てしまうわ、キャリーになぜかウェディングドレスを選ばされるわで踏んだり蹴ったり&自業自得状態(ゲイの世界でもこういう状況あったりするわぁ)。そして物語は徐々に人間関係をさらに複雑にし、整理されていくんだけれど、チャールズの友人に年上のギャレス(演じるは、オープンリー・ゲイのサイモン・カロウ)と、彼の恋人マシュー、つまりゲイカップルがいるのね。チャールズたちにとって二人は親友であり、悪友であり、相談相手であり、何よりも理想のカップルだったの。で、3回目のある人の結婚式の時、突然、ギャレスが倒れ、そのまま帰らぬ人に・・・。

一転して執り行われるお葬式。

周りから理想のカップルだと尊敬されていたふたりは、世間的には結婚することは許されなかった(ちなみにこの映画の舞台であるイギリスで同性婚法案が施行されたのは映画公開から20年後の2014年!)。それだけに残された恋人、マシューが弔辞を読むんだけど、それは20世紀最大の詩人の一人で、W.H.オーデン(「見る前に跳べ」って詩を知ってる人も多いんじゃないかしら)の「葬儀(哀悼とも訳してるのもあります)のブルース」という詩。
オーデンもゲイだったゆえ、この詩を読み解くと、弔辞を読むマシューの、最愛の人を突然失った者の心からの哀しみが切々と伝わり胸がかきむしられるよう。

◎この映画に一番の深みを与えるシーンなの

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W.H.オーデンは20世紀最大の詩人のひとりとされる。(パブリック・ドメイン)

アタシこの弔辞の中でハッとして、滂沱の涙が溢れてしまった部分が…

彼は僕の北であり、僕の南であり、東で西だった。
僕の労働日であり、休息日だった。
僕の日昼、僕の真夜中、僕の話、僕の歌。
愛が永遠に続くって思ってた・・・僕は勘違いしていた。
(W.H.オーデン「葬儀のブルース」より抜粋)

それまでのドタバタ的展開から一転、シリアスな場面に。そしてこの互いに愛し合ってるのに(当時は)結婚できなかったふたりの姿はチャールズの結婚観にさらに影響を与えるのね。

とはいえ後半から話はパズルゲームか落語のサゲのようにうまく収まるんだけど、この作品にお葬式の場面がなかったら、ただのロマコメで終わったかもしれない。それくらい重要で必要な場面だったなぁって感じるわ。

◎人の恋路を邪魔するものは…ってね

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現在、世界のあちこちで同性婚は認められ、施行されているわね、まだまだだけど。日本でもパートナーシップ制度は徐々に広がりつつある反面、同性婚を求める訴訟が起こされ、国は争う姿勢を見せているわ。
アタシの個人的な意見としたら添い遂げようとしているカップルに対して結婚に伴う同等の権利は与えて欲しいと思う。人を愛することに優劣や違いはないはずだから。

この映画の最後に流れるwetwetwetの「Love is all alound」は、まさにぴったり。

MOVIE DATA

「フォー・ウェディング」(原題/Four Weddings and a Funeral)

■ 監督 マイク・ニューウェル
■ 脚本 リチャード・カーティス
■ 出演 ……ヒュー・グラント、アンディ・マクダウェル、クリスティン・スコット・トーマス、サイモン・カロウ、ローワン・アトキンソン ほか

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