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映画「パレードへようこそ」【テアトルオネエ第35回】

洗濯物の生乾き臭のことを最近はゾンビ臭と言うそうですが、イケメンからその臭いがしたら、噛まれてゾンビになってもいいかなぁなんて思う架空映画館支配人、ヴァニラ・ノブです。

新旧・内外・ジャンルも問わず、オススメの映画をゲイ目線で取り上げてご紹介させていただいてます。今回の上映作品は、日本で2015年に公開された「パレードへようこそ」

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◎「パレードへようこそ」のおすすめポイント

■ 6月はLGBT+のための「プライドマンス」なの
■ 炭鉱労働者と同性愛者の融合は可能なのかしら
■ 先人たちが偏見や差別と戦ってくれたことを再認識

◎2019年はLGBT+の節目の年よ

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Eric Glenn / Shutterstock.com

6月はアメリカをはじめ、世界各地で「プライドマンス」ということで、LBGTら性的マイノリティの権利や存在、文化への支持を求めるイベントやパレードなどが開催されてるの。

特にアメリカは今年、プライドマンスとなったきっかけであるストーンウォールの反乱からちょうど50年の節目。それだけにニューヨークではかなりの規模のパレードが開催される予定。

ストーン・ウォールの反乱は、ニューヨークはグリニッジ・ヴィレッジの一角にあったストーンウォール・インというゲイバーで1969年6月28日深夜に起こった事件のこと。

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Leonard Zhukovsky / Shutterstock.com

当時のゲイバーはあくまでもイリーガルな存在。それらはマフィアによって形成され、警察からも摘発だの賄賂だのと食い物にされていたの。

前記した夜もいつものように警察の摘発を受け、バーテンダーやドラァグクイーンやレズビアンたちが公務執行忘我で護送車に引っ張られていった時に、とうとうそれまで我慢を重ねていたクイーンの一人が警察官に対して<NO!>を突きつけたのね、そこから騒ぎが広がり大きな暴動に発展。数日間続いた暴動のことはアメリカのみならず、各地のゲイコミュニティに伝わり、それがきっかけとなってゲイ解放運動が世界で広がりを見せたの。そして翌年の6月にはストーンウォールの反乱から1年を記念したデモ行進が行われ、以降、毎年6月に各地でプライドパレードが行われるように。

◎気になるあらすじは……

でもって、今回の映画「パレードへようこそ」はニューヨークではなくロンドンが舞台。

サッチャー政権下、1984年から1985年に起こった炭鉱ストライキ。炭鉱町に住んでいた人たちは、ストの影響で炭鉱労働者はもちろんだけど、その家族たちの生活は困窮していたの。それを知ったゲイ、レズビアンの活動家が、彼らを助けようとLGSM(レズビアン・アンド・ゲイ・サポート・ザ・マイナーズ、日本語で言えば炭鉱夫支援同性愛者の会)を立ち上げてからの活動を描いたお話。

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イギリス初の女性首相(在任: 1979年 – 1990年)マーガレット・サッチャー(David Fowler / Shutterstock.com)

ロンドンのゲイプライドパレードを見にいった隠れゲイのジョーがひょんなことから活動家たちが集う本屋での反省会に参加、そこで炭鉱労働者たちが虐げられている現状は同性愛者と同じ。ぜひ支援するべきだと活動家のマークが訴えたのを機に、パレードに参加していた数人が賛同、ジョーも創設メンバーとして加わることに。

募金活動を始めたものの、肝心の炭鉱労働組合が同性愛者の団体ゆえに断られ続けることに。募金は集まったのに同性愛者だからと寄付を受け入れられないことに業を煮やしたマークたちは、直接炭鉱町に寄付をしようと、地図でランダムに探し、ウェールズにある小さな炭鉱町、オンルウィンにアポを取ったの。すると、寄付を受け付けてくれることに。しかも彼らを訪ねて代表者のダイがやってくるのね、最初は戸惑ったものの、もともと偏見のなかった彼は連れていってもらったゲイバーで感謝のスピーチを行うと、それまで否定的だった同性愛者たちからも支持を得ることに。

そして今度はLGSMのメンバーが炭鉱町、オンルウィンに招かれることに。とはいえ、現地では当然、同性愛者を認めないホモフォビアたちも山ほどいるわけで。そらそうよね、今から30年以上も前だし、田舎だったらなおさらよ。まさに偏見と差別意識だらけの賛否両論状態。とはいえ、歓迎会でメンバーの一人が得意のディスコダンスを披露したことがきっかけで徐々に、本当に徐々に打ち解けることに。

◎もちろん順風満帆なんてあり得ないのよね

そうしている間にも、ストライキは依然続き、冬は大寒波がウェールズ地方を襲って、ライフラインも寸断されるくらいの状態に。なんとかしようとあれこれ策を練るLGSMのメンバーやオンルウィンの人たち。そんなある日、その活動をよく思ってなかった町のホモフォビアの女性が新聞社に連絡をし、中傷記事を書かせることに。それが発端となり、ストにも悪影響が出るわ、さらにLGSMの活動拠点である本屋にも嫌がらせや襲撃をされたり・・・。でも、マークたちはそれを逆手にとってチャリティ音楽祭を計画。無事に成功するも、反対にオンルウィンの町ではあることが起こり、隠れゲイのジョーは家族バレしたり、本屋の主人もホモフォビアに殴られ大けがしたり、LGSMの中心メンバーであるマークにもある衝撃的な出来事が・・・。はたして炭鉱町の行く末は? ストライキは? そしてメンバーたちは?

◎描かれていることはすべて実話なのよ

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映画を観た後、改めてこれが実話だと知って、胸が熱くなって、涙がこぼれたアタシがいたわ。認めること、受け入れること、理解すること、信頼し合うこと、そして友として手をつなぐこと。言葉で書くと容易いけれどそこまでいくには、どれほどのパワーがいるかっていうのが痛いほどわからされる。

マイノリティとして偏見や差別意識がずっと背中合わせだった時代を経て、今は以前よりは暮らしやすい時代になってきたけれど、それはずっとプライドを持って世界各地で戦ってきてくれた先人たちのおかげでもあるのね。

ストーン・ウォールの反乱から50年、そしてこのロンドンの実話から35年。
改めてゲイとして襟を正したいと思ったわ。

MOVIE DATA

「パレードへようこそ」(原題:Pride)

■ 監督 マシュー・ウォーチャス
■ 製作 デイヴィッド・リヴィングストン
■ 出演 …… ベン・シュネッツァー、ジョージ・マッケイ、ジョセフ・ギルガン、ドミニク・ウェスト、アンドリュー・スコット、フレディ・フォックス ほか
■公式HP …… http://www.cetera.co.jp/pride/

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パレードへようこそ(字幕版)

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