今回、「テアトル・オネェ」スピンオフとして、ミュージカルとゲイの関係を書いて、というお題をいただいたわ。 なかなかのハードルの高さなんだけど、アタシなりの見解を書いてみようと思ってます。
日本でのミュージカルの定着って、そんなに古い話でもないのよ

ブロードウェイ「CATS」のカーテンコールでのワンシーン(JStone / Shutterstock.com)
ゲイは得てして舞台もんが好き、特にミュージカルがなんたって好きという人が多いからだと思うんだけど、かくいうアタシも人生の大半、ミュージカルという沼にハマっているうちのひとり。 そんなアタシでもぶっちゃけ2000年代に入ってからの日本でのミュージカルの定着度ってのは、特に目を見張るものがあるなぁって思う(ただし、都会に限るけど)。
もちろん昔からミュージカルは日本でも上演されていたけれど、それはあくまでも演劇好きが楽しむカテゴリーのひとつだったし、戦後に公開されたミュージカル映画の数々に魅了された延長線上にあるものだったわ。
やがて劇団四季が「キャッツ」の成功で、日本でのミュージカルというものの概念を払拭したわね。ニューヨークのブロードウェイやロンドンのウエストエンドのそれみたく、ロングラン上演のスタイルをとり、ミュージカルに合わせて劇場を建てたり、舞台機構をリノベーションしたり、オーディションでキャストを選んだりと、それまでの日本での上演方式を画期的に変化させたことで徐々に徐々にミュージカルというものを広く大衆に浸透させてきたわけだけど、それがやがて様々なミュージカルの楽しみ方を生んでいくのね。皮肉だけど、偏見から発展したところもあるのね
作り手にゲイが多かった=映画より自由度が高かったのかも

上演作品の看板が掲げられるブロードウェイの交差点(Sociopath987 / Shutterstock.com)
そんな中でミュージカルとゲイの関係が切っても切れないものというのは、結論的には作り手側にゲイが多かったというのがいちばんの要因みたい。舞台の世界では映画界と比べて昔から比較的、同性愛者に関して大っぴらではないけれど比較的寛容だったというのを昔、ミュージカル好きのゲイの先輩が教えてくれたんだけど、これは映画のプロデューサーが絶対的に力を持っていた時代ゆえ、映画界では男性優位主義が当然だったこと、そして商業的にアメリカ全土で公開されるものであることを考えると同性愛を扱うことはタブーであったと。
その分、舞台という映画に比べると比較的規模の小さい世界ならストーリーの中や演出、音楽に同性愛要素を忍び込ませたり、実力のある役者やスタッフにゲイだから起用しない、なんていう偏見が少なかったからこそ、ゲイたちは舞台の世界に活路を見出し、そういった作品を今も残せていけてるの。
またゲイの観客たちもそれらの作品に隠されたゲイ的要素を、台詞からであったり、演出からであったり、音楽からであったりと、行間から汲み取って仲間内で楽しんで、それが口コミで広がり観客動員に繋がったりしたの。今も、ジュディ・ガーランドやバーブラ・ストライサンドがゲイアイコンになっているのもそういった部分からであり、彼女たちがゲイのクリエイター。ゲイの観客に対して偏見がなく尊敬もしていたからだわ。
時代を経ていくごとにミュージカル、ストレートプレイにも同性愛者が重要なキャラクターや、テーマとして扱った舞台も増えてきて、名作と言われる作品も数多くある、さらにゲイの役者、演出家、音楽家もオープンリーゲイとして堂々と舞台をクリエイトしている現在、これからも多様な作品がゲイによって作られ、それがゲイのみならず様々な人たちも楽しめたらいいなぁと思う。
ぜひ見てほしいミュージカル映画10選
そんなゲイ要素を含む、今もDVDで観ることのできる舞台を映画化したものを紹介するわね。
かつてはタブーとして扱ってきた映画界で映像化されているのも皮肉な話だけど、逆に言えばいつでも観ることができるというのは嬉しいことでもあるわね。
【必見ミュージカル映画リスト】
■ジュリー・アンドリュースの「ビクター/ビクトリア」
■プッチーニのオペラ「ラ・ボエーム」を基にしたニューヨークで暮らす若き芸術家たちを描いた「RENT/レント」
■ベルリンにある場末のキャバレーを舞台にした「キャバレー」
■性転換ロックミュージシャンを描いた「ヘドウィグ・アンド・アングリーインチ」
■ブロードウェイのプロデューサーが失敗する新作を作る姿を描いた「プロデューサーズ」
■ミュージカルのオーディションに集まる男女を描いた「コーラスライン」
■道に迷ったカップルが辿りついた城での奇妙な出来事を描いた「ロッキー・ホラー・ショー」
■ボルチモアに住むおデブちゃんの青春もの「ヘアスプレー」
■コール・ポーター作曲の「じゃじゃ馬ならし」を基にした「キス・ミー・ケイト」
■ブロードウェイで活躍したコメディ女優を描いたもの「ファニー・ガール」
今ではいつでも見られるから、ぜひ何かを感じとってみてほしいわ。