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映画「Mr.レディ Mr.マダム」【テアトル・オネエ第29回】

とうとうこういうことをアタシも書くのねぇと思うと感慨深い、“平成最後”の架空映画館「テアトル・オネェ」支配人のヴァニラ・ノブです。

今回上映するのは、まもなく令和だけど、バリバリ昭和55年、1980年に日本で公開された「Mr.レディ Mr.マダム」よ。

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◎「Mr.レディ Mr.マダム」のおすすめポイント

■ ドラァグクイーンコメディとして名作!

■ シリーズ3作まで作られた大ヒット作

■ 男らしさって、女らしさってをちょっぴり皮肉ってるの

◎気になるあらすじは……

レナードが経営する、フランスはサントロペにある“ラ・カージュ・オ・フォール”は、ドラァグクイーンのショウを見せるレストランバー。連日にぎわっているその店のナンバー1は、レナートの長年のパートナーである“ザザ”ことアルバン。

最近は寄る年波と深く刻まれているシワに危機感を覚え毎日キーキー、キャーキャーと癇癪を起こしてはレナートを悩ませていたの。とはいえふたりは20年、店とともに歩んできた仲、ちょっとやそっとで崩れ去るものでもなくレナートがなだめすかしながら、なんとかやってるの。

◎突然始まる人生のドタバタ

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アルバン役をやり切ったミシェル・セロー。ポートレートが切手にもなる愛された役者。(Sergey Goryachev / Shutterstock.com)

ある日、レナートが若気のいたりで誕生させた一粒種の息子・ローランが、大学生活をしているパリから訪ねてきて、突然の結婚宣言。相手の両親を紹介したいから、ぶっちゃけアルバンがいると気まずいのでパパからなんとか言ってほしいって頼まれるの。

ローランは、赤ん坊の頃からアルバンに育てられているから、もちろん恩義は感じているけれど、その複雑な気持ちもわかるの。自分たちは普通でも、他人から見たらおかしいってことを。しかも結婚しようとする相手の父親は、不道徳を許さない超保守党の書記長だから、もしアルバンという存在と出会ってしまったら火に油を注ぐことが目に見えてる。

それはレナートも理解してるんだけど、ただでさえ癇癪持ちなのに、正直に言えばえエラい事になるのは目に見えてる。さぁどうする? ってな訳で療養が必要だとかと、やんわりと伝えるものの、普段は大ボケかまして天然入ってるアルバン、そういうところだけは勘がよくて、「アタシは邪魔な存在なんだ」と傷つきながらも家出。

レナートも、いくら息子のためとは言え、愛する人を見捨てるわけにいかず、おじさんとして食事会に出席させようと、男らしく振舞う練習を繰り広げるんだけど、これがこの映画の鉄板爆笑場面になってる。

でもね、今改めて見ると男らしさって一体何かしらってなんだか滑稽に思える場面でもあるわ。

で、結局アルバンに付け焼き刃の男らしさなんてできるはずもなく・・・。

食事会では美輪明宏、假屋崎省吾、IKKOの自宅のようなロココな趣味の内装を払拭し、とにかくお堅いご両親との波風を立てないように粛々と進めようとするんだけど、アルバンはなんとお母さんとして登場。レナートも息子・ローランも唖然呆然。

しかも間が悪い事に本当の産みの親を呼んでいたから鉢合わせに。さらに、保守党のスキャンダルを狙って、書記長である父親にもマスコミが嗅ぎつけて・・・。

ラストもそんなアホな、というドタバタなんだけど、全体的にフランスらしい皮肉がたっぷりとコーティングされて楽しめるわ。

◎日本でもたくさんの名優が演じる有名作品なの

 元々は1973年に書かれた戯曲で、日本でも映画が公開され大ヒットしたことから宝田明金田龍之介が主演で(演出は美輪明宏!)演じられたり、1983年には「ラ・カージュ・オ・フォール」というミュージカルにもなっていて、何度かブロードウェイでもリバイバル公演されてる。

アタシも昔、「プロデューサーズ」というミュージカルにも出ていた名舞台俳優、ゲイリー・ビーチが主演のものを観たけれど、本当に素晴らしいミュージカルで、この舞台で歌われる「I am what I am(私は私)」という曲は、マイノリティのための歌として、シャーリー・バッシーグロリア・ゲイナーなど様々なミュージシャンがカヴァーしている名曲。

日本でも長らく市村正親鹿賀丈史のコンビの舞台が今も再演されてるわね。

この映画、実はアメリカでも1997年にロビン・ウィリアムスネイサン・レイン主演でバードケージとしてリメイクされているので合わせて観ても面白いわ。時代の変化はあるとは言え、フランス(サントロペ)のゲイとアメリカ(フロリダ)のゲイのキャラクターの違いが楽しめます。

◎あの懐かしいテレビ番組、誰か覚えてない?

書きながら思い出したんだけど、昔、フジテレビ系列で年に一度放送されていた「新春かくし芸大会」という芸能人らが和太鼓やらアクロバットなどなどを練習して、かくし芸として披露するというお正月番組があったの(宴会芸や動画の定番、テーブルクロス引きは今や一般にも定着してるけれど、原点はこの番組の堺正章が披露したこと)。その番組の中で毎年ヒットしている映画のパロディを芸能人が演じるプログラムがあったんだけど「Mr.レディ Mr.マダム」がある年パロディ作品として取り上げられ、主役のゲイカップルを演じていたのが、ジュリーこと沢田研二郷ひろみ。映画だと息子だけど、娘になってて、それが松田聖子! だったわぁ。ジュリーの女装の美しさとコメディアンぶりに子どもながらに笑った! どこかに映像が残ってたら平成のうちに観たいわぁ!

MOVIE DATA

Mr.レディ Mr.マダム(原題:La Cage aux Folles)

■ 監督 エドゥワール・モリナロ

■ 脚本 フランシス・ヴェベール、エドゥワール・モリナロ、マルセロ・ダノン

■ 出演 …… ウーゴ・トニャッツィ、ミシェル・セロー、ミシェル・ガラブリュ、レミ・ローラン、ルイザ・マネリ ほか

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