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映画「3人のエンジェル」【テアトル・オネエ第33回】

「痩せにくい体になったわぁ~」と、夏を前にしみじみと実感している架空映画館支配人、ヴァニラ・ノブです。
新旧・内外・ジャンルも問わず、オススメの映画をゲイ目線で取り上げてご紹介させていただいてます。
今回の上映作品は、日本で1996年で公開された「3人のエンジェル」

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◎「3人のエンジェル」のおすすめポイント

■オーストラリア産ドラァグクイーン映画「プリシラ」をアメリカ目線で解釈した作品

■女よ立ち上がれメッセージが込められているの。

■ドラァグクイーンの普遍さも垣間見れるわ

◎気になるあらすじは……

以前取り上げたオーストラリア産ドラァグクイーンムービー「プリシラ」がヒットしたことで、柳の下の二匹目のドジョウを狙ってアメリカでもつくらないといけないって感ありありの作品。

ニューヨークのイーストヴィレッジにあるウェブスターホールで行われている“ドラァグクイーン・オブ・ザ・イヤー”のコンテストで優勝したヴィーダとノグジーマ。

二人はハリウッドで行われる“ミス・ドラァグクイーン・オブ・アメリカ・ページェント”への出場権を手にし、行く気満々。だけど、ひとり失望落胆で階段に座り込むドラァグクイーンのチチが・・・。話を聞くうちにどうにも見捨てることができずにヴィーダは、ノグジーマを無理矢理説得し、航空券を売って中古のキャデラックを購入。その車で3人は、ニューヨークからハリウッドまで2800マイル(4500キロ!)の旅に出ることになったわけ。

途中、警官とトラブルがあったり、ママさんバレーのメンバーと間違えられてタダメシにありつけたり、と珍道中を繰り広げるんだけど、ロードムービーあるあるの、購入した中古の車がエンストしちゃうのよね。さらにロードムービーあるあるの、エンストきっかけで意見の食い違いのケンカに。

でも、チチの大胆なアクションで助けの車が。で、連れて行かれたのが寂れた田舎町。住人たちが奇妙な3人をどチェック! 明らかに保守的な空気が漂うなか、修理工に見てもらうと、必要な部品が届くまで3日かかることがわかり、足止めを食らうことになっちゃうの。

昔の西部劇に出てくる宿場のような町だから住民たちはほぼ顔見知り。老いも若きも何をしてるかよくわからない。そんな中、車の修理を依頼した夫婦の家に泊まらせてもらうんだけど、妻であるキャロルは、本人は否定するもののどうやら夫からDVを受けている様子。ヴィーダは気になってしょうがないんだけど、変に首を突っ込んではまた大きなトラブルになると少しばかり静観。

ノグジーマは、認知症の疑いのある老婆、クララの心を開こうとコミュニケーションを取りつつ、ある映画の話で糸口を見つけることに。でもってチチはチチで地元の男の子にちょっかい出したりと、それぞれが滞在している間に徐々に町の人と交流を深めていくの。特に女性たちと仲良くなった3人はバラエティ番組の、ビューティービフォア・アフターみたく、それまで着飾ることを諦めていた女性たちをみごとに変身させ、活力と美意識を与え、女であることを再認識させるの。さらに町で唯一の祭り、イチゴの収穫祭が迫っているということで、どんなことをするのかを聞くと、これがゲイにとっては超〜物足りない。そこで祭り好きな3人は腕によりをかけてシャシャりまくるんだけど、まだキャロルのDVの件や、トラブルのあった警官が3人を追っているという問題が控えていて・・・って話。

◎もっとドラァグクイーンを勉強してほしかったわ

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「プリシラ」を意識しまくりは明らか。とはいえ、今観ると、まだドラァグクイーンというものを根本的に理解してなかったのかなぁって思ったわ。

今作では、オープニング以外、ずっと3人は女装でいるの。車で移動している時も、プールサイドにいる時も、寝るときも! 基本、ドラァグクイーンのいでたちは、あくまでパフォーマンスとしてのものであって、日常生活はほぼ男の姿でいるから、その時点で違和感。公開当時、一緒に観たドラァグクイーンの方も、「これはないわ〜オープンカーであんな風や砂埃の中走ってたら、つけまつげ、ウィッグがダメになるわよ、何より肌! 肌!」とずっと言ってたわ。

ま、映像的に「ゴースト/ニューヨークの幻」パトリック・スウェイジ「ブレイド」ウェズリー・スナイプス「ロミオ+ジュリエット」ジョン・レグイザモといういかついおっさん3人がすっぴんで運転していたら、単なるギャングの逃避行みたいにしか見えないからしょうがないんだろうけど。

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写真右がウェズリー・スナイプス。ハリソン・フォード、メル・ギブソンとのショット。(Featureflash Photo Agency / Shutterstock.com)

◎理解しないのは昔も今も変わらないのよね

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そんな違和感は拭えないけれど、この映画は素敵なところがあるから、ぜひ観ていただきたいの。

これは今のMe Too運動にも繋がるような女性よ黙るな、逃げるな、立ち上がれ、というメッセージがしっかり描かれていること。寂れた田舎町でDVに遭っている女性、男から見下されている女性、モノとして扱われている女性が、蔑まれ、疎まれ、受け入れられない存在でいる3人のドラァグクイーンたちとの交流によって、お互いに変わっていくのよね。その方法はちょっとばかし強引で極端ではあるけれど、ちゃんと光を導きだしてくれているのは今観てもスカッとする。それは今も変わっていない部分もあるからこそ、励みになるのよね。

◎こだわりがわかるとさらに面白いのよ

個人的には、ひと昔のゲイなら「アラっ」てなるようなゲイ・アイコンの名前がセリフが散りばめられていて、それでニヤニヤしながら観るのも楽しいの。ノグジーマが認知症の疑いのある老婆と心を通わせるきっかけとなるのが、黒人女優で「カルメン」ポーギーとベスという名作に出たにも関わらず不遇の人生を送った女優、ドロシー・ダンドリッジだったり、田舎町の洋品店の引っ込み思案の若店主に、ヴィーダが「参考になさい」と薦めるのが伝説のファッション・エディターのダイアナ・ヴリーランドの著書だったり。

何より今作の原題のタイトルにも使われている、元祖キャットウーマンのジュリー・ニューマーは重要な役で登場するの。もちろん音楽もバーブラ・ストライサンドから、チャカ・カーンシンディ・ローパーパティ・ラベルクリスタル・ウォーターズチャイコフスキーなどなど、音楽界のゲイ・アイコンが使われていて、こういうところのこだわりはいいなぁって思ったわ。

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↑ジュリー・ニューマー公式インスタグラム

さらに、ニューヨークやハリウッドのドラァグクイーンコンテストに登場するのが本物のドラァグクイーンたち。

NetFlixの「ドラァグ・レース」のMCでもおなじみのル・ポールをはじめ、ジョーイ・アリアスレディ・バニーなどが出てるんだけど、彼女たち今もバリバリ現役! ゲイってのは、本当いい意味でしぶといわねぇ。

MOVIE DATA

「3人のエンジェル」

■ 監督 ビーバン・キドロン

■ 制作総指揮 ブルース・コーエン、ウォルター・F・パークス

■ 出演 …… パトリック・スウェイジ、ウェズリー・スナイプス、ジョン・レグイザモ、ナオミ・キャンベル、スカーレット・チャニング ほか

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